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「夢」はどのように臨床で活かされるのか?

00:00 OP
02:04 夢占いではない
03:55 文脈を読む
05:24 相手はメタ認知を活かすことができるか?
06:13 脳のメカニズム

本日は「夢や物語はどのように臨床で活かされるのか」というテーマでお話します。

患者さんが昨日見た夢の内容を医師に告げて、「この夢の内容を見たということは、あなたはこういうことを考えているんですね」とか言って、「ハッ、そうなんです! なんで先生わかったんですか? 私はこんなことで悩んでいたんです」というシーンがありますよね。映画や物語で。

それは精神分析と呼ばれて今ではインチキと呼ばれているとか、そこまでセットで思うかもしれないのですが、そうではなく、夢の話は重要なのです。
夢を語ること、夢を聞くことで治療が進むことは全然あります。

治療が停滞していく中で夢の内容を聞き、今まで患者さんが受け入れられなかった事実、自己理解がグッと進むことはたくさんあります。
他者理解が進むこともたくさんあり、案外バカにできないなという感じがします。

フロイトなど当時の人が夢を重視したのは、決して理解がないとか科学を知らなかったからだというわけではなく、やはり臨床的に真摯に向き合った結果生み出された技法なのだと思います。

ただ実際は、精神科に通われている方でも夢を語ったことはない方が多いと思いますし、そもそも夢を見ないという人もいると思うので、何かイメージがつきにくいかなと思います。
だからちょっと夢の話をしようと思います。

夢占いではない

僕らが日常生活で夢の中の話をするとき、「僕らは」というのは精神科医のことではなく、この時代に生きている僕らがということですが、夢占いが多いんじゃないかなと思います。

夢の中で誰々が出てきました。誰が出てきましたか?
あなたの頭の中に思い浮かんでた人を言ってください。
A: 父、B: 母、C:恋人
さて、何でしょう?

と言って、「じゃあ私Bかな?」と言うと、ここでBと答えた方は実はこういう性格の方です、みたいなことを言ったりします。夢占いで。

それとは違います。
ちなみに心理テストというか夢占い(夢テスト?)は、みんなが当てはまることを言うのです。

父親を選んだあなたは今上司や職場の人に悩んでいるでしょう、母親を選んだあなたは恋人との関係に悩んでいるでしょう、恋人を選んだあなたは自分の見た目にコンプレックスを抱いているでしょう。
そういうことを言ったりして、何かしらに当てはまりそうな感じがあったりする(バーナム効果)ので「ああ、当たってる!」みたいなことを言うのですが、実際はもうちょっと細かくて、バーナム効果を疑いにくくさせるようなテクニックを混ぜ込んで作っています。

ただ、実際の臨床ではバーナム効果を狙ったようなことを言うわけではなくて、きちんと言います。

文脈を読む

患者さんが語った夢の内容から何がわかるのかというと、結局文脈によるのです。

その人がどうしてこのタイミングでこういう不安なことを言ったんだろう、この患者さんが何で今になって突然こんな話題を振ったんだろう、ということです。
夢の内容というよりは文脈をきちんと読めば、その人の気持ちというのがわかったりするので、普通に言います。

「私は夢の中で試験勉強が終わらなくて泣いていたんです、何か変な夢ですよね?」と言ったりしたときに、「そういえば○○さんは今も仕事に追われてますよね。だから締め切りまでに仕事が終わらなくて不安だったんじゃないですか?」と言うと、こうやって聞く分にはそんなのモロじゃんと思うと思うんですが、実際の臨床はこれくらい単純なモロな感じがすごく患者さんの心に響いたりします。

ドキッと胸をつかまれるような感じがあったりして、治療がグッと進むことは全然あります。

夢の中で男の人に追いかけられたとき、「あなたは実は旦那さんのことを憎んでいるんじゃないの?」「実はお父さんのことを憎んでいるんじゃないの?」とか、いろいろな言い方があります。文脈によります。

相手はメタ認知を活かすことができるか?

もう一個重要な点は、相手はメタ認知を活かすことができるか、ということです。

夢の内容を語った後に益田から言われたとき、ただそれを聞くのではなく、何で自分は言っちゃったんだろう、何で益田先生はこう答えたんだろう、そういうメタ認知を活かすことができる人でないと夢の話を扱うのは難しいです。

発達障害の人、トラウマに支配されている人、そもそも精神科の診療や自己理解に興味がない人にはうまく効かないなという気がします。

記憶の中に残っているものが出てくる

夢は大事だなと思うのですが、それはなぜかというと、やはり記憶の中にしっかり残っているものが出てくるからです。
人間の脳の話、脳の構造、メカニズムも最後に話します。

人間の脳は何をやってるかというと、常に動いています。
常に動いて予測しています。
内部活動をしている、内部で予測をしていると言ったりします。

外から見たもの、目から入ってきた情報をそのまま見ているわけではなく、脳で動いているものに外からの刺激を受けて修正しています。

人間というのは外にある世界、物理的な現実と僕は書いていますが、外にある世界をそのまま見ているのではなく、自分の中にある記憶や感情の影響を受けた世界に刺激がちょっと加わって出来上がっているんです。それを見ているのです。
これを社会的な現実と言ったりします。

それに合わせて行動して外の世界を動かすことで、またそれに向けて変わった世界を吸収している、吸収しているというか影響を受けて、この内部世界が変わっていったりします。

ここら辺のところが多分あまり考えたことがsないと思います、皆さん。
外のものがそのまま見えていると思っていますよね?
だけど実は違います。
自分たちが見たいものを僕らは見ているのです。

「だまし絵」ってありますよね。
だまし絵は最初見た時に何かよくわからないけれども、種明かしされた後に見ると違って見えます。
それは何故かというと、知識で補って見ているからです。
だから僕らは知識に支配されているというのがあります。

知識というのは何かというと、記憶のことです。
記憶というのは知識と経験に分けることができ、僕らはこれに支配されています。
もう一方で、感情や自律神経、本能にも支配されており、これらの影響を受けて、内部予測は成り立っているということです。

夢というのは何かというと、ここら辺の疲れや気持ちとその日に見たもの、頭の中に残っている記憶や経験などから作られているので、その人を理解する上でも重要だったりします。
現実的に語られることも大事だけれど、夢というのももう一つの側面として大事だったりします。

こういう脳科学的な話は、実際の脳科学を直接反映させているわけでもなく、ある意味脳のモデルなのですが、モデルというのは結構重要で今でも使います。

例えば、記憶、知識や経験、常識的なものに支配されているということを「超自我」と言ったりしますし、本能や自律神経、そういうのに支配されている感じも「リビドー」と言ったりします。

自我、超自我、リビドー、これも古典的な精神分析の話です。
哲学っぽい言い方をすれば、超自我は「構造」の話ですから、社会や言語などに支配されているよという言い方もできるし、感情や本能というのは脳の問題とか特性の問題など脳科学的な見地から言うこともできます。

これらはすべて科学のようで科学ではなく、ある意味モデルです。僕らが何かを理解するときに有効なモデルだったりするのですが、今日でも臨床的には有効だったりします。

何の話しやという感じがすると思いますが、結局夢の話を理解するためにはこういうモデルを理解できるか、共有できているか、何度も説明を受けないといけないかもしれないけれども、一緒に共有できているか、ということがとても重要です。

それを言うと「いや、それは益田の宗教に入らないと治療が進まないってことですか?」と言われそうですが、まあそういう側面もあるということです。
益田の宗教じゃダメですよ。
精神医学というカルチャーということです。

そのカルチャーにある部分染まっていく、染まるという柔軟さを持っていないと治療は進まなかったりします。
染まりやすくするために、ある意味、僕は毎日YouTubeを撮っているので、皆様この世界を、この文化をしっかり吸収してもらって、自分たちの治療に活かしてもらえたらなとなと思っております。

ということで、今回は、夢はどのように臨床に活かされるのか、ということをテーマにお話しました。


2022.10.3

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