今日は「ヒステリー」について語ってみようと思います。
ヒステリーという女性がワーッと金切り声を上げるようなイメージがあるかもしれませんが、これは誤解です。正確にいうと、脳や身体の異常がないけれど心身の機能を損なっている状態をヒステリーと言います。今は女性の金切り声のイメージの方が強くなってしまったので、ヒステリーという言葉は使わず「解離性(転換性)障害」や「身体表現性障害」といった病名で表現します。
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精神症状と身体症状
元々ヒステリーという言葉から「解離性(転換性)障害」や「身体表現性障害」といった現代語に変わってきているので、症状がオーバーラップするところがあります。
・精神症状
健忘、とん走(記憶なく失踪する)、昏迷、人格交代、幻聴など
・身体症状
けいれん、運動や知覚の麻痺(アルプスの少女ハイジのクララ)
これらの症状の組み合わせとなります。意外とこのような患者さんをみます。
重いとEMDRなどを行ったりしますが(僕はやっていません)、軽い場合は数週間で良くなることもあります。
原因は不明
原因については、知的能力や発達的な問題、トラウマなどが関わっているのではないかと言われていますが、よくわかっていません。
古代エジプトからギリシャ時代には病気に関する記載がある古い病気で、19世紀末にはシャルコーやフロイトが研究していました。
第一次世界大戦の時にはストレスで歩けなくなる、奇怪な動きになるということがありました。
ベトナム戦争後にもありましたし、フェミニズム運動では性的な虐待との関係も知られてきました。やはりPTSDとの関連があるのではないかということが指摘されています。
病理モデル
脳のメカニズムとしては知られていないのですが、病理モデルとしてはイメージされているものがあります。
図の黒の部分が無意識で上の部分が意識だとすると、強いストレスがかかると本体を守るために分離します。もっとひどくなるとそれが複数の心に分離された自己になります。
人格交代をイメージするとわかりやすいのですが、例えば親から虐待を受けている時に、「虐待されているのは自分じゃない」と上から見るような形になり、心が分かれて2つの人間ができます。
そこまでいかなくても、ストレスがかかって苦しいとなった時に、苦しいと感じたくないから「肩がこった」「頭痛がする」と言ったりします。
「仕事にも夫婦関係にもストレスを感じていないのですが、なんだか知らないけれど頭痛がします」などと言います。「でも旦那さんが家に帰ってきてないんでしょ?」というと、「ああ、そういえばそうでしたね」などと返します。満ち足りた不満足と言ったりします。
人間の心は不思議だなと思います。
精神分析
2020.12.23