1913年にヤスパースは「了解可能か否か」というラインで、うつ病と適応障害を区別しようとしました。簡単に言うと「落ち込む原因が、共感し、同情できるものであるなら、この人の落ち込みは病気のせいではない」というものです。たしかに、うつ病で、症状がひどい人で、入院が必要なレベルの人は「私はこの世で一番悪い人間だ。小学生の時に万引きをし、決して許されるはずがない(罪業妄想)」「私は貧乏だ、貯金もなくなってしまう(貧困妄想)」「私は何かの病気にかかっているに違いない。先生は私ががんであることを隠しているに違いない(心気妄想)」など妄想を語り、こちらも理解がしがたいです。
ただ時代の変化によって、うつ病それ自体が軽症化しており、そのような妄想を語る患者さんが減りました。うつ病の人でも、こちらが理解しがたい悩みを訴えることはなく、同情せざるを得ないほど、苦しい内面を語る人が増えました。昔の人よりも現代人の方が、心理学的な知識(うつ病という病気のことを知っている、お化けなどの存在を信じない、など)があるためだ、と言われることもありますが、その理由は分かっていません。
実際のところ、うつ病と適応障害の診断・区別は困難です。そもそもうつ病の発症頻度が2~10%と言われている中、適応障害と診断された人も途中でうつ病を発症する可能性もあります。なので、治療を続けていく中で、再発の有無などを確認しつつ、診断が決定されることになります。
質問カテゴリー: うつ病と適応障害について