今日は「意外と身近なメンタルヘルス」というタイトルで、患者さんや治療者の数を数字で共有してみようと思います。出典は概要欄にリンクがあります。
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患者数
■認知症 60万人
認知症も精神科で扱ったりしますが、患者さんの数は60万人とされています。
■統合失調症 80万人
統合失調症は10代、20代で発症することが多い幻覚妄想、幻聴などが起こる病気です。
■気分障害 130万人
気分障害とはうつ病、躁うつ病などです。
■不安障害など 80万人
強迫性障害、パニック障害その他いろいろな病気を含みます。
■アルコール・薬物依存症 8万人
■発達障害 50万人
・自殺 2~3万人/年
平成29年のデータでは大体400万人の患者さんがいると言われています。30人に1人は精神科の患者さんという感じです。
躁うつ病は10代、20代で1~2%発症、統合失調症も人口の1~2%発症すると言われていますので、それとプラスアルファを合わせると30人に1人というのは大体そうかなと思います。
自殺に関しては若い人に多く、20代、30代の死因の1位ですし、40代でも2位です。人口の1~2%の人が自殺で亡くなっています。
以上が精神科の領域です。
400万人が多いのか、少ないのかはわかりませんが、例えばうつを経験するのは10人に1人と言われています。うつ病のうつもあれば躁うつ病のうつ、適応障害のうつもあると思いますが、10人に1人は経験すると言われていますので、1100万人くらいということになります。
アルコール依存症に関しては潜在的には8万人の10倍、つまり80万人くらいいるだろうと言われています。発達障害に関してもアメリカでは児童期の7~8%に該当すると言われていますので、その計算でいくと850万人くらいになります。
このように捉えると、2100万人くらいが精神科の患者さんになります。これだと多いですね。
人格障害は人口の1~2%と言われていますが、特に攻撃的なものを考えると120~240万人はパーソナリティ障害に該当する人がいると思われます。
治療者数
すべての科を合わせた医師の数は31万人で、そのうち精神科のドクターは1万4千人くらいいます。精神科病院で働いているドクターは7千人くらいです。
精神科病院で働いている看護師さんは約5万人
カウンセラーは4万人
精神保健福祉士(PSW)は4万人
ということで、精神科に関わる治療者は15万人くらいです。
日本の人口の6人に1人が患者として精神科に関わっているとして、その家族も入れると精神科の領域はすべての人に関わる領域とも言えます。
メンタル疾患の経験者は多い
職場で悩んでいる人で休職や復職にすごくプレッシャーを感じている人がいますが、助けてくれる人は必ずいます。なぜかといえばこれだけの数の患者さんがいるので「実は僕も昔メンタルやられちゃったことがあって」とか「家族がメンタルやられちゃったことがあって」など、普段口にはしないけれど助けになりたいと思っている人がたくさんいるからです。
精神科の患者さんは「自分ひとりがこの病気なんじゃないか」と思ってしまうものですが、決してそんなことはありません。実際クリニックの待合にも人はいます。ですが、患者さんの気持ちはすごく孤独ですし、待合に人がいることも目に入らないという感じもあります。治療者がたくさんいることも目に入らなくて、すごく孤独を感じています。それがメンタル疾患の特徴です。身近にあるのですが見えないのです。
例えれば夜のネオン街みたいなもので、夜には見えなかったものが朝になるとたくさん見えるものです。ですが、普段の日常はどちらかというとネオン街に近く、煌びやかなものが見えていて邪魔になるものは暗いところにあって見えていません。メンタルの病気も身近にたくさんあるのに、朝が来ると「ここにもあったんだ」と見えるようになります。すみません、今日は例えが下手ですね。
発達障害の人が850万人くらいいるとして、実際は50万人くらいしか診断されていないとしたら過小診断ですね。8%が多いとしてもその半分でも400万人くらいになります。
アルコールの問題も80万人くらいの人が悩んでいるとしても、気づかれていないというか、放置されているという状況です。
密かに悩んでいる人は多い
言わないだけで悩んでいる人はたくさんいます。
精神科医をやっていると時々「ここだけの話、益田に相談したいんだけど」ということはあります。守秘義務があるので口が裂けても言いませんが。これだけ身近だからということですね。
発達障害が本当に850万人となると、国の政策としてもいろいろなものを変えないといけないですしビビリますよね。でもこれだけの人がいるのにも関わらず学校教育の問題もあって苦しい思いをしているのかと思うと「うーん」となります。
逆に誹謗中傷を起こし得る人格障害の人たちが120~240万人もいるのかと思うと、パワハラ予備軍がこれだけいるのだなと思ってしまいます。これだけ予備軍がいるので会社員として働いていてパワハラ系の人と出会わないことは絶対にないのです。いつかは出会います。ですから同じような思いをしている人は結構いるんですよという話です。
関連リンク(2021.4.22)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth8.html
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000488342.pdf
雑談
2021.4.22