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薬を飲んでまで「普通の人」もしくは「勝てる人」にならないとダメなのか? テイクユアピルの解説

00:00 OP
00:44 ADHDの治療薬「アデロール」の乱用
02:44 社会背景
04:49 依存の問題
07:17 登場人物
09:30 人間が生きていくために大事なこと

Netflix テイク・ユア・ピル
https://www.netflix.com/jp/title/80117831

本日は、「テイク・ユア・ピル: スマートドラッグの真実」というNetflixのドキュメンタリーがあるんですが、その動画を今観終わったので解説をしてみます。

今1.5倍速でバッと観たのですが。オンライン自助会内でも話題になっていたので観ました。

ADHDの治療薬「アデロール」の乱用

これはどんな動画かというと、ADHDの治療薬「アデロール」の乱用がアメリカの社会で今問題になっている、というドキュメンタリーです。

このアデロールというのは日本では承認されていないです。
日本ではADHDに使えるのはコンサータ、ストラテラ、インチュニブ、この3つなんですけれども、どちらかというとコンサータに似ています。

アデロールとはどういう薬かというと、いわゆるアッパー系のドラッグなんです。
だから興奮剤と動画の中でも言われていました。
少し入れてあげると集中力が高まるんです。
集中力が高まることで不注意を防げたり、感情のコントロールがつきやすくなるという薬なんです。

ADHDの人に少量入れてあげるといい。
だけれども、これがADHDの人だけじゃなくて、他の人にも使われてたりする。
子どもにも使われているのでこれは問題があるんじゃないか、と言われてます。動画の中で。
どんどん増えているんですよね、販売量が。
なので突っ込まれているという感じです。

このアッパー系のドラッグに対して、反対はダウナー系のドラッグと言って、睡眠薬、抗不安薬などが該当します。
アルコールもダウナー系のドラッグと呼ばれたりしています。
大麻もダウナー系かな。

LSDはサイケデリックなのでちょっと違うと言えば違いますけど、アッパー系のドラッグと言えばアッパー系かな、という感じです。
ちょっと違いますが。

社会背景

この乱用の背景にはどんなものがあるのかというと、アメリカは超競争社会なんです。
超競争社会で超管理社会なんです。
世界一の競争大国なので、まあキツイだろうなと思いますね、確かに。
ずっと戦っているというか。

戦うためには管理しなければいけないですよね。
自由にやっていたら勝てないので、厳密に管理してる。超管理する。
超管理して計画的にやることで、この競争に勝とうよという感じなんです。
これが世界トップレベルということです。

僕もよくわかります。
世界中の優秀な人がアメリカに集まるんですね、エンジニアならシリコンバレーに。
アートにしても芸術にしても、アメリカに集まるので超競争社会なんです。

世界のトーキョーという感じです、本当に。
東京に集まるじゃないですか、日本も。
血の気が多いやつというか、競争するために東京に集まるみたいに、その世界版という感じです。

僕も東京へ来てやはり疲れますもんね、競争社会で。
これの更にキツイ版だから、そりゃあアメリカはキツいだろうなという感じがします。
うつ病の人も多いし、バーンアウトする人も多いので、アメリカはキツイだろうなと思います。

そのキツイ社会で勝つために、人より勝つために薬を使用しているということです。
アッパー系の薬を使うことで、少しでも疲労を感じない、少しでも集中力を高める、少しでも寝なくてもいい体を手に入れるため、薬を使用するということです。
これが適正使用にならず、依存の可能性が高まってしまう。

依存の問題

依存してしまうと何が問題かというと、肝機能障害が起きたり、アッパー系のドラッグを使った後は寝るためにはダウナー系のドラッグを使わなきゃいけないんです。なかなか興奮が止まらないので。
いっぱい使うと自然に薬の効果が抜けてくれないから睡眠薬を使う、お酒を使う。
お酒を使うから朝上がってこないので薬を使う。だから多剤化、大量になっていくんです。

起きるためにたくさんの薬を使い、寝るためにたくさん薬を使う。
そうすると肝機能障害も悪化しちゃうという悪循環が生まれます。

あとは精神病症状、アッパー系のドラッグをたくさん使ってしまうと、ときに精神病、統合失調症のような症状が出たりすることもあります、人によるんですけどね。
それが問題だよ、ということです。
みんながなるわけじゃないというのが、また問題があるな、という感じです。

この薬に関しては医師が処方するのですが、ちゃんと診断して出す医者ばかりじゃないんです。
今もそうですが、発達障害の診断基準を広く取ったり緩く取って医師が処方する、そしてゆるいところに患者さんが集まる、という感じなんです。
あそこは薬もらえるよ、という形で嘘をついてもらう患者さんも出てくる。
プラスアメリカの保険制度だと、いっぱい処方すると儲かるみたいなところもあるみたいなので、そういうのがありますよと。

一方で、医師もこの競争社会の中にいて、成功させてあげたい、という気持ちに支配されているんです。
この親のために、この子どもたちのために成功させてあげたい。
だから薬を使ってあげたいな、と思ってしまう。
幸せになって欲しいからということで薬を使ってしまう。
だけど、それはどうなの?という話もあります。

この競争社会の中にいることを肯定しすぎてしまっているというか、その社会にどっぷり浸かってしまっている、というのも問題なんじゃないかことは動画の中でちょっと言っていました。
なるほどなと思いました。

登場人物

出てくるのはどんな人かというと、まず学生です。
学生で色々なタイプがいて、まず暴れん坊タイプ。

衝動的で悪いことが好きなタイプだと、この管理社会では生きていけないんです。
原始時代みたいに山があって、ワーッと走り回れて、でもイライラしたら牛でも猪でも石投げてぶつけて勝ってくるみたいなことができたらいいんだけど、今はそういうことがなくて、有り余るエネルギーや攻撃性をぶつけるところがないじゃないですか。
だから生きづらくなっている。
友達同士で喧嘩してしまっているので、こういう場合は、その衝動性を抑えるために薬が必要だよ、とか。

あとアート系の人ですね。
芸術家的な感じがあって、発想が豊かで自由な人。
ただ自由すぎてルールを守れないタイプの人だと高校を卒業できないので、薬を使っていたというパターン。

あとADHDがあって、なかなかいい成績が出ないがために、周りについていくためには薬が必要だ、みたいな学生もいたり、とか。

あとはハードワーカーです。
そこそこだったらやれると思うけど、やはり一流どころで戦うためには今のADHDの症状があるとダメで、薬を飲まなきゃいけない。

あと、エンジニアの人ですね。
エンジニアの人たちは、長く働いたりするので薬が必要だ。

あと、スポーツ選手です。
成功する、戦いに勝たなきゃいけないので薬が必要だ、集中力を高めたいという形で依存しちゃうとか。

そういう話が出てきてます。
薬というのは適正使用すればいいんだけれども、なかなか適正使用は難しかったりする。
医師でさえもその枠組みの中でやれない、なかなか問題があったりするということです。

人間が生きていくために大事なこと

では益田はどう思うかという話です。
こういう部分に対して、このドキュメンタリーが投げかけているんです。
超競争社会・超管理社会はいいのか、こういう形で我々の社会はいいのか、そして薬を使用しなくちゃいけないという状況はどうなのか、ということを疑問を投げかけているんです。

なかなかね、あちらを立てればこちらが立たず、みたいなところがあって複雑です。

人間が生きていくためには4つの要素が大事です。
「感情コントロール」「共同体との折り合い」お金を稼ぐ、共同体が持つ美徳、成功した方がいいわけです。成功するという価値観と自分の折り合い。
あとはそうじゃなくて「独自の価値観」を持つ。周りに流される、周りの人がいいと思う価値観だけじゃなくて、自分独自、自分だけがいいと思える価値観を持つことも大事。
そして「世界と繋がりがある」。あるがままの自分を許せる、こういう人もいるんだよ、こういうタイプもいるよね、みたいなところで納得がいく。

こういう4つの要素がとても重要で、これを高い水準でコントロールしていくのが重要なんです。

感情コントロールに関して言うと、10代~20代というのはまだまだ脳の性質上難しいんです。
歳をとってくると、ドパミンの衝動性が落ち着いてきて、かつ前頭葉、理性的な部分の成長が進んでくるので抑えがきくんです。自分の感情や衝動が。

だけど成長は、脳のドパミン系の成長が早く、理性的な部分、前頭葉的な部分の成長というのは一歩遅れてしまうので、どうしても10代~20代のときはアンバランスで、自分の感情をコントロールできないんです。
でもそれに対して薬でコントロールしていいのか、という倫理的な問題というか理由があります。

共同体との折り合いというのもそうですけれども、成功だけが大事なのかということです。
成功する、SNSでいいねと押される、痩せていてかわいいと言われる、そこら辺は煽られるんだよね、ネットで。
でも煽ると商売に繋がるので、それっていいんですかということです。
それも何かやりすぎだなという感じがします。

自分独自の価値観を持つ、世界との繋がりを感じるというのは、いわゆる真の教育というのはどういうことなのか、ということです。

ビジネスで成功するための教育、道具を作るための教育だけをしていて、人間が持つ心、心の価値、人間が持つやさしさの価値、そういうものは本当に伝えられているのか、ということです。
真の教育というのはどういうものなのか、ということも考えることが重要かなと思います。

いずれにせよ臨床的には平凡恐怖、自分が一流どころで勝てない、負けてしまう、そこを受け入れる。受け入れて、でもこのあるがままの自分の価値を感じる。
人より劣っているかもしれないけれども、自分には価値があるんだ。自分は苦しんでいるけれども苦しんできた自分に価値があるんだ。そういう風に思えることがとても重要ですし、それは治療の中で達成しなきゃいけないことです。

でもこれはなかなか難しいね。
10代や20代の子たちが、他人よりもちょっと劣っていることに対して、だけど自分には価値がある、と思うのは難しいと思います。
他の子よりも自分はダメなヤツなんだ、劣っているんじゃないか、というところから、親や教師、周りの大人がいくら言ってもなかなか理解しにくいなと思います。

ただ、理解しにくいからといって言わないのはダメで、言い続けることはとても重要だと思いますし、その言葉が依存に至る寸前のところで効いてくると思います。

そしてあとで繋がってくる。あと繋がってくるんですね。
知識と知識が繋がってきて、ああ、そういうことなんだ、自分というのは価値があるんだ、と繋がってくるので言い続けることはとても重要です。
5年、10年の計画で治療していくことは大事ですから。

今回は『テイク・ユア・ピル: スマートドラッグの真実』というNetflixのドキュメンタリーの感想、解説をしました。


2023.5.3

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