本日は「精神科医とインフルエンサー」というテーマで、少し雑談にお付き合いいただければと思います。
僕の考えていることを共有し、ディスカッションしてもらえればと思います。
コメント欄も読んでいますので、この動画の感想も聞かせてください。
コンテンツ
YouTubeを始めたきっかけ
元々YouTubeを始めたきっかけは、クリニックの広告でもありましたし、通院中の患者さんへの情報提供でもありました。
やっていく過程で、YouTubeが持っている力、コンテンツが持っている力に気付き、それを治療的に活かせることもわかってきたのでエネルギーを注いでやっています。
広告収入も入ってくるので、チーム編成をしてより効率的に、より良いコンテンツが出来るようにPDCAサイクルを回しています。
※PDCAサイクル
Plan→ Do→ Check→ Actの4段階を繰り返して業務を継続的に改善する方法。
そういうことをやっていくと影響力を持ちます。
でも最初はそこまで意図していませんでした。
当事者YouTuberの人たち、精神科医以外の人たちが精神医学を語るコンテンツが増えていました。
それ自体が悪いというわけではなかったのですが、精神科医がそこにプレイヤーとして参加しないということは、やはり患者さんにとって不利益なんじゃないか、と思っていました。
僕がYouTubeを始める前は、患者さんたちは当事者YouTuberなど色々な情報をインターネットで調べ、それをクリニックへ持ってきて話をしていました。
それには正しいものもあれば間違っているものもあり、極端な治療方針を信じている患者さんもいて、それを訂正するところから治療が始まっていました。
そうすると、患者さんと良い治療関係を結べません。
「益田はインターネットと違うことを言っているからヤブ医者だ」と後日クリニックの口コミに星1つを付けるというようなことが続いていました。
そういう危機感もありYouTubeを始めたということもあります。
インフルエンサーというかYouTubeが持っている力、インターネットが持っている力はすごく感じており、それを止めることができないならば利用していかなければいけないと思いやっています。
インフルエンサーの機能
インフルエンサーの機能は、情報発信をするということと共に「親近感を持つ」ということです。
僕が精神医学を伝えている、それは正しい精神医学、教科書的な精神医学ではなくYouTube用にアレンジされた、リ・デザインされた、ある種の簡略化された精神医学を伝えているということです。
これは良くもあり悪くもあります。
場合によっては悪いと考える人もいるかもしれません。
親近感を持つので情報が入って来やすく、治療的に活かせます。
医者って信用できるんだな、優しい人もいるんだな、とわかっていく中で治療的にプラスになることもあると思います。
ただそれはサブの主治医として力を持ってしまうということなので、そんな責任を益田が負えるのか、という問題もあります。
共同体のシンボル
3つ目のポイントとしては、共同体のシンボルになってしまう、ということです。
インターネットというものはコンテンツを中心に人が集まってくる。
人が集まってくるとそこにコミュニティができ、普段物理的には出会わないはずの人が出会うということが起きます。
コメント欄でやり取りをしている中で、直接顔を合わせているわけではありませんがコミュニティが出来上がっています。
こういうことを「メタバース」と言います。
コミュニティをつくってしまう、コミュニティができてしまうということをどうしたら良いのかということは考えています。
出来上がったものを良い方へ活かすべきだと思います。
患者さんは、自分以外にも同じような病気を抱えている人がいる、経験者が情報交換をする、医師から伝わるのではなく、生々しい話を聞くことでしか得られないものはたくさんあります。
そして、自分がそこで情報発信することで芽生える責任感、貢献している感覚、所属感は替え難いものなので、やはりこれは活かしていきたいと思います。
人間が健康になるためには知識も重要だし、心身の健康のためにはしっかりとした睡眠も重要です。
もう一つ大事なことは、人と繋がりを持っている、健康的な繋がりを持っているということです。
繋がりとは、生で接している、家族である、ということ以外にも、インターネット上でも起こり得るものであり、この繋がりはとても重要というか治療的に活かせると思います。
この3つを揃えなければいけませんが、その中でも「人との繋がり」はとても重要なので、共同体のシンボルであるという責任から逃れるというのは、無責任なんじゃないかと僕は思っています。
これは、そもそも医師であることとどう違うんだろうとは思いました。
例えば、精神科医であるということは、別にインフルエンサーでなくても同じようなことをやっていたんだろうなと思います。
外来や診察時間の中で情報発信はしていたわけだし、サブ主治医ではなく主治医として患者さんとの情緒的な繋がりだったり、人間関係を持っていたわけです。
そして病院というのは地域のシンボルでもあったわけです。
患者会など色々なコミュニティもつくっていましたから、決してインターネットになったから新しくできた機能ではないんじゃないかな、と思います。
オンライン・コミュニティ
オンライン・コミュニティの話ですが、実際の規模は、YouTubeにコメントを書く人は数万人、YouTubeライブに参加している人はだいたい2,000人くらい。
メンバーシップに入っている人は150人くらいです。
僕のインフルエンサーとしてのコミュニティ、共同体の大きさは、薄く言うなら数万人単位、濃く言うのであれば150人くらいということです。
コミュニティの人たちは、知ることや学ぶこと、発言することや発言に返信し合うこと、普段だったら言えないことを言ってみるという挑戦ができること、そして挑戦したことに対して受容してもらえること、という体験ができます。
なので治療効果が高まるということです。
悪いコメントが付かないように、YouTubeのコメントは基本的に承認制にしています。
被害的に受け取ってしまう人も多いので、そんなに悪い意味ではないコメントもあるかもしれませんが、基本的に返信は全部チェックしていません(承認しない)。
メンバーシップに入っている人は返信も可ということにしています。でもあまり返信する人は少ないかなと思っています。
なかなかデリケートなので目を通しています。
知識とは何かというと「抽象 x 経験」です。
AIとは「アルゴリズム x データ」なので、人間の知識というものも基本的には抽象的な情報と経験値の積み重ね、相乗効果で理解していくということがあります。
抽象的な情報は動画を通じて解説できるのですが、経験値的なものはコメント欄を利用してもらうしか方法がないと思っているので、上手く利用させてもらっています。
・メンバーシップ
メンバーシップ制のことを色々考えながらやっているのですが、これはどういうものなのかというと、Slack(閉じたSNS)を中心にZoomで座談会を行ったり、僕もコメントを返したりしています。
これはどういうものかというと、グループ・セラピー、セルフケア・グループ(自助団体)、あとはボランティアや居場所づくり。
この辺りのものに関して色々な本を読みながら参考にして、そのエッセンスをオンライン上に組み込むということをやっています。
色々な本を読んでいるのですが、自分でやってみないとわからないこともあるので少しずつやっているという感じです。
現在168人がメンバーシップに参加していて、だいたい月に30人くらい増えているようです。
2022年3月24日からスタートし、今4ヶ月が経とうとしている(動画の撮影日は7/20)のですが、これくらい増えています。
月に30人くらい増えており、YouTubeの登録者数が大体月に1万5000人くらいずつ増えているので、登録者数のうちの0.2%くらいがメンバーシップに入っている計算なのかな、と思います。
いつまで増えるかわかりませんがそんな感じです。
そもそもYouTubeでは再生した人の1%がチャンネル登録する、と言われているので、そういう計算のようです。
メンバーシップは、半分くらいが参加してすぐやめてしまう感じです。
そう考えるとメンバーシップに入る人はもう少し多いのですが、そういう感じです。
今やっていることは、Notionで情報をもう一度整理し、メンバーシップのオンライン自助コミュニティのノウハウ、これまでの知見をまとめています。
これをみんなでシェアし、適宜改善していこうかなと思っています。
あとは研修動画です。
オリジナルの動画を撮ったりもしていますが、基本的にはいつものこの動画です。
ほかにはYouTubeライブを限定でときどきやったり、Zoom座談会をしたりしています。
グループ・セラピーやセルフケア・グループを運営していく中で、会の中で独自の資格を作った方が良いと言われています。
資格といってもそれでお金が発生するとかではなく、これくらいの研修を受けました、これくらい学んでいます、という資格を作っていかなければいけない、作った方が会として運営しやすくなるのでそれをつくろうと思っていました。
当初は、この資格というのはYouTubeを何本か見てもらい、Googleフォームで作った小テストに合格して、僕と軽く面接をしたら資格を得る、という形にしようと思っていました。
あとはSV(スーパービジョン)とか色々考えていたのですが、その前にもう一回治療プログラムや精神医学をデザインし直す必要があるなと思いました。
そもそも診察室で伝えている説明でいいのか、僕が考えている新しい精神医学、新しいというわけではないのですがオンラインコミュニティに合ったような形の精神医学のデザイン化を考えた方が良い、と思いました。
そのテキストを作ることを検討しているという感じです。
今回、8/5と8/25に本が2冊出ます。
初めての本だったのですが、本づくりの中で、世の中の人は知らないことがたくさんあるんだなと再認識もしたし、全ての動画を皆が追えているわけでもないし、僕の中でも動画を撮りながら臨床感覚がすごく変わってきているので、一回テキストを作っていくべきだなと思っています。
3冊目の話も来ているので、良いきっかけとしてそれを利用しながら、治療プログラムや精神医学のリ・デザインを考え直してみようかな、と思っています。
そうすると、また資格のこともできるのかなと思います。
デザインしたものをメンバーシップの人やYouTubeの人たちにも見てもらって、色々変わったりすると資格の話が遠のくかもしれませんが。
今は暫定的な資格を作ることで会を運営しているという感じです。
色々な人が色々思うと思いますし、色々な方が危惧しているところもあると思います。
益田って何なんだ、コイツいかれてるんじゃないか、ダメなヤツなんじゃないか、など色々思っていると思いますが、僕はこういう思いでやっているのと、こういう危機感、こういうことを考えているということで、今回動画を撮りました。
今回は、精神科医とインフルエンサーはどういうものか、というテーマで今やっていること、今考えていることを雑談的にお話しました。
コミュニティ
2022.7.31