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コミュニティの重要性 症状~治療~コミュニティ~SNS

01:18 どうして気分が悪くなるのか
03:29 治療
05:28 なぜ良い人間関係が必要なのか
09:51 悪い本能
12:38 複数のコミュニティ

本日は「コミュニティの重要性」というテーマでお話しします。

今日は特別な回といいますか、いろいろ話そうと思います。
話題が飛ぶのですが皆さんついてきてください。結構難しい話をしようと思います。

まず最初に、どうして気分が悪くなるのか、感情が不安になるのかを説明します。
その後に、治療はどのように行えば良いのか、不安な気分をどうやって治せば良いのかをお話しします。人間関係が治療において非常に重要なのですが、その理由もお話しします。
それとともになぜ人間関係があなたを傷つけているのか、ということもお話しします。

最後に、現代的な人間関係とは何か、SNS時代におけるコミュニティとはどういうものか、その中で僕が治療として重要だと考えていることは何かもお話しします。

どうして気分が悪くなるのか

どうして気分が悪くなったり、不安になったりうつになったりするのか。

今の症状(気分)が何から決まるかというと、体調と脳の配線で決まります。
疲れていたりストレスを感じていると、落ち込んだり嫌な気分がしたりします。
それとともに、もともと脳がどのような考え方をしているのか、どういう考え方をしがちなのかによって症状が変わります。

ネガティブに考える人は、同じストレスや疲労感でも不安を感じやすいです。ポジティブな脳の配線をしている人は、疲れていても「そんなもんだろう」と思いあまり不安を感じたりしません。
もちろんポジティブな人であっても、極度に疲れたり極度に追い込まれたりすると、すごく落ち込んだりしますが。

脳の配線というのは、遺伝的な問題とチューニングとプルーニングによって決まります。
チューニングやプルーニングとは何かというと、記憶や学習の問題です。

幼少期に虐待を受けたりして、悪いように未来や社会や人間関係を捉えている、とても攻撃的で暴力的で、悪いことしか起きないと脳に刷り込まれていると、少し体調が悪くなるだけでもすごく悲観的になってしまいます。
そしてすごく恐れてしまいます。
それはこの配線の問題です。
過去の虐待や嫌な思いがあったりすると、何か嫌なことがあったときに他の人よりもナーバスになってしまいます。

治療

・心身のバランス
では治療とは何かと言うと、体調の問題に対しては心身のバランスを整えます。

・概念
良い知識(概念)を身につけます。
虐待を受けていて、人間は悪いものだ、人はだますものだ、結婚して最初は愛し合っても喧嘩をするものだ、未来は悪くなるに決まっているなど、悪いように考えています。
悪くなるような世界や知識でいっぱいなので、それを良い知識に切り替え、加えて行き、概念が変わっていくことで、脳の配線が少しずつ変わっていきます。
ですからこのような概念を学ぶことはとても重要です。

・良い人間関係
良い人間関係を維持することで体のバランスも整いますし、良い知識も身に付きます。
いくら本で人間は素晴らしいものだと読んでも、頭に入ってきません。
やはり実感したり、人間の優しさに触れたり、手を繋いだり、恋人ができる、そのような人間同士の体験をすることでバランスも整い概念も変わっていきます。
ですから良い人間関係を作ることは治療において非常に重要です。

良い人間関係ができるように福祉の人を導入する、カウンセリングをする、主治医との信頼関係を築くことも重要です。
治療の場の疑似的な人間関係で満足した後に、実際の新しい人間関係にトライしていく。友達を作っていくなど実践をしていきます。

なぜ良い人間関係が必要なのか

なぜ良い人間関係が必要なのかと言うと、やはりどう考えても人間は「社会的な動物」だからです。

・バランスが整う
動物として群れで生きていたので、群の中にいることでバランスが整うようにできています。
一匹狼では生きていけないようにできているのです。
時々そういう人もいます。人間の進化の中で時々は群から出て人が住めないような場所に住む人がいないと、人間はいろいろな場所に住めないですから。
群の中でたまにそのような変わり者はいますが、多くの人は群の中で生きないと安心、満足できません。そのように作られています。

人は社会的な動物なので、人間同士でいることで自律神経のバランスが整います。
人といないと自律神経のバランスが崩れていきます。
ですから人と一緒にいることはとても重要です。こういうことを「グルーミング」といいます。
グルーミングとは毛づくろいのことです。
会話、雑談をすることで、自律神経が整います。

また、所属しているという安心感もあります。
自分はここにいる、周りに同じ人間がいるから安心する。
サバンナにひとりでいたら不安ですが、群で何人も人間がいると安心します。それは他の動物と一緒です。

・知識の整理
それから、知識の整理もあります。概念が整理されていくのです。
人がいないと自分はどんな人間かわかりません。
相手は鏡のようなもので、会話をしていく中で「自分はこういうタイプなんだな」「ケチなんだな」「怒りっぽいんだな」とわかったりします。
ひとりでいると自分がどんな人間かわかりませんが、誰かといたり会話をすることで、自分は思ったよりもこんな人間なんだなということがわかったりします。

自分の感情も人といないとよくわかりません。
患者さんはよく「何が苦しいのかよくわかりません」「何が不安なのかよくわかりません」「不安なのか怒っているのかよくわかりません」「なんかモジモジします」と言います。
それはそうなのだろうなと思います。

言葉にしていくのは難しいのです。人と会話をしないと言葉や感情というのはわかりません。
感情というのもつくられていきます。学習していくのです。

「肩こりは日本人にしかない」と聞いたことがありませんか?
日本人は肩こりという言葉があるから のですが、欧米の人は「背中が痛い」と言ったりします。
同じように、悲しみやもののあわれもそうです。
悲しみは学ばないとわかりませんし、「侘び寂び」や「もののあわれ」も日本の文化の中で学ばないとよくわかりません。「侘び寂び」など特に欧米の人にはよくわからない概念だったりします。

これはもともと脳の中に「侘び寂び」というものがインプットされているのではなく、「侘び寂び」という感情は学習してくものです。
ですから感情も人といないと学んでいけませんし、感情を言語化することによってコントロールすることができるようになります。

また、未来が良いものになるとわかっていないと人間は苦しいものです。
良い未来になると思えないと、どんどんうつっぽくなってしまいます。
未来はどうなったら良くなるのだろうということは、誰かとディスカッションをしていくとポジティブになっていきます。

このような知識の整理がとても重要です。
人間は社会的な動物であり、バランスを整え知識の整理をするためには人が必要、ということになります。

これはポジティブな面です。

悪い本能

ただ、精神科の患者さんは、人に傷つけられてきた生き物です。
人間には良い面もあれば悪い面もあります。「悪い本能」です。

人間は社会的動物だから故に、嫉妬をしたり、嫌われるのではないかと不安になったり、認められたいという承認欲求を持ち、認められなかったら悔しい、悲しいと思う。このような本能を抱くようになりました。

本来は体調を整えるために必要だった人間関係が、「それ自体」を目的としてしまうのです。

体の調子が悪くなっても良いから承認欲求を満たしたい、痩せることで体の調子は悪くなるけれど皆に認められたい、働き過ぎて体の調子は悪くなるけれど認められたい、この職場にいても自分にはメリットはないけれど職場の人に嫌われたくない、といったことがあります。

つまり、本来の目的から、進化の過程で独自進化をしてしまったのです。
それが暴走してしまっているという側面があります。
この進化もすごく複雑です。

人間は文化や知識を伝達できるようになりました。
文字などを通じて、1つの世代から次の世代へいろいろな知識を伝えられるようになりました。ある種のコピーを作れるようになったということです。
知識、情報、データの部分でコピーを作れるようになった結果、進化が激しくなってしまい、動物らしくなくなってしまいました。

他の生き物と人間はやはり違いますよね。
動物っぽくありません。
それはこのような知識や文化や情報による進化が激しくなり、そちらの方が肉体や遺伝子の進化よりもはるかに早く膨大になっているからです。
そのため人間は特別な生き物に見えるようになってしまいました。

その結果、そこから外れてしまう人も出てきます。
それが患者さんとしています。
僕らが診ている人、僕らの仲間としてそのような患者さんが増えてしまいました。

複数のコミュニティ

人間には社会的なコミュニティが重要だということがわかったのですが、現代は複数のコミュニティに入れるようになりました。
これもまた変わりました。

昔は群れや村の中で生きていたのが移動距離も増え、群れから村、村から国家というものに変わり、国家の中でも家族というコミュニティや職場というコミュニティになりました。
昔は家族と仕事が一緒でした。
農家の人は農家、大工の人は大工、といった形で親の仕事を継いでいたので、家族でいることと職場が同じでした。
今はそれが分かれています。それによって人間は2つのコミュニティに入れるようになりました。

そこから、趣味のコミュニティなども増えましたが物理的な制約がありました。
日曜日だけは教会に行き教会のコミュニティに参加する、月~金は職場と家庭だけ、時々会合に行っていたというだけでした。

今はSNSを使って同時にいろいろなコミュニティに行けます。
僕もオンラインサロンは複数入っています。あそこに行って自分の思いを喋り、あそこに行って会話をして、などしています。

テキストベースだったりZoomだったりしますが、喋ることで人間関係を作り、バランスを整えたり知識の整理ができるようになります。それが現代です。

その中で「オンライン自助会」があります。
患者さんのために、オンラインでのつながりや知識の伝達はとても重要だと思います。
今もありますが、まだ十分ではないと思います。
僕には今回お話ししたような思いがあり、バーチャルリアリティの中で良い人間関係を作って心身のバランスを整えたり、概念を学ぶためにどうすれば良いかを研究、実践したいということでオンライン自助会を作りました。
「メタバースに移住したいマスラー」というメンバシップ制の中で、Slackにグループを作って実験的に開始しています。

このようなことを考えながら、臨床をしたりSlackを見たりYouTubeを撮ったりしています。
コミュニティがどうして重要かということがわかりましたでしょうか?
今回はどうして僕がYouTubeをやっているのか、オンライン自助会をやっているのかというお話をしました。
YouTubeは概念の部分だけですから、今後オンライン自助会が起こすイノベーションの方が大きいと思っています。


2022.5.7

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