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受診拒否する家族への説得方法?

00:00 OP
02:00 北風と太陽
04:01 聞くことが大事
05:02 聞くための準備
07:53 何か言いたくても「言わない」

本日は「受診しない家族への対応」というテーマでお話しします。

家族の一員の誰かがうつ、アルコール依存症、発達障害だったりと、精神科の問題を抱えている場合があります。
しかも受診前であり、なかなか通院してくれない場合はたくさんあると思います。

何か調子悪そうだな、心配だなと思っても、本人を病院に連れて行くことができない。
どうしたらいいんだろうと思って、僕の動画を見てくれている方がたくさんいらっしゃいます。

今回は、そういう時にどうしたら良いかをお話ししようと思います。

ちょっと宣伝になるんですけど、編集者の人に言われたので、僕も言わされているので、ご理解くださいね。
「精神科医がやっている聞き方話し方」という本がフォレスト出版から出ました。

ビジネス書っぽい内容でフランクに書いています。
精神医学っぽさよりもフランクな感じで書いています。
ここにある内容を応用して、今回の動画を説明しようと思います。

ビジネスマンの営業スキルを高めるための本でもあるので、ちょっと今回の趣旨とはズレるのですが、参考になるのでもしよかったらご購入いただければと思います。
宣伝終わりです。

北風と太陽

受診しない家族への対応をどうしたらいいのかというと、北風と太陽の2つのプランがあります。

北風というのは無理やり連れて行くことです。
行きなさいとガミガミ言うパターンです。もちろんうまくいきません。

太陽でやったほうがいいのですが、どうしようもない場合があります。
どうしても悠長に太陽みたいなことを言っていられない場合があります。
自傷他害の恐れがあるときです。

自殺未遂、摂食障害やアルコール依存症で食べないで命の危険があるというとき。
自分で食べないことも自傷のひとつです。
そして誰かを襲ってしまう、家族に暴力を加える、幻覚妄想のせいで家族に暴力を加えてしまう、というのも自傷他害の他害の要素だったりします。
自傷の場合、食べられないとか変な感じになっている場合は、救急車を呼んでください。

誰かに暴力をふるってしまう場合は警察を呼んでください。
警察を呼んだときに、「23条」や「措置入院」の話をしてください。
これは強制入院をするときのルールです。

警察官によっては23条や措置入院のことを知らない方がいます。
知っているけれど忘れているとか、記憶から抜けている方がいます。
若い警察官は特に経験がなかったりして、そういうことを知らないことが多いです。
それをお願いしますと言うと、強制入院、警察官の通報によって入院するという方法もあります。
これを検討してもらえればと思います。
ただ、自傷他害が激しくない場合は、やはり家族の説得が必要です。
無理やり連れて行くことはなかなかできません。

「聞く」ことが大事

ではどうしたらいいのかと言うと、やはり太陽でやらなければいけません。
歯がゆいですよ。

これだけ心配して苦しいのに、まだ太陽をやらせるのか、益田はどんなに無慈悲なやつなんだ。
益田は全然私たちのことを考えてくれないと思うかもしれません。
気持ちはよくわかるし、言われなくてもわかってるよと思うかもしれないですが、あえてもう一回頭の整理のために言わせてください。

聞くことが大事です。
とにかく聞く。話を聞くのが大事です。
伝えるよりも聞く。大事なのは聞くことです。

いついかなる時も、聞くことが話すことよりも上回ることはあり得ません。
とにかく聞く。聞くための準備をまずしましょうということです。

聞いたら相手は心を開いてくれます。
受診してくれるかもしれないので、まず聞くための準備をしようということです。

聞くための準備

聞くための準備とは何かというと、まず「自分は相手からどう見られているのか」ということです。

・自分はどう見られている?
口うるさい人と思われているのか、意地悪なお母さんと思われているのか、などいろいろ想像しながら、自分がどう見られているのかということを考えます。

いつもうるさい感じだったら、話を聞くときにはいつもと雰囲気を変えて、話を聞く演出をする。
頼りないお母さんだと思われてるのであれば、ここぞというときは話を聞くよと言って、がっしり座る、話をするまでは動かないぐらいの強い意志を見せることも大事だったりします。

・自分の気持ちを押し付けている?
あとは、自分の気持ちを押し付けていないかということです。
この子を良くしたいとか、旦那さんに良くなってもらいたいではなく、世間体が悪いから連れて行きたい、うるさいから連れてきたい、そういう要素もあるかもしれないけれど、でも自分の怒りや悲しみを把握するということです。

傷ついていると思うんですよね。
自分の家族が病んでいる、苦しんでいる姿を見ると、家族は心が痛みます。
知らないうちに自分の心を疲弊させていたりします。

その自分の気持ちに気づいてください。
自分の気持ちに気づいた上で、怒ったり悲しんだりせずに、フラットな気持ちで相手の話を聞ける状況を作ってあげる。
そのためには、自己理解がとても重要だったりします。

・疾患の理解
あとは、疾患の理解です。
どういう病気なのかは医者でないとわからないと思うかもしれないですが、YouTubeもありますから、おおよその当たりをつけて理解していくことはとても重要です。
病気のことがわかればわかるほどうまく話を聞けますから、疾患の理解は重要です。

・場所を選ぶ
時間と場所を選びましょう。
自分の都合や自分のタイミングで話を聞こうとするとやはりうまくいかないので、相手の様子を伺いつつ、落ち着いた場所を用意する。
プライバシーが守れる場所を用意する。家族であっても、ほかの家族に聞かれないような場所を用意するということです。

その上で、ここまで準備しておいても話をしません。
そういうものだと思ってください。
どこの家族もそうです。
三顧の礼ですよ、三国志のね。
1回目失敗した、2回目失敗した。3回目になってようやく話をし始めてくれるかもしれません。

断られてもワーっと思ったり、益田が言っていたことと違うじゃないかとか、傷つくけれどぐっとこらえてこれを思い出してもらえたらと思います。

何か言いたくても「言わない」

話は聞きましょう。
何か言いたくても言わない。アドバイスをしたくなる。
最後は何か一言言ってやりたくなります。でもぐっとこらえましょう。

とにかくこらえて言わない。これがきつい。
もうとにかく言ってやりたくなります。
「いや、それお前、受診してないからやんけ」と言いたくなるけれど言わない。
これは我慢する。
ぐっとこらえて聞く。相手の話を聞く。
本当につらいですよ。これをやらなければいけないんですよね。

「益田は何時間も人の話聞いたことあるのか」「いや、お前は外来で5分しか診療してないじゃないか」「お前はカウンセリングと言っても45分しか話を聞いてないじゃないか」「本当に3時間、5時間の話を聞いたことあるんですか」「同じ話をループされて何度も聞いたことはあるんですか」と言われそうです。

申し訳ないし、仕事でそれをやっているわけではないけれど、でも家族はやらなければいけないときもあります。
ぐっとこらえてください。
本当にきつかったら1回席を外してもいいと思いますが、とにかく「言わない」ということは大事ですね。

そうしたらやはり、聞いてくれたお返しを患者さんはしたくなります。
それで自分から行くことがあります。
だからとにかく聞くということが大事です。
だから聞いてみましょうということです。

これは教科書的な答えです。あくまで。
患者さんの状態、病気、家族の構成、いろいろな要素によってこの基本はずらします。
基本通りにならないこともありますが、これが基本だと覚えておいてください。

とにかく相手の悩んでいることを聞く。相手が何に困っているかを聞く。
こちらから見たら明らかだよということもあります。だけど聞くのです。
それはすごく苦しいですし、辛いし、しんどいです。
2時間も3時間も同じ話をループされることもあるかもしれないです。

無理のない範囲でやらなければいけないのですが、基本はこういうことだろうなと思います。

いつも診療していて、患者さんもつらいし、患者さんの家族もつらいなと思います。
それなのに益田のお前の外来の態度はとか言われそうですが、そこはお許しください。

ということで、今回は受診しない家族への対応というテーマでお話ししました。


2022.9.2

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