今日は、睡眠薬について解説します。
「寝れない人」はかなり多く、日本では5人に1人は睡眠に何らかの困難を抱えており、20人に1人は睡眠薬を使っているというデータもあります。
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生活リズムを整える
よく眠るためには、まずは自律神経を整えることが大事です。
そもそも自律神経が乱れているので寝にくいのです。
自律神経失調症
https://youtu.be/zpI5Lxlv5fs
自律神経を整えるには、
・歩く
・お風呂に入る、リラックスする
・カフェイン、ニコチンをできるだけ取らない
・アルコールを控える
など、規則正しい生活をすることが大事です。
ただ、それをしていても寝れない人は寝れません。
うつが酷い時に歩けと言われても歩けませんし、規則正しい生活が難しかったりします。その場合は抗うつ薬に睡眠薬も交えて治療をしていくと、治療効果が高まります。
他にも、アルコール依存症の人で毎晩寝酒をしていた場合、急にやめると眠れなくなってしまいます。そのため睡眠薬を代わりに入れます。また、夜は魔がさすことが多いので、しっかり寝てもらうことを治療として行います。
発達障害の人も睡眠リズムが乱れやすいです。そのため、睡眠薬をしっかり入れてリズムを作ることもします。一度規則正しいリズムができれば、睡眠薬を抜いた後もリズムを継続できます。
このように、睡眠薬というのは精神科治療では基本の基本です。
では使い方が難しいかというとそうでもなく、結構単純です。
睡眠薬の分類
睡眠薬は、大きく分けると3時間タイプと6時間タイプの2種類があります。
短いタイプは「入眠剤」や「導入剤」と言われます。
また、薬の種類によっても「ベンゾジアゼピン系(BZD系)」「非ベンゾジアゼピン系」「新薬系」「その他」に分けられます。
よく患者さんは市販されている薬を使ったりしますが、市販の薬よりも切れが良いので処方してもらったほうが良いかと思います。値段もそれほど高くはありません。
効果
6時間タイプだと寝入りが悪いのではないかと心配される方も多いのですが、それは大丈夫です。最初から効果があります。
小さい飴玉と大きい飴玉を想像していただきたいのですが、大きいから最初は甘くないということはありません。
朝早く目が覚めてしまう「早朝覚醒型」の人に3時間タイプを処方すると、「それで良いのですか?」と聞かれますが大丈夫です。最初に深く睡眠に入り込めばスッとそのまま眠れます。プールの潜水のようなものです。最初の潜水が浅いとすぐに水面に出てしまいます。
最初は短いタイプから使うのが不眠症の治療の原則です。
薬について
ホワイトボードに薬の一覧を書きましたのでご覧ください。黒字がジェネリック(一般名)、青字が代表的な商品名です。
ベンゾ系は耐性がつきやすい、依存になりやすいと言われるため、ベンゾ系よりも非ベンゾ系が好まれますし、非ベンゾ系より新薬系が好まれます。
とはいえこの辺りは難しく、ベンゾは良くないけれど臨床的には使いこなす必要があります。
非ベンゾ系の中でもゾピクロンは短いです。6時間タイプはありません。
一番大事なのは新薬系です。
非ベンゾ系と言えども依存性があったり耐性がつきやすいので、基本的には新薬系を使いこなすのが今の精神科の主流かと思います。
ラメルテオン(ロゼレム)は、高齢者の不眠症ではファーストチョイスです。入院患者さんのせん妄の予防に使うこともあります。
オレキシンというのは目を覚ますホルモンなのですが、それをブロックする薬としてはレンボレキサント(デェビゴ)、スボレキサント(ベルソムラ)があります。
睡眠薬は表の上3段の中から2つまで使うことができます。
ただし、同じグループの組み合わせだと効果が薄いので、違うグループで組み合わせます。耐性も付きにくくなります。ベルソムラ+マイスリー、ベルソムラ+レンドルミンといった具合です。
その他に、睡眠薬ではないけれど眠くなる副作用を裏技的に使うものもあります。
漢方では抑肝散、抗うつ薬のミアンセリン、トラゾドン、ミルタザピン、抗精神病薬ではクエチアピンです。ただし、クエチアピンは糖尿病のリスクがあるなど他の副作用もありますので、やはり応用技と言えます。
うつがひどい時は本当に寝られません。気分はなかなか改善しなくても眠れるだけでずいぶん違いますので、睡眠薬をきちんと使いこなせると良いと思います。
不眠症
2021.11.3