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摂食障害について解説します

03:04 摂食障害のメカニズム
07:50 薬物治療は?
10:26 薬物治療以外では?
14:29 なぜ治療が長期化するのか
21:23 入院治療

今日は「摂食障害」について解説します。
この動画の内容は基本的には「摂食障害治療ガイドライン」をもとに、自分なりの言葉を加えて作成しています。

摂食障害とは

摂食障害とは、体重や見た目を気にして食事を減らしたり、逆にたくさん食べてしまった後、吐いてしまうといった病気です。食べた後に太りたくないので吐いてしまいます。

「痩せ」にこだわり、極端に痩せ細った姿を理想に思うような、ボディーイメージの障害が起きます。
ガリガリに痩せほそり、世間的な美しさよりも本人の追及する、ある種病的な美を追及します。脳に糖が足りないので、よりそのようなこだわりが強くなってしまいます。

・2つのタイプ
全く食べないタイプを「摂食制限型」、過食嘔吐や下剤などを乱用するタイプを「過食・排出型」と区別します。

よくいるのが過食嘔吐型(過食・排出型の1つ)です。
吐きだこがある人もいますし、鵜飼の鵜のように自分で吐けるようになってしまう人も結構います。胃酸は強力なので歯が溶けてしまう人もいます。

摂食障害のメカニズム

自分の気持ちを気持ちを表現することが苦手な人が多いと言われています。
体重コントロールによって不安を解消させようとしているのではないかと古典的な精神病理学では考えられていました。

これはなんとなくわかります。
患者さんと接していると、親子問題や成績、もっと人気者になりたいなどとにかくいろいろな問題を抱えています。
そのような問題をすべて「体重の問題」にすり替えてしまい、それさえうまくいけば良いのではないかという思考になっています。

その結果、痩せたとしてもうまく行かないので「もっと痩せなければ」とどんどんそちらの方向に行ってしまいます。
つまり、さまざまな問題の原因を1つのことに置き換え過ぎてしまうということです。

ただ、最近では違う見方も増えています。

体重に関する「過度なこだわり」は、自閉スペクトラム症(ASD)の問題があるのではと考えられています。他人の気持ちがよくわからないので、そのわからなさや混乱を体重の問題にすり替えているのではという観点です。実際に、自閉スペクトラム症と摂食食害を合併している患者さんは結構います。

強迫性障害が行為依存症の観点から見直されているように、過食嘔吐も「行為依存症」と似ているのではないかと言われています。

ギャンブル依存症、買い物依存症などと同様に、ストレスが溜まったら過食嘔吐をすることでストレスを発散しているということです。そうなると、過食嘔吐以外のストレス発散方法がわかりませんし、それが1番の楽しみになってしまいます。

また、摂食障害は思春期から発症することが多く、親子問題を抱えている人も多いです。厳しい親、一族が高学歴で成績が悪いと見下す歪んだ価値観、スポーツの世界、音楽の世界、母親が美人など色々あります。

父親が大物政治家や会社経営者で母親が愛人(美人)で、その子供は父親似で母親ほど美人ではない。また、愛人という立場上、足りない愛情を過度に子供に向けすぎて勉強や何かに追い込んでしまうということはよくあります。

その他には発達障害の問題もあります。

画面に寝ている女性の写真がありますが、摂食障害の人は食べ疲れて寝ている人、食べないためにずっと寝ている人が多いです。内面が成熟する機会が失われてしまっている人も多いです。

薬物治療

薬物治療については明確な指針はありません。

・抗うつ薬
強迫性障害やうつを合併している場合は抗うつ薬を処方することがあります。ですが、抗うつ薬は若い人の場合自殺リスクを上げてしまったり、変にイライラさせてしまったりすることもあるので慎重に使う必要があります。

・抗精神病薬
衝動性を抑えるために抗精神病薬を用いることもありますが、過鎮静やパーキンソン症状(手の震え)が出ることもあります。糖尿病のリスクも上げることもあるので、やはり慎重にやらなければなりません。

・抗不安薬
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬もあります。これは一時的に症状を緩和しますが、依存のリスクがあります。摂食障害は治療が長期化するのでできれば抗不安薬は使いたくないというのが本当のところです。どうしても必要な場合は慎重に使います。

また、ADHDを合併している人もパターンも多いので、ADHDの薬も有効だったりします。

薬物治療は難しいので、摂食障害の場合は薬物治療をしないというのが本当はベストです。

カウンセリング、精神療法

基本的にはカウンセリングを中心とした精神療法が有効です。

ただ、カウンセリングはかなり難しいです。家族の問題や虐待の問題、本人の病識がない(好きで痩せているから問題ない)など、時間の短い外来枠での治療は困難です。

・自信がないから見た目にこだわるわけで、自信が回復するように持っていく。
・食べ吐きに時間を費やしている分、人との交流や社会への理解が乏しいところをカウンセリングで補い、勉強してもらう。

このような対応が必要です。

また、過食嘔吐の場合は嗜癖行動と捉え、家にお菓子を置かないなど「行動療法」を重視します。
仕事帰りにコンビニに寄ってお菓子を買ってしまうのであれば、お財布に千円以上入れない。母親は買い置きのお菓子を買わない。カップ麺など家に置かない。もし買うなら買ったらすぐ食べる。そのようなことをしなければなりません。

親子問題がある場合は、家族病理の治療も必要です。
母と娘がくっつきすぎている、母親や父親に病識がない場合もあります。「この子は弱いのだから人一倍勉強しないといけない」など。

もし本当に弱いのならば、それを強くしなければいけないかというとそういうことではありません。強くなければ生きていけないというのはフィクションの世界です。日本は福祉国家ですから生きていけます。
本人に病識がないだけでなく、それ以上に家族にも病識がない場合も多いのです。

なぜ治療が長期化するのか

・自尊心の回復、自他・社会の理解
→言語的な交流。時間がかかる、能力的困難さ

診察室では雑談していると思われるかもしれませんが、治療に必要なことを喋っています。
ただ、患者さんは日頃からアドバイスを受けていますので、診察室で医師からかけられる言葉が本当に自分にとって意味のある大事なことなのだ、と噛み砕いて理解するために非常に時間がかかります。

もともと言葉で自分を表現したり相手の気持ちを読み取ったりすることが苦手ですし、過剰に怯えたりしてしまうので難しいのです。ゆっくりと、本人のペースに合わせた伴走をする必要があります。

・過食嘔吐については行動療法を重視
→強制的な側面があり、対話的治療と相反する

強制的に菓子パンを置かない、カップ麺を置かないなどしますので、「ゆっくり本人のペースで」とは相反することです。対話的な治療だけで悠長にやっていても、過食嘔吐は止まりません。ですのでこのような行動療法も重要です。

・親子問題がある場合、家族病理の治療も必要
→家族が受け入れがたい。無意識的スケープゴート

子供だけの問題ではなく、「家族の問題がある」ということを言わなければならないのですが、それはなかなか受け入れられません。家族としては「本人のため」と思ってやっていたことが実は本人を傷つけていたなど、「家族が彼女の病気を作っていた」という罪悪感を受け入れなければならないからです。

これは非常に受け入れ難いので、何件かクリニックを回って同じようなことを言われてようやく受け入れられるようになるということが多いです。

摂食障害のある子供は、そこしか逃げ場がなかった人たちです。全員ではありませんが、家族のストレスを受けてきた子供達でもあります。その場合は、加害者の罪悪感を受け入れるところからスタートしなければいけないので大変です。

・治療
外来枠(毎週5分+α)
カウンセリング(45分、月2~4)
デイケア(半日、月数回)
家族会など(半日、月数回)…オンラインでもたくさんあります。

当院でも座談会を月に1、2回やっていますが、座談会についてはYouTubeライブで案内をしますのでよろしければそちらの方をご覧ください。(日程が決まっていないことも多いので、クリニック受付への問い合わせはご遠慮ください…)

入院治療

体重が減り、BMIg15を下回ると入院治療が必要となります。
急激に体重を増やすと命の危険がありますので(リフィーディング症候群)、徐々にカロリーを増やしていく治療を行います。

リフィーディング症候群
https://wasedamental.com/youtubemovie/3434/

・BMI
BMIとは体重を身長の2乗で割ったものです。BMI=kg/m*m
健康的なのは22ですが、だいたいみんなこれよりも多いです。

以上、今回は摂食障害について解説しました。
摂食障害は精神科の中でもかなり治療が難しく、苦しい病気です。
僕は月に700人くらいの患者さんを診ていますが、摂食障害の患者さんは1%くらいです。僕一人が抱えられる患者さんはそれくらいなのです。

時間は掛かりますが、時間を掛けていけば少しずつ良くなります。
僕のところにも3ヶ月に1度とか半年に1度くらい来て「まだ良くならないけどなんとか生きています」と言う患者さんもいます。
ゆっくりやっていきましょう。

★noteでも書いています「摂食障害(拒食症、過食嘔吐)」
https://note.com/wasedamental/n/nac95f2d70289

【参考】摂食障害治療ガイドライン(医学書院 2012年)


2021.6.21

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