今日は「ワクチンを打てないのは『甘え』ですか」というテーマでお話しします。
臨床をしている中で、ワクチンを打つのが怖い、打ちたくないという患者さんが結構いらっしゃいます。そのような人とお話していると、「そんなに自分を責める必要はないのにな」と僕は思います。
ワクチンを打つ怖さを表現できないし、周りからも否定されるからどうしたら良いのだろうと悩んでいる患者さんは多いです。ですので、デリケートなテーマですがお話ししてみようと思います。
結論から言うと、「医師の立場では、現代の科学では安全なので打って欲しい」です。
ただ、ワクチンに抵抗がある人、怖い人の気持ちもわかります。
だからどうしたら良いのか、というのが臨床上抱えているテーマかなと思います。
このテーマは「働けないのは甘えですか」「友達を作らないのは甘えですか」「勉強をしないのは甘えですか」「不登校は甘えですか」といったことにも似ていると思います。
各々に事情がありますし、人が怖い、ワクチンが怖いというのはよくわかります。
ですが、それは多くの人は経験していない怖さなんだろうなということも考えます。
僕はそれほど怖くないからワクチンを打ったわけですが、ジェットコースターに乗る前の怖さやお化け屋敷に入る前の怖さは人それぞれ違います。それを揶揄するのも意地悪なことです。生まれつき恐怖感が強い人もいます。
その人ごとに恐怖感は違うので、それをないがしろにするのは良くないかなと思います。
コンテンツ
向精神薬とワクチンの併用はOK
1つお伝えしておかなければいけないのは、向精神薬とワクチンの併用は基本的にはOKということです。
とはいえ通院中の方は主治医の先生に確認してください。
エビデンスの殴り合いはX
肯定派は「リスクがゼロになることはないから受け入れろ」と言い、否定派は「このような副反応や死亡事故があった」と言って戦うのはあまり良くないと思います。
僕がどう理解しているかというと、同級生や先輩に感染症の専門家もいますしその人たちが判断していることと僕が意見を変える必要もないので、そのように理解しています。
ワクチンを打たない人は迷惑?
打たないのは良くない、打たない人が出歩いているのはダメだ、職場に来てはいけないというのも差別的だという気もします。
すごく怖いという思いと、打っていないことへの罪責感で悩んでいる患者さんは多いです。
僕らは多様性を認識すべきですし、変化を受け入れるペースは人それぞれ違います。
頭でわかっていても気持ちが追いつかないというのは、ワクチンのことでなければ皆さん理解できるのに、ワクチンになると途端に理解できなくなって、議論してしまうのは良くないなと思います。
もちろんできるだけ早くワクチンを打つことは重要だと思いますが、それぞれのペースがあります。
まとめ
誤解がないようにもう一度言いますが、「ワクチンを打てないのは甘えですか」という問いに対しては、僕の立場では「安全なので打って欲しい」ですが、ワクチンに抵抗のある人の気持ち、怖さ、自責感はよくわかります。
証拠を出し合ってどちらが正しいという話し合いは良くありません。
それよりも、今の不安感を大事にして受け入れていく、僕らは多様なので、考えも感じ方も皆違うということを共有することが大事だと思います。
【次回の動画】
精神科医を嫌なやつだと思ったことがある人へ
「褒めない精神科医は嫌われる〜精神科医のジレンマ」
雑談
2021.8.1