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雑談と私見:日本のメンタルヘルスの課題

00:00 OP
00:41 解決しつつある問題
04:21 これからの課題

本日は「私見雑談:世界から見た日本のメンタルヘルスの課題」というテーマでお話しします。

日本のメンタルヘルスの課題ということで、お話しさせてもらうかなと思います。
前回の続きの意味合いもあります。
今のメンタルヘルスの課題は何なのか、ということを話してみます。

解決しつつある問題

解決しつつある問題はそもそも何なのかということを話すと、大きく分けて4つあるかなと思います。

・精神疾患は存在する
まず、精神疾患は存在するということです。
伝染病ではなく脳病なんだということが受け入れられつつあるというのは、解決しつつある問題かなと思います。

何だかんだで「精神科なんかないよ。そんな病気なんかないよ」という人は減りました。
ほとんど見ないかなと思います。
10年前はまだいたんですよ、たくさん。
最近は本当に減りました。
19世紀、20世紀から精神医学は始まったのですが、100年くらい経て皆に浸透してきたのかなと思います。

・優生思想
次は優生思想です。
優生思想はダメ、LGBTQの受容というのも進んいでるなと思います。
口では言わないけれど、本音は違うかも、ということかもしれませんが、少なくとも「優生思想はだめだ」と意識が変わっています。

優生思想も1996年ぐらいまでは日本でもまだ法律が残っていました。
意外とここ10年、20年の話なのです。
生まれながらの特性や弱さ、脳の違いということに対する差別への嫌悪感というのは、人類が獲得しつつあるのではないかなと思います。

・うつ病は甘えではない
うつ病は甘えという話も減りました。
長時間労働は良くないということも、コロナもあって皆さんの常識になりつつあるのではないかと思います。
これもここ5年、10年の話です。

うつ病というものが社会的に認知されるようになったし、長時間労働というのは心を病ませるから良くないというのも、共通認識になったかなと思います。

・子どもの虐待、性被害、PTSD
これは日本というか世界で、ということかもしれないですが、子どもの虐待や性被害、それに伴うPTSDの問題が比較的議論されやすくなりました。
こういうものがあるということも受け入れられるというか、理解されるようになってきたかなと思います。

親が子どもを虐待している、性的な虐待をしている、ということはアンタッチャブルの世界でした。
これが1980年、90年ぐらいから議論されるようになって、今ではやはり子どもの躾ということで殴ったりするのはタブーだし、ましてや性的被害があってはいけないというのは共通の認識になりました。

ただ、日本はやはり児童の性被害に対して緩かったりします。
アニメとか漫画とか、世界から見るとギョッとするものもあるのですが、少しずつ認知されつつあるのかなと思います。

これからの課題

これからの課題にはどういうものがあるか考えました。

・IT企業の征服
まず、IT企業の征服というのはますます強まるだろう、ということです。
これは前回も話したのですが、GAFAMような巨大企業による征服や支配、それによる産業の破壊というのはますます強まっていくと思います。

機械やAIが仕事を奪うということになるのではないかと思います。
今の仕事がなくなってしまいます。
それに伴い新しい仕事もできるからいいじゃないか、という意見もあるのですが、やはりそれについていけない人たちというのはたくさんいます。

このIT企業というのは個々の国内企業ではなく海外企業です。
結果的に国内産業が弱くなるので、海外の企業のものだから結構困ります。
それで国内産業が弱くなることも起き得るのではないかと思います。

・高齢化
あとは高齢化の問題、ケアする人の不足、ということが起きてくると思います。
高齢者がいることで医療費の増大もあります。
医療費を抑えるために地域移行を進めていますから、家族がケアしなければいけません。
そうすると今度は、働き盛りの人たちが親の介護しなければいけない。親のことを見捨てることは本当に苦しいからなかなかできません。多くの人にとっては。

そうすると仕事ができなくて、仕事をする力が減り、結果的に国内産業が弱くなるということです。
働く時間も短くなったりするので、貧困の問題が大きくなる、人によっては貧困層に陥ってしまうところもあると思います。
中間層がなくなり社会格差が増える、貧困層が増え厚くなることが起きます。
そうすると大麻の問題も出てくるだろうし、治安悪化の問題も出てきてしまうということです。

あとは、とても死ぬ人が増える時代が来るのです。これからあと5年後、10年後。
団塊世代の人たちが後期高齢者に入り、だんだん平均寿命を迎えていく中、多くの人が死にます。
おそらく、この国のカルチャーの中で死というものが大きな意味を持つようになります。

隠しておけるのか?という感じもします。
死について考えなければいけないし、語らなければいけないことになります。
死について語るというのは心の負担を強めるので苦しいし、不安を呼ぶのではないかなという気がします。

何だかんだ言って人口の中で一番多いのが団塊世代の人たち、団塊ジュニアの人たちで、そしてそこの層がお金も持っているので、やはり国のメディアや文化が注目せざるを得なくなります。
本当にここはどうなっていくんだろうと思います。

・家族の密室化、分断と格差
今までのコミュニティとは違い、家族の要素というのが高まっています。
在宅勤務になる、学校も自由に選べるようになる、いろいろな形で社会や国家が与える影響力よりも、親や家族が与える影響力の方が強くなっていきます。

それは多様な教育ができる、個人個人に合わせた教育ができるということで、多くの人にとっては良いことではありますが、一方で家族が頼りない場合、家族がきちんと機能しない場合、社会からの関与ができない分、その子どもたちはすごく助けを求めにくかったりします。

あからさまな虐待や貧困があれば、さすがに助けてもらえますが、そこに至らないいわゆるグレーなもののときには、本当に苦しい感じになるなと思います。
密室化されていくということです。
家族の問題も増えるでしょう。

・独身、ひきこもり、孤独
あとは独身やひきこもり、孤独です。
家族に対して良いイメージが持てない。
家族を持つということができない、お金の問題や貧困の問題でできない、そういう形で独身層が増えていくってことはあるだろうし、社会の中で自信を失ってひきこもりになってしまう人も多いと思います。

会社の中でのコミュニケーションが昔と違ってなくなっていく。地域のお祭りもなくなれば会社のお祭りというのもなくなるので、そうすると心の交流をとる場所がなくなります。

友達も年をとるごとにみんな結婚したり家族を持ったりするので交流が減ります。
そうすると中高年の孤独の問題というのはやはり強まるのではないかなと思います。

・凹凸のある人、弱者への理解
あとは凹凸のある人、弱者への理解というのが、やっぱりなかなか持たれてないし、これからの課題だなと思います。
日本はやははり差別や偏見が強い国だと思います。
その証拠に女性の社会進出は遅れてますし、女性の管理者層が少ないというのがあります。

あとは移民を受け入れていないというか、移民を受け入れる土壌にない、というのもあります。それは日本の差別や偏見意識の表れのような気もします。
海外の人が日本企業の社長になるということはほとんどないですよね。

そういう意味で、女性差別や人種差別みたいなものもあるのであれば、精神疾患の差別もありそうです。
本当にそういうものを減らしていかなきゃいけないなと思います。

結局ストレスが増えていく中、それが弱者への攻撃へ向かうというのは無くさなければいけないのです。
別のアプローチを考えなければいけない。やはり差別の問題というのはよくないなと思います。

あとは働く場所がなくなります。
機械やAIができてしまう仕事は人間にはさせられないので、結局人間にさせなければいけない仕事は、機械やAIができない仕事になります。
そうすると、コミュニケーションだったり、調整だったり、より複雑な仕事だったりするのです。

そうすると、やはり弱者は働きにくくなります。
働けても、いつクビを切られるのだろうとか、心理的安全性が保てなかったりするので、これも結構問題だなと思います。

・大きな物語の消失
あとは大きな物語の消失と書きましたが、皆がテレビを見なくなった、皆が同じものを見なくなったというのも、ちょっと危険というかこれからの課題だなと思います。

皆が同じものを考えていない、同じ価値観を持っていない、ということは素晴らしいことでもあるのですが、一方で話が通じない、トラブルを生む原因にもなってくるので、どうしていくのかということです。

そういう中で、違いを尊重したり、違いがあっても仲良くやっていく、というカルチャーを作っていくにはどうしたらいいのか、ということをこれから日本は学んでいかなければいけないんだろうなと思います。

ということで今回も私見ですが、メンタルヘルスの課題、というテーマでいろいろ語ってみました。
もし興味があったら、いろいろコメント欄で書いてください。
僕も読んでいますから、いろいろディスカッションしましょう。


2022.10.8

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