本日は「メタバース空間における精神科治療」というテーマでお話しします。
時々このような質問を受けます。
「今後どのような治療になると思いますか?」
「精神科治療はどのように変化していくと思いますか?」
「オンライン診療やメタバースの時代はどのようになると思いますか?」
今回、この動画を撮るにあたり自分なりに考え直しましたので、それを皆さんに発表したいと思います。
コンテンツ
物理的な制限
僕が臨床をしていてよく思うこと、困っていることは何かと言うと、「多様な治療を制限時間内でやらなければいけない」ということです。
今は物理的な制限があるので、通える人を診なければいけません。
統合失調症も診なければいけなければ、摂食障害、発達障害、人格障害の人も、基本的には入院の必要のない外来レベルで済む人は全部診なければいけません。
それは結構大変なことです。
これが全てオンラインでできるならば、もっと専門性に特化できます。
日本中の中で、例えば「摂食障害を診る先生はこの先生」と50人くらいにまとめてくれたら良い、ということもあります。
アルコール依存症専門の病院があるように、精神疾患を全部診なければいけない、それも一人の医師が同じ日に色々な疾患を診なければいけないというのは本当に大変です。すごく頭を使います。
物理的な制限、エリアがあるので仕方がない、患者さんが通える範囲のところに行かなければいけない。
精神疾患はメジャーだとは言いつつ、まだまだレアな疾患です。
どうしても1つの病院、1つの医師が抱えなければいけない患者さんは多様です。
物理的な制限を取り払うことができれば、相性や専門性を追求していくことができます。
同じうつでも、認知行動療法的なアプローチや精神分析的なアプローチ、家族療法的なアプローチ、全部やらなければいけないのでどれも中途半端になる感じがします。
僕からすればすごく嫌なのです。他のドクターもそうだと思います。
何かを追求したら何かを診れなくなってしまうし、そうすると自分の責任を果たせなくなってしまいます。
いろいろな治療法がありますが、認知行動療法を極めればすべての疾患、すべての患者さんを診れるかと言えばそんなことはありません。精神分析も然りです。
その療法の得意なものがあります。
全部やろうとすると本当に大変なので、どれか1個とか、「自分はこういうものをするので、こういう患者さん集まってください」と割り振ってくれれば楽なのになと思います。
メタバースになればそれが実現するのかなと思います。
今の物理的な距離感だとそのような割り振りはできません。
メタバースのメリット、デメリット
メタバースだと患者さんも移動をしなくて良いので、レアな疾患の人はレアな疾患の専門家のところに行きやすいですし、引きこもりの人も診療を受けやすくなると思います。
ネットだからプライバシーに関するデータが流出するのではないかという不安があるかもしれませんが、待合で待たなくても良いという点でプライバシーを保ちやすいというのはあるかなと思います。
特に地方の人は紛れにくいと思うので良いかと思います。
ただデメリットもあります。
オンライン上だと身体の診察がきちんとできないというリスクがあります。
その場で緊急対応をしなければいけない、入院の判断をして入院先に送らなければいけないという場合も難しいです。
また、スイッチを切られてしまうと治療から脱落してしまいます。
判断能力が低下してしまっている人たちが精神疾患の患者さんの特徴でもあるので、そのような人たちに本当に治療ができるのか疑問があるというのはよくわかります。
心理的ケアに特化?
結局、メタバース空間やオンライン上でやれる治療と言うのは「心理的ケア」に特化する以外ないのかなと思っています。
診断をする、医学的な判断をするのはオンライン上ではなかなか不十分なのかなと思います。
オンラインカウンセリング、オンラインでの集団セラピーなどは良いのですが、それ以外のことはオンラインだとなかなか難しく、リアルな治療も必要になってくるのではないかと思います。
心理的ケアが得意だろうということなのですが、僕はオンライン診療、オンラインカウンセリング、オンライン自助会をやっています。
特に力を入れている、益田裕介だからこそできるというのが「オンライン自助会」だと思います。これはYouTubeのメンバーシップを使ってやっています。
もちろんオンライン診療もやっていますし、心理士さんも数名雇ってオンラインカウンセリングもやっています。
自助会の良さ
自助会の良さは、本来だったらつながることができなかった人たちとつながることができる、ということです。
物理的な制限を取り払うことができるので、今までだったらつながることができなかった人たちとつながれたということです。
そこで知識や体験を共有できるということがメリットです。
デメリットは、今までつながらなかった人たちがつながるようになったので、新しいトラブルが生まれてしまうということです。
人と人が一緒にいれば、良いこともあれば悪いことも起きてしまうので、悪いことを少しでも減らして良いことを増やすにはどうしたら良いのかというノウハウをためたり、考えたり研究したりしています。
それを今年の3月24日から始めたばかりです。
メタバース空間における精神科治療で重要なポイントはここなのではないかと思います。
相性や専門性を追求することができる。
でも判断能力が低下している人に対しての対応が遅れてしまう。
そのため心理的ケアに特化するしかない。それが得意である。
こういったことが特徴だと思います。
雑談
2022.6.30