精神科の薬にはどんな種類がある?効果・副作用・依存性について解説
精神科の薬に対して、「一度飲み始めたらやめられないのでは?」「副作用が心配」「薬によって何が違うの?」と不安を感じる方もいると思います。
精神科で使われる薬は「向精神薬」と呼ばれ、うつ病や不安症、統合失調症、双極症、不眠症など、さまざまな病気の治療に使われています。薬にはいくつかの種類があり、作用や副作用、服用期間も異なります。今回は、精神科で使われる代表的な薬について、わかりやすく解説します。
1.抗うつ薬
抗うつ薬は、主にうつ病の治療に使われる薬です。気分の落ち込みや意欲の低下を改善するほか、パニック症や強迫症などの治療にも使用されます。
代表的な種類には、SSRI、SNRI、NaSSA、三環系抗うつ薬などがあります。抗うつ薬は、飲んですぐに効果が現れるわけではありません。効果を実感するまでに数週間かかることがあります。
副作用としては、吐き気、胃腸の不調、眠気、不眠、性機能への影響などがみられる場合があります。
また、双極症の方では躁状態への切り替わりに注意が必要です。
抗うつ薬は、自己判断で急に中止すると、めまいや吐き気などの中止後症状が現れることがあります。薬を減らしたい場合は、主治医と相談しましょう。
- 三環系抗うつ薬:アナフラニールなど
- SSRI:パキシル、ジェイゾロフト(セルトラリン25~100㎎)、レクサプロ10~20㎎など
- SNRI:サインバルタ(鎮痛作用もある)など
- NaSSA(ナッサ):リフレックスなど。抗うつ効果は高いが、鎮静作用が強く眠気が出る。
- S-RIM(エスリム):トリンテリックスなど。新薬であり2週間処方
2.抗精神病薬
抗精神病薬は、主に統合失調症の治療に使用される薬です。幻覚や妄想などの症状を和らげるほか、双極症の躁状態や、一部のうつ病の治療に使用されることもあります。
代表的な薬には、リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾールなどがあります。
副作用として、眠気、体重増加、手足の震え、じっとしていられない感じ(アカシジア)などが現れることがあります。
- SDA:例:リスペリドンなど
- MARTA:マルタと呼ぶ。例:オランザピン、クエチアピンなど(クエチアピンはドパミン遮断作用は弱いが、抗うつ効果が強く、様々な使い方をします)
- DPA:ドパミン受動態部分作動薬、アリピプラゾール(エビリファイ)など。少量だと抗うつ効果、中等量以上で抗精神病効果がある、不思議な薬。アカシジア(足がむずむずすること)になりやすい。
3.気分安定薬
気分安定薬は、主に双極症(双極性障害)の治療に使用されます。双極症では、気分が高揚する躁状態と、気分が落ち込むうつ状態が現れることがあります。気分安定薬は、こうした気分の波を調整し、再発を防ぐことを目的としています。
代表的な薬には、炭酸リチウム、ラモトリギン、バルプロ酸などがあります。炭酸リチウムでは、血液中の薬の濃度や腎機能などを確認するため、定期的な血液検査が必要です。また、ラモトリギンでは皮膚の発疹などに注意が必要です。
- 炭酸リチウム:躁○/うつ○(血中濃度を測る)
- バルプロ酸:躁◎/うつ×(血中濃度を測る)
- ラモトリギン:躁×/うつ◎(副作用として皮膚炎に注意)
- カルバマゼピン:躁◎/うつ×(古いタイプで、副作用も多いので使わない)
4.睡眠薬・抗不安薬
抗不安薬は、強い不安や緊張を和らげるために使用されます。代表的なものに、ロラゼパムやアルプラゾラムなどのベンゾジアゼピン系薬があります。
比較的短時間で効果が現れる薬もありますが、眠気やふらつき、依存などに注意が必要です。長期間服用している場合、急に中止すると離脱症状が現れることがあります。
どれもベンゾジアゼピン系。作用時間によってタイプを分ける。副作用は眠気。
- 短時間型:エチゾラム(デパス)、リーゼなど。効果が短い分、より依存性が高い
- 中間型(3~6h):ブロマゼパム(レキソタン・セニラン)、アルプラゾラム(ソラナックス、コンスタン)、ロラゼパム(ワイパックス)
- 超長時間(24h):ロフラゼプ酸エチル(メイラックス)、リボトリール
5.睡眠薬
睡眠薬は、寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚めるなど、不眠の症状を改善するために使用されます。
睡眠薬には、主に次のような種類があります。
- ベンゾジアゼピン系睡眠薬:脳内物質であるGABA受容体に作用。不安緊張をとる作用がある。依存性に注意。
- 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬:脳内物質であるGABA受容体に作用。不安緊張をとる作用が少ないため、依存性が抑えられている。
- メラトニン受容体作動薬:メラトニン受容体に作用することで、体内時計を調節し自然な眠気を生む。
- オレキシン受容体拮抗薬:目を覚ます作用のあるオレキシンの作用を抑え、眠気を生む。
睡眠薬は、種類によって効果の現れ方や副作用が異なります。特にベンゾジアゼピン系などでは、眠気やふらつき、依存、急な中止による離脱症状に注意が必要です。
6.その他の精神科の薬
精神科では、ほかにもさまざまな薬が使われています。
認知症の治療薬
ドネペジルやメマンチンなど、認知機能の低下を緩やかにすることを目的とした薬があります。また、早期アルツハイマー病の一部の方には、病気の進行を遅らせることを目指す新しい治療薬もあります。
ADHDの治療薬
メチルフェニデート(コンサータ)、アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)などがあり、不注意や多動性・衝動性による困りごとの軽減を目指します。
漢方薬
不眠や不安などに対して、症状や体質に応じて漢方薬を使用する場合もあります。漢方薬にも副作用や飲み合わせの注意点があるため、医師や薬剤師に相談しながら使用することが大切です。
精神科の薬には依存性がある?
精神科の薬がすべて依存を引き起こすわけではありませんが、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬や抗不安薬では、依存や離脱症状に注意が必要です。
一方、抗うつ薬は一般的に、ベンゾジアゼピン系薬のような依存を生じる薬ではありません。ただし、急に中止すると不調が現れる場合があります。「依存性があるかどうか」と「急にやめても大丈夫かどうか」は、分けて考える必要があります。薬の種類によって注意点が異なるため、自己判断で中止しないことが大切です。
精神科の薬はいつまで飲む?
薬を飲む期間は、病気の種類や症状、これまでの経過によって異なります。
症状が改善した後、一定期間治療を続けてから減薬を検討する場合もあれば、再発予防のために長期間の服用が必要な場合もあります。「調子がよくなったから、もう飲まなくても大丈夫」と自己判断で中止すると、症状が再び現れることがあります。
薬を減らしたい場合や、副作用が気になる場合は、主治医と相談しながら治療方針を決めましょう。
まとめ
精神科で使われる薬には、抗うつ薬、抗精神病薬、気分安定薬、睡眠薬、抗不安薬など、さまざまな種類があります。それぞれ効果や副作用、依存性の有無が異なり、患者さんの病気や症状に合わせて使い分けられています。
精神科の治療では、薬物療法だけでなく、生活環境の調整や心理的な支援も大切です。薬について不安や疑問がある場合は、一人で判断せず、主治医や薬剤師に相談してください。
