今日は、摂食障害の中でも特に重要なポイントである「リフィーディング症候群」という命にかかわる症状について解説します。
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リフィーディング症候群
摂食障害で飢餓状態が続くと、体の中の糖が枯渇してケトン体や脂肪をエネルギーに使うようになります。そのような状態で急激に糖質を摂ると、血液から細胞内に糖を取り込む時にリン、カリウム、マグネシウムなどのミネラル電解質が一緒に細胞内に入ってしまいます。
そうすると、細胞の中に急に膨れたり水浸しになったりして浮腫(心臓や肺に水が溜まる)が起きたり、電解質異常のため不整脈が起き心停止に至る恐れもあります。このようなことがあるので、飢餓状態の時は少しずつ栄養を摂るようにします。
入院治療
・入院治療の目安
BMI 15〜12(体重/(身長)2=BMI)
15になってくると入院を考え、12になってくると入院をしないといけないなという感じです。
・入院後
1日の摂取カロリーが1000kcalを切っているならば最初の1週間は1000にして翌週は1100にしようなど、徐々にカロリーを増やしていきます。ビタミン、ミネラルを補充しながら行います。
また、長い間食べていないと胃も小さくなっています。胃は筋肉なのでそれを広げるために食べる訓練もします。
なぜ入院するのか
このような理由からできるだけ入院をするのが望ましいです。
・低栄養状態による判断力低下
・こだわりの増強(より食べられなくなる。外来の指示が通らない)
・家族のストレス・罪悪感(無理やり食べさせることへの罪悪感、ストレス)
先ほど述べたように、不整脈になってしまうこともあるのでいざという時にモニター管理ができるなど病院の診療能力も問われます。したがって、どこの精神病院でも入院できるのではなく施設を探さなくてはいけません。BMIが15に近づいてきた時から入院を意識して治療していくことが重要です。
治療の注意点
個人的な治療の注意点になりますが、摂食障害が重症化するときには合併症があることが多いです。全部が全部ではありませんが、合併症があるのではないかという前提で治療をします。
・統合失調症、うつ病、躁うつ病が隠れていないか
統合失調症の幻覚妄想に支配されているから食べないのでは?
うつが悪化しているのでは?
・発達障害が絡んでいないか
・虐待(母子密着)が隠れていないか
・トラウマの問題
性的な虐待やトラブル
・アルコール、ドラッグ
単純に体重を増やせば良いというものではありません。
摂食障害の患者さんの家族からはどのように会話をしていくのが良いのか聞かれますが、これはなかなか難しいです。精神科医は喋りが得意なわけでも人の心を見抜くことに長けているわけでもありません。ただ、疾患ごとに認知の歪みがあるのでそれを意識しながら会話ができるというのが僕らのプロたる所以です。
例えば統合失調症の人は妄想に支配されているので、妄想は否定しつつ感情は傷つけない喋り方をします。アルコール依存症の人は自尊心が低下しているので、褒めつつ、でもやめなければいけないという責任感を持たせるような持っていき方をします。発達障害の人は想像することや会話が苦手なので、文字に書いて見せる、比喩は使わず具体的に話すなど意識しています。
摂食障害の場合もそれに合わせた喋り方をしますが、結構難しいです。慣れていないと押さえどころがわからないので、摂食障害が専門の先生に任せることもあります。
摂食障害はなかなかクリニックでは診てもらえないと言われますが、それは今回解説したリフィーディングの問題があるためです。ただすべてを専門病院に回してもそれはそれで病院側も困ってしまいます。症状が悪化しないうちにクリニックで診ることが大事なのではないかと個人的には思っています。
【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス 摂食障害
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_eat.html
摂食障害
2021.2.6