患者さんに「薬に頼っていいですか?」と聞かれますが、この言葉に違和感を覚えます。薬はあくまで道具なので、「車に頼っていいですか?」「洗濯機に頼っていいですか?」と聞かれているような感じです。
国語辞典で「頼る」を引くと「助けとして用いる」とあるので違和感がないように思いますが、文章にして考えてみると、例えば「人を頼る」という場合、契約ではなく「感情的な貸し借り」というイメージなのではないかと思います。他にも道具、社会制度、資源に頼るということを例に考えてみます。
薬の場合はどうかというと、医者からの意見もありますが、使うか使わないかは原則として患者さんが自分で判断するものです。自分の時間、エネルギー、お金を使って手に入れているものですので薬を使うのは悪くないと思います。
もちろん薬だけに依存するのはNGで、心の学習や病気の勉強、自分のこと社会のこと他人の気持ちを考える、内省するということも必要です。
精神科臨床を哲学してみた
2020.10.18