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境界性パーソナリティ症のケーススタディ

00:00 OP
00:46 ケース紹介(創作)
02:44 治療
05:31 どこに焦点を当てるか

本日は「境界性パーソナリティ症」のお話をしようかなと思います。

境界性パーソナリティ症の人がどんな風に治療を受けていくのか、どういう風に良くなっていくのかということを、ケーススタディーとしてやっていこうと思います。

もちろん、このケーススタディーは実際の症例ではなく、ChatGPTに作ってもらった症例です。
僕が肉付けしたりちょっと修正したりして作ったケースなので、一緒に話を聞いてもらえればなと思います。

ケース紹介(創作)

A子さんはリストカットが多くて、ピアスをたくさんつけてタトゥーもちょっと入っている。
ピンポイントのタトゥーかいくつか入っているという女性です。

ホストの彼氏と同棲していて、仕事は風俗。
もうすでにデパスをたくさん飲んでいるデパス依存かな、デパス依存の状態になっているという人です。結構いますね、こういう人ね。

ベンゾ系の抗不安薬や睡眠薬をいつも出されていて、精神科はいろんな病院を転々としたりしていて、毎日たくさん飲んでるという感じの人です。

基本的には話なんかしたくないよとか、何て言うのかな、医師のことをあんまり信用していない。
薬だけくれたらいいんですとか言って、早く薬出してくださいみたいな感じですよね。ピッってすぐ帰っちゃうみたいな人なんですよね。

でも調子が悪い時は、自分本位と言えば自分本位なんですけども、自分の都合に合わせて、これが嫌だったとか泣いたり叫んで怒ったりする、ということが外来の中であるということです。

境界性パーソナリティ障害の人らしく、見捨てられ不安というのがあったり、人のことを過度に理想化したりけなしたり。白黒思考ですね。良いか悪いかでしか判断できない。
グレーゾーンがあまりないというところが見られたという感じです。

薬を飲まないと落ち着かないんですよね。
自分の人生をどうしたらいいのかというのもよくわからなくなる状態、という感じです。

治療

こういう人の治療はどうするかということですけど、あまりこちらからこういう風にやった方がいいよとか、こうしなさいということを説教するみたいな感じになると、治療はうまくいかないんですね。

逆に説教外来なのに来ているということは、過度に距離が近づきすぎているということでもあるので、あまりいい結果を生まないことが多いんじゃないかなと思います。

ほどほどの距離感で付き合い続けながら、医療のネットワークから外れないということがとても重要です。
調子が悪い時は聞いてあげる。
そうすると、子供の時にお父さんから性的な虐待があったとか、両親は仲が悪くて離婚した、お母さんと二人で暮らしていたんだけれども、お母さんとも仲が悪くて、今は全然もう連絡をほとんど取らなくなっているとか、そういう話が聞けたりします。

怒ったり泣いたりしながら、そして孤独感を抱えながらやっているということです。

医師一人だけで見ようとすると、やっぱりうまくいかないですよね。
看護師さんとか受付の人が話を代わりに聞いてくれることもあったり、補導された時や職質があった時に、その時の婦警さんが優しくしてくれたりとか。
そういうエピソードが積もっていくと、だんだん良くなっていくという印象もあります。

治療というのはそんなに短くないですね。
5年から10年ぐらい経つというのは結構普通です。
20代前半のうちは感情コントロールが難しくても、だんだん年を取ってくると脳も成長していくので、30代、40代になってくると感情のコントロールが効いてくるというのもあるかなと思います。

何人かの彼氏を経て、落ち着く時に落ち着くということがあります。
いろんな人との恋愛を繰り返していく中で人付き合いを覚えていくことも多いですね。
それが境界性パーソナリティ障害の人の一つの典型例という感じです。彼氏との関係を通じてアク抜きをしているような感じかなと思います。

もちろん、それがこじれてしまって悪くなっていくこともあるので、そうならないように医療従事者、治療者はうまくアシストしてあげる。
その失敗体験から学べるように、うまく言語化を手伝ってあげる、というのはとても重要かなと思います。

どこに焦点を当てるか

どこに治療の焦点を当てていくのか、治療の中でどこを重視していくのかも重要で、治療者は何か一緒にいればいいんじゃないか、優しくしていけばいいんじゃないか、人間の温かさを知ればいいんじゃないかとか思うかもしれないんですけれども、やはりどの能力を伸ばしてあげるか、焦点化してあげるかは治療者側は持っておかなきゃいけないですね。

裏テーマというか、本人に言うか言わないかは別として、きちんとそういう視点は持っておかなきゃいけない。

例えばパーソナリティ障害の診断基準の話なんですけれども、カテゴリーじゃない診断基準、ディメンションの診断基準を持ってきています。
ディメンションの診断基準と言うとちょっとわかりにくいですけど、どういう能力かパラメーター的に解釈するというやり方があるんですよね。
パラメーター的にその人の人格や能力を評価するというやり方もあって、そのパラメーター項目を意識するのもとても重要です。

例えば、人格機能はどれぐらい保たれているか。
精神科における人格機能とは何かというと、自己機能と他者機能。

自己機能とはアイデンティティです。
しっかり自分のアイデンティティはあるのか。自分はどんな人間かというのがわかるのか、説明ができるのか。
そして自分の目標ですね。目標設定。
その目標に向かって努力し続けることができるのかという自己方向性、セルフダイレクションなんて言うんだけれども、それがしっかりあるかということです。

アイデンティティが弱い、刹那的な場合は、生い立ちから語っていく。
どうして自分が今こうなってしまったのかは語りたくないし、思い出したくもないんだけれども、そこを語っていくことが重要ですね。

この症例だとあれですよね。
ボーダーパーソナリティ以外にもPTSDの要素がありますよね。複雑性PTSDの要素もあるので、トラウマのケアもしつつ、自分の人生というものを語っていく、語り直していく。ストーリーとして把握することができることもとても重要です。

その上で自分の目標ですよね。人生の目標。
刹那的に生きるんじゃなくて、5年後、10年後どうなっていきたいのかがおぼろげながら何となくわかっていくことも重要だったりします。

あと他者機能ですね。
他人に対して共感できるのか、そして繋がりを感じられるのか。他者や社会と繋がりを感じられるのかということが、他者機能としてとても重要です。

大卒のあなたにはわかんないよとか、大学行ってる精神科の先生にはわからないよとか、幸せな家で育ったあんた達にわかんないよと言って、相手も共感を否定しているんですよね。共感することを拒否している。

だけどそうではなくて、相手にも問題があったり、悩みがあったりするわけだし、あなたほど苦しんではいないかもしれないけれども、悩んでいるわけですよね。
夜の世界の人たちじゃないと共感できないとか、親密感を持てないとなってしまうとやはり息苦しいし、やっぱりアンダーグランドな経済コミュニティの中にいるとなかなか問題も多いですから。

そうじゃない世界、いわゆる昼の世界ですよね。彼らの言葉で言う昼の世界とも共感できるようにする。そして繋がりを感じられる、社会とつながりを感じられる、友達の友達の友達も仲間であるという感覚を持てるようになることも重要だったりします。

そういう風に会話を誘導していくことも重要です。
あとはネガティブな感情、不安だったり、落ち込みだったり、怒りだったり、そういうものを解決していくのは大事です。
社会からの回避、社会活動を避けてしまう、友人づきあいを避けてしまう、苦手な人と付き合うことを避けてしまうことを治していくのは重要です。

自己中心的であること、誠実じゃないこと、嘘をつくこと、自分の利益を優先させてしまうこと、他人に優しくできないこと、などを治していくことも必要です。
非抑制、衝動的になりすぎること、目先の快楽に手を出しやすい、ギャンブルに手を出しやすい、お酒に逃げやすい、弱っている時に薬を飲みやすい、そういうことを治していく。

あと奇異なこと、変なものを信じない、きちんとした科学リテラシーを持つ、スピリチュアルとかオカルトとか、そこに支配されない、占いに支配されない。そういう陰謀論に支配されないというのもとても重要だったりします。

いわゆる道徳的な美徳と呼ばれるようなものになってくるんですよね。
一個一個を解決していくことは結局、哲学とか道徳とか倫理が言うところの「美徳」につながっていくんですけど、最初から美徳の話とか人間はこうあるべきだよみたいな道徳みたいなことを言うと反発しますよね、若い人って特に。

社会的規範にはノーと言いたいし言いやすい。それは本能的なものとしてあるので、最初からそういう風に言うとやっぱり受け入れ難かったりしますから、分けて説明していくのが重要かなと思います。
大人になっていくとやっぱり結局、1周、2周回って正しいこととか道徳的なことが幸せに繋がるし、自分も生きやすくなるんですよね。楽なんですよね。道徳的であることが。

こういう傷ついた人だったりとか若かったりすると、なかなかそういう発想には至れないということがあるなと思います。

ということで、長く治療していくことが重要。そして医療のネットワークにつながっていることが大事で、医師一人だけで治そうとするのではなくて、チームでやっていく。チームっていうのは同じ病院だけでなくて、そこにいる婦警さんとか警察とか、いろんな人が社会全体が治療のチームなんだという感覚を僕らも持つことがとても重要だったりします。

今回は、境界性パーソナリティ症の治療について解説しました。


2023.6.12

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