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どうしてやめられないのか? 脳科学的に解説

01:55 パブロフの犬
03:20 精神の世界ではどういうことか
07:41 治療

今日は「やめられない」をテーマに脳科学的な見地からお話ししようと思います。
「引き金、欲求、報酬系」というのは脳システムの話です。

パブロフの犬

これは有名な実験です。
空腹→食べたい→食べる→満足→空腹…これを繰り返していくのが通常のサイクルです。

次に、ごはんを食べるとき(空腹のとき)に「ベル」を鳴らします。
そうすると、今度はベルを鳴らしただけで、お腹が空いてきてよだれを垂らすというサイクルが回り出します。ベルの音を聞くと食べたくなるのです。

これは何かというと「学習⇄習慣化」の問題です。

ベルの音を聞いただけでお腹が空く人(犬)はいませんが、「ベルが鳴った時に食べ物を出す」ことを繰り返していると、それが学習され習慣化していき、「ベルが鳴るだけで食べたくなる」という回路が出来上がります。

これを「報酬系」と言います。

精神の世界ではどういうことか

・強迫性障害
「不安になる→手を洗いたくなる→手を洗う→一時的に不安が解消される→また不安になる・・・」というサイクルを繰り返すうちに、報酬系の神経回路の学習が強化されていき止まらなくなります。

最初は「不安だから手を洗いたい」という衝動的なものだったのが、「不安になったら手を洗わないと気が済まない」という強迫的なものになります。

このサイクルは永久機関のように見えますが、行動をやめるとこの永久機関はいずれは止まっていきます。
ですが、仕事や人間の「ストレス」や汚いものを見るなど「引き金」になるものが、いわばサイクルのガソリンとなっており、なかなかやめられません。

報酬系のサイクルは手洗いだけではなく、鍵しめ、火元確認などもありますし、アルコール依存、ギャンブル依存なども含まれます。

・アルコール依存
「ストレスが溜まって不安になる→お酒を飲みたい→お酒を飲む→一時的に満足する→また不安になる→お酒を飲みたくなる・・・」となります。
そしてだんだん禁断症状、離脱症状があらわれ、お酒を飲まないとイライラするようになります。それでまた飲んでしまいます。こうやって依存が高まっていきます。

・行為依存(過食、ギャンブル、自傷、整形、買い物、性)
「疲れた、不安→食べたくなる→過食して吐く→一時的に楽になる→ストレスで禁断症状が出る→食べたくなる・・・」
最初のうちは自力で止められると思うのですが、学習が強化されて習慣化するとなかなかやめられなくなります。

これが脳のモデルです。

治療

治療としては、まずこのサイクルを止めなければなりません。

・引き金を減らす
お酒の場合ならば、アルコールを買わないようにする。
僕がお酒をやめた時にまずやったことは「引き金を減らす」ことです。お酒が出ている動画は見ない、帰り道にコンビニに寄るのをやめるといったことをして、できるだけお酒が欲しくなる場面を減らしました。そうすると永久機関が止まりやすくなります。

・ストレスを減らす
考え方を変える、認知の歪みを直す、仕事量を見直す、人間関係の改善を考えるなどをしていくことで、少しでもサイクルを止めやすくします。
でもなかなかこれは難しいです。

・モデルを理解することが重要
報酬系のモデルをしっかり理解することも重要です。
頭の中で車輪を思い浮かべて「自分は今ストレスが溜まっているからお酒が飲みたくなっているな、でも飲んでしまうとサイクルが強くなってしまうから我慢しないと。別のことで気を紛らわせよう」というように、1日をなんとか乗り切ります。

翌日になると少し冷静になっているので「昨日はお酒を飲まずに済んだな、少し車輪の速度が緩くなったかな」とまたその日を乗り切っていきます。こうして1日1日を過ごしていきます。
これが治療となります。

今回は「やめられない」というテーマで、パブロフの犬の実験や報酬系モデルについて解説しました。
サイクルを止めるには、ストレスや引き金などの問題を解決することが大切です。

【参考】
ストール「精神薬理学エセンシャルズ 第4版」
松本俊彦著「薬物・アルコール依存症からの回復支援ワークブック」(金剛出版 2011年)


2021.7.25

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