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予測する脳

00:00 OP
07:04 予測する脳
10:29 心の中で起きていることの説明
12:27 心のモデル
15:06 自分で発見する
16:41 発達障害

『障害?それとも個性?』 東京大学 Beyond AI 研究推進機構 サイエンスカフェ(第8回) Full
https://youtu.be/Bybb63U6f2U

本日は「予測する脳」というテーマでお話しします。

人間の意識や心はどういう風に動いているのか、脳科学としてはどこまでわかっているのか、というのは常に疑問ですし、皆さん知りたいですよね?
僕、益田祐介も、もう20年以上前ですが、学生の時には脳はどうなっているのかな、心はどうやって生まれてくるんだろう、ということに興味を持っていました。

人間の心を追いかけるためには2つのアプローチがあります。
1つは先ほど言ったような脳科学的なアプローチです。
科学的に入っていくというアプローチ。

もう1個のアプローチは、人間は文化社会的な生物でもあるので、社会的なアプローチ、社会学的なアプローチ、人文科学的なアプローチというのもあるわけです。
僕はどちらも好きだったので、どちらも活かせるような形ということで精神科医になりたいと思いました。
脳のことも知りたいし、だけど社会のことも知りたいなと。

その折衷案というか、両方を勉強できるのは何かなと思ったら精神医学だったということで、精神科医になりました。
当時、僕がどうして科学者の道を選ばなかったかというと、研究者をやるのにひよってしまったというのもあるし、なかなかこれはわからないだろうな、と思ったんです。

研究していってもわからないことが多いだろうな、学生になっても医師になってからもそうなんですが、色々な情報やダミーの情報が多すぎる、人間というのは脳の中で完結しているのではなくて他者との交流や会話の中、また文化の影響も受けるので、科学で証明しきれないことが多すぎる、これはなかなか自分の人生をかけてもわからないだろうな、と思いました。

人間がわかることは、意識とかではなく、例えば記憶の一部、睡眠のメカニズムの一部だったら多分わかると思います。自分の人生の中で。
だけど心ってどうなっているんだろう、どういう風に人間の気持ちや美意識は変化していくんだろう、ということをわかろうと思ったら、脳科学的なアプローチだけでは多分わからないだろうな、自分の人生をかけても全然わからないんじゃないかな、と。
それだったら精神科医になった方がよくわかるんじゃないか、と思ったわけです。

自分が医学部研究をあまりしなかった、そこまで興味を持てなかった、というのもそういう部分があったんです。
もっと臨床をやっていかないと、臨床的なことを知らないと、たぶんサンプルのデータの取り方から違っているだろうな、臨床で取ってくるサンプルのデータのあり方も、社会や文化の影響を多分に受けるから、サンプルデータもしっかり取れないだろうな、と思っていたんです。

僕は古典的なもの、歴史学としての精神分析というものに興味を持っていました。
古典というのは嘘はないですから。
古典というだけあって嘘というか古典としての嘘はないですから。
科学としての嘘はあっても、古典や歴史学としての事実はあるわけで、だからファクトなのかなと興味を持って学んできたというのがあるんです。

ただ、やはり今のAIや科学の進歩は早すぎて、そしてAIのことがわかるにつれて、取れるデータがすごく増えているんです。
プラス他の測定するもの、ロボットのものや、ロボットから人間のわかること、実験器具など細かく作れるようになってきた、パソコンやインターネットの進化が早くて、意外とわかるようになってきたんじゃないかな、というのが今あるんです。

そして、わかるようになってきた中で、今考えられている脳としてのモデルとは何かというと「予測する脳」ということなんです。
最初長いね。

僕は結構これは好きというか、衝撃的だったんです。
それはなぜかというと、僕が持っている脳のモデルというのは精神分析的な脳です。
フロイトが唱えたような脳、フロイトからクラインとかに移ってきて対象関係論に移っていくんですが、そこで語られているような脳のモデルというものを僕は理解して、それを臨床に応用させていました。
ただ、そのモデルというのは科学的じゃなくて、どうなんだろう、という風には色々考えたり思ったりはしていました。

今の科学としてのモデルは何かというと、この「予測モデル」ということになってきているということです。
これは最近知って、この1年で学んだというか、少しずつ勉強しているところです。

今日ちょっと最初が長いですね。
とにかく今回は予測する脳という話をします。

あんまりうまく説明できないんです。
医学部で習ったわけじゃなくて、僕も本を読んで学びました。
カンデルの第2版、『能動的推論』や『計算論的精神医学』を読んで、わかりやすく説明しようかなと思っております。

基本的にはこの本に基づいて説明します。
著作権的な問題と益田祐介が独学で学んだこと、YouTubeや本を読みながら理解したことでもあるので、一部間違いがあるかもしれませんが、それはコメント欄で修正できたらなと思っています。

また、飛躍的な部分もあります。あくまでYouTube用に、関心を持ってもらうために説明してるので、正確な言葉の使い方、正確なことを示しているわけではないので、それはご了承ください。
では行きます。

予測する脳

予測する脳なんですが、まずは人間の脳の中でもう確認できていることもあるんです。
それは心の問題ではなく、まずは運動分野、感覚知覚の分野のことです。

つまり、例えばキャッチボール。
キャッチボールというのは、目から入ってきた情報だけでボールの動きを見ているわけではなく、相手のフォームや手の動きの速さ、ボールの軌道などでどれぐらい飛んでくるのか、どこに落ちるのか、ということを予測してキャッチしています。
目で見ているものだけではなく、頭の中にもう1個の現実があるんです。

人間というのは頭の中に1個現実があり、その現実と外から見えてくる情報の誤差を測定して修正し、また頭の中でシミュレーションし直し、ここら辺かな、と思ってボールを捕っているんです。
何となくイメージつきますか?

ボールをずっと見ているわけじゃないですよね、キャッチボールをするとき。
動きを見て、「こんな感じかな」と思って走り、「ここら辺だろう」と思ってキャッチするじゃないですか。そういうことです。

その頭の中にある内部モデルのことを「予測」と言います。
目から入ってくる情報を「感覚入力」と言ったりするんです。
この予測と感覚入力の差を「予測誤差」と言います。

この予測誤差が最小になるようにする。
頭の中ではここに落ちるなと思っているけれど、目から入ってくる情報はちょっと違うなということになると、ちょっと修正するんです。
イメージと違うなと思って修正することを「能動的推論」と言います。

後ろに下がったり、手の位置をちょっと変えたり、頭の中のイメージ、予測をもう一回修正するんです。
これをミリ単位で行っています。
意識に上るというか、無意識下で行っていることなんです。
これが「予測する脳」ということです。

この予測誤差が多いと嫌なんです、気持ち悪いんです。
だからこれが最小化するように動いているのを「自由エネルギー最小化」と言ったり、「大統一理論」と言ったりします。

自由エネルギーが最小化するようにするために、無意識的、意識的に動いたりするということなんです。
言ってしまえばそういう話なんですけれども、これを証明するとか、しっかり計算するとか、AIやパソコン上で再現するには、ちょっと細かい数学理論が必要となってくるということです。

この計算論的推論は早稲田大学でやっているみたいです。
ちょっと教わりに行きたいですけど、僕は臨床もありますしYouTubeもありますから研究者にはなれないですが、でも羨ましいなと思って見ています。

心の中で起きていることの説明

ここから先がより仮説的な話になってくるんですけれど、運動だけじゃなくて、我々の心の中で起きていることも、この「予測する脳」で説明できないか、という風に考えている感じです。

運動のことについてはわりと先程の話で説明できます。
それは小脳で起きていることですから。
基本的には小脳、感覚野とかもあるんですが、運動系と。

でも実際意識に上ってくるところ、我々の意識まで同じように動いているかどうかは話は違うんじゃないかという風に考えることもできるし、脳は意外と一体感があるというか、どの神経も同じような動きをするという要素もあるんです。

場所によって働きが全然違うというよりは、ここでの神経細胞は意外と人によっては別の動きができたり、汎用性が結構高いんです。
こういう汎用性が高かったりするので運動だけではなく、心、意識のレベルでも同じことが起きているんじゃないかと考えてもおかしくはない、というディスカッションですね、仮説なんですけれども、あります。

もうちょっと言うと、この内部モデルだけで、予測する脳というモデルだけで人類は脳を理解し続けるのか?
これが100年後、200年後、1000年後もこれをベースに使えるのか、と言うとちょっと違うと思います。

ニュートンの古典力学がもう物理学としてはあくまでモデルであって、本当の真実ではないと言っているように、これがずっと使えるかどうかはまた別だとは思いますけど、でもかなり確からしいんじゃないかなという気はします。

心のモデル

もうちょっと臨床的に言うのであれば、心のモデルとしては、頭の中でできる内部モデルというのはどういうものかというと、記憶と体調から出来上がるのではないか、と思われているんです。
そして具体的なモデルから高次のモデル、抽象化されたモデルまであるんじゃないか、という風に考えています。

今のモデルを作るには、抽象化されたモデルをベースに作られている。
抽象化されたモデルを引っ張り出してきて具体的なモデルを作っていく、何かわかりますよね。

今日はどんなカレーにしようかなと思ったら、理想的なカレー、イデアというか、そういうカレーを想像しながら今日のカレーを考える。
ニンジンがいるなと思っても、スーパーの目の前にあるニンジンを切ってみて、このにんじんで作るみたいな、そういうことです。

このモデルですね、モデルというのは体調とか記憶によって作られていますということです。
記憶とは何かというと、認知行動療法の世界では「信念」と呼ばれるものですが、経験や知識から成り立ちますよということです。

子どものときにネガティブな記憶があったり虐待を受けていたりすると、やはり予測するんです。相手はどうするんだろうとか。
そのベースになる人間のモデル、男の人はこういうものである、女の人はこうである、大人はこうである、というモデルが崩れてしまっています。
ズレちゃっているんです。
最初の記憶というのは残りやすいんです。
後から入ってきたものよりも、最初に記憶したものの方が記憶に残りやすいんです。

それは皆さんの経験的にもわsかりますよね。
一番最初に食べたマカロンが美味しかったら「マカロンて美味しいんだな」と思うし、最初に食べたマカロンがまずかったら次食べたのがいくら美味しくても、「何か美味しくないのかな」と思うじゃないですか。

ウニとかもそうですよね。
ウニとかイクラとか、よく苦手だと言われているやつはそういうのがあります。

一番最初に親が厳しすぎたりすると、大人は厳しいんだという思い込みがあったり、逆に親が甘々だったりすると、今のゆとりの子たちもそうですが、年上の人に対して警戒心が弱かったりするというのはあったりします。

自分で発見する

ということは、虐待があるとかうつの人は、記憶の部分、信念と呼ばれる部分が崩れている。
そこが崩れているから認知の歪みが生まれてくるので、学習をし直して記憶を訂正することでいい予測をする。
いい予測をすれば、いい行動が出ることになります。

ではどうやってこの記憶を修正していくかというと、学習なんです。
でも教わるより自分で発見する方がいいんですよ。

いくら人からそうだと言われても、なかなか身に入ってこないし、自分から勉強しようと思った時や予習をしてから授業に臨んだ方が、何もせずにボケーッと授業に行って聞いているよりも記憶に残りやすいし、身につきやすいじゃないですか。自分で手を動かして自分で考えてみた方が。

だからカウンセリングがいいんです。
YouTubeという一方通行よりも、やはりカウンセリングに来てきちんと喋る方がよかったりします。

YouTubeをただ見るのではなくて考えながら見るとか、YouTubeをただ見るのではなくてコメント欄に書く。
YouTubeをただ見るのではなくて、益田の自助会に入って同じ動画を見た人とディスカッションしてみるとか、座談会に参加してみるのが良いんですよ、ということです。

というのが精神療法をやるというモデルです。
これも色々研究されています。

発達障害

発達障害もこの予測する脳のモデルで結構研究されたりしています。
発達障害における自閉スペクトラム症は、このモデルに基づいて色々研究されてるみたいです。
概要欄に面白い動画を貼っておきます。

『障害?それとも個性?』 東京大学 Beyond AI 研究推進機構 サイエンスカフェ(第8回) Full
https://youtu.be/Bybb63U6f2U

例えば、感覚入力と予測の誤差が大きいことが感覚過敏の原因なんじゃないか、感覚入力が大きすぎる、入ってくるのが大きすぎる、予測よりも影響力が強すぎるから感覚過敏なんじゃないか、と考えたりする仮説があります。

実際、発達障害の人は感覚過敏があったり、感覚の受け方が独特ですが、それはここら辺の問題なんじゃないかなと考えたりします。

あとは予測を立てるのが下手だったりするんです。
だからキャッチボールが下手なんですよね、発達障害の人って。
キャッチボールが下手だったりするし、何か鈍くさいというか、僕も鈍くさいんですよ、だからASっぽいだろうということなんですけど。

それは中枢結合能力が低いからなんじゃないか、という風に言われています。
自分の中で予測をすることが下手。なぜかというと、モデルから高次モデルを作るのが苦手だからじゃないか、という風に言われています。

とは言っても、色々な分野があるんです。
自分に興味がある分野だったら、高次モデルを作るのが得意なんですが、興味がない分野だと高次モデルを作るのが苦手とかということがあったりします。

発達障害の人でもすごい具体的に覚えていて、中枢化していくことが苦手な人もいれば、具体的に覚えており、かつ、その分野に関しては応用がめちゃくちゃ利く人もいるので、一概にそれだけとは言えないんですが、まあでも何かそういうことを考えられたりしてます。

ということで、今回は、予測する脳、というテーマでお話しました。
面白い概念なので、一緒に勉強しましょう。


2022.10.17

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