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強迫性障害について解説します

00:38 強迫観念・強迫行為
04:49 原因
07:10 治療
10:11 悪化すると他人を巻き込む

本日は「強迫性障害」についてざっくり解説します。

「強迫性障害」という病気を聞いたことがある人も多いと思います。
結構有名ですよね。
どういう病気かというと、「強迫観念」と「強迫行為」という2つのものから成り立つ病気です。

強迫観念・強迫行為

「強迫観念」というのは、考えたくないけど考えてしまう、バカらしいと思っていてもついつい考え込んでしまう、そしてその考えが抜けないことを言います。

「強迫行為」というのは、自分では止めたいと思ってもやめられない、やらないと気が済まない行為のことを言います。

具体的には、

清潔や安全に関わることとして、何度も手洗いをしてしまう、何かをするたびに手を洗う、鍵やガス、火元をしつこく確認する、ということがあります。
片付けに関しても常にきちんとしておかないと気が済まない、ということもあります。

次によくあるのが対称性です。
きちんとしておかないと嫌なので、鍵閉め確認も1,2,3,4,5と毎回5回確認しないと嫌だ、確認中に声を掛けられて「あれ、何回目だっけ?」と思って最初からまた5回確認をする、きっちりリズムが取れないと嫌という感じです。

数字を見たときに、最初と最後が対称になってないと気が済まないから、1-5-4という数字を見たときに、1に3を足して、1-5-4を4-5-4の対称型になったと自分の中で暗算して納得すると先へ進める、ということもあります。

これはあまりよく分からない人や初めて聞いたという人から見ると「益田は何を言ってるんだ」と言われると思いますが、わかる人にはわかると思います。
テレビのリモコンも対称にならないと気が済まない、テレビのリモコンとビデオのリモコンがずれていると嫌だ、ということもあります。

それは大なり小なり誰でもあるじゃないか、と思われるかもしれませんが、それが気になって仕方がない、遠くに離れていて友だちがずらしたら「おい!」と直しに行ってしまうのが強迫性障害の特徴です。

あとは禁止や危害です。
自分は誰かを攻撃してしまうのではないか、自分は違反をしてしまうのではないか、自分はみんなに頼まれたチケットを忘れたのではないかと何度も確認してしまう、変なこと言ってないよねと何度も人に聞いてしまう、そういうことが強迫行為です。

自分でもやめなければいけないと思っていてもやめられないことを強迫観念、強迫行為と言います。
その組み合わせで色々なタイプがあります。

清潔にしたいという強迫観念が強い人は常に手袋をしたり、使い捨てのパンツや使い捨ての手袋がないと嫌で、それを購入するときには対称性を気にして2の倍数個を買わないと嫌、レジで買うときは2セットずつ買わないと嫌なので、お店に3つしか商品がなかったら逆に買わない、という感じです。

臨床家がきけば「あ、このパターンね。良くあるね」と言えますが、実際の治療経験があまりないと「あれ、これは本当に強迫性障害なのか?」「これはどういう行為に当てはまるんだろう?」と思って不安になることもあるのかなと思います。

原因

何が原因なのか、疫学的には何が分かっているかというと…

20歳以前に発症することが多いと言われています。
だいたい14歳くらいから発症し、20歳くらいまでには症状が出ると言われています。

人口の1~2%くらいが発症します。
男性よりも女性に多いです。
不潔関係だと産後に悪化するケースもあります。

脳の中でどこが問題かということはわかっており、CSTC回路の過活動や異常活動と言われています。
CSTC回路とは、皮質から線条体そして視床へ、視床からまた皮質へ戻る、皮質→線条体→視床→皮質…ですが、話半分で聞いてください、僕もよくわかっていません。

CSTC回路の異常だとわかっている、と言っても、診断のためにfMRI(Functional MRI)で画像診断するというものではありません。fMRIはどの病院にもあるというものではないですから。
実際には臨床診断、症状から診断することが多いです。
研究段階ですが、CSTC回路の異常活動だとわかってるということです。

つまり、生物学的な要素が大きい、ということです。
強迫性障害というのは、何かストレスがあるとか、自分の甘えや思い込み、というものが原因ではありません。

脳の病気としてわかっているので、SSRI(抗うつ薬)が効きます。
あとはアナフラニール(三環系抗うつ薬)が効いたりします。
他には、保険適用ではないですが、SNRI(セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)も有効です。

治療

実際に患者さんにはどういう治療をしていくのかというと、薬物治療だけではダメで、CBT(認知行動療法)を中心としたカウンセリング的なもの、精神療法も重要になります。
薬だけで治すものではありません。

どういう説明をするかというと、強迫性障害は報酬系回路の問題で依存症と似ているよ、とお話します。

不安があったときにある行為をすると楽になる、不安なときに手を洗うと楽になったとすると、また不安になったときに同じ行為をしたくなります。
そうすると楽になります。
これによって、不安ー行為ー楽ー不安ー…というサイクルが出来上がり、依存症のようにこのサイクルが強くなってやめられなくなります。

不安だ、確認した、楽になった、不安だ、お酒を飲んだ、楽になった、不安だ、ギャンブルをした、楽になった、また嫌なことがあったらギャンブルをしたくなった、ということと同じです。
強迫性障害も同じようなものだと説明します。

そういうことを説明することによって「モデル」ができます。
自分の中で強迫性障害はこういうものだと理解すると、客観的に見えたり、俯瞰的に見えたりして、不安を無くそう、不安が起きないように疲れないようにしよう、自分はこういうものは苦手だから誰かに頼もう、そういう対処ができるようになります。

また、不安なときもちょっと我慢するようにします。
今いつもの行為をすれば楽になるかもしれないけれど、依存が強まってしまうから、我慢できるのだったら我慢してみようという気持ちになれたりします。

そういうことがわかります。
このモデルを理解することで客観的に見えて我慢しやすくなります。

治療として、認知行動療法というのは、認知の歪みがあるということを説明したり教育的に理解してもらうことになります。

このほかに、暴露療法を交えたりします。
例えば不潔に対する強迫だと、ちょっと汚いものを我慢して触ってみる、ということも行います。
ちょっとずつ慣らしていく、自分にとって触れるものを増やしていく。
最初は駅のベンチやトイレに座れなかったけど、駅の手すりに触ってみる、触れるようになったら次はベンチに座ってみる、という風にチャレンジしていきます。
自分でギリギリ耐えられることをやってみて、次の段階を試してみる。
そうして段々耐えられることを増やすことを暴露療法と言います。
これも有効です。

悪化すると他人を巻き込む

強迫性障害の場合は、悪化すると他人を巻き込んでしまいます。

自分も手を洗う、他の人にも手を洗ってもらいたい、家族にも手を洗ってもらいたい、家の中の配置の問題も家族にもそのルールを守ってもらいたい、自分だけではなく他の人にも同じようにやってもらわないと落ち着かなくなって怒ったりイライラしたりしてしまいます。

他人を巻き込んではいけない、認知の歪みを治していく、家族にも病気を説明して理解してもらうことも重要になります。

強迫性障害と似たような、しかし別の疾患として、ASD(自閉スペクトラム症)の人のこだわりがあります。
ASD特有のこだわりとして強迫的になることがありますが、強迫性障害とは違う、違わないかもしれないですが、まだ脳的な原因がわかってないですからね、でもそういうことが言われたりします。
あとはうつ病が悪化しているから、清潔や対称性などが気になっているのかもしれません。

うつは強迫性障害と使う薬が似ていますから、まだまだ分かりませんが、鑑別としてあがることがあります。
説明すると難しいのですが、実際に臨床をしていると強迫性障害の人の強迫性とASDやうつ病の人の強迫的なところは、ニュアンスが違っている感じはするので、違うなと思いながら診ています。
実際にそれは研究的にはまだ確かめられていません。
わからないことも多いです。

強迫性障害と同じ仲間で似ているものとして、ためこみ症というものがあります。
いわゆるゴミ屋敷というものです。捨てられないということです。
そういう人たちも強迫性障害の仲間で薬物治療が有効ですし、暴露療法などが効きます。
だけど違う病気として扱われています。

今回は強迫性障害についてざっくり解説しました。


2022.6.17

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