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失敗を恐れて挑戦しない方が正しい

00:00 OP
01:26 調子が良いときは
03:52 調子が悪いときは
05:47 ずっと調子が悪いんです
06:59 メカニズム
09:01 成功しないと不安は消去されない

本日は「失敗を恐れて挑戦しない方が正しい」について解説します。

「おいおい、益田よ!?」って思いますよね。
失敗を恐れずに挑戦しろってよく言うじゃないか、失敗を恐れずにどんどん挑戦していけって色々な本に書いてあるぞ、と言うと思います。

僕は真逆だと思ってます。
そのことをお話しします。

金曜日は、自己啓発本でよく取り上げられているようなテーマを精神科目線で話す、という企画をやっています。

失敗を恐れずにやれとよく言うんですが、それ違うよという話をします。

2つの軸を引いてこの話をします。
縦軸が、する/しない、挑戦するのが上側、挑戦しないが下側です。
横軸が、調子が良いとき/調子が悪いとき、と分けました。
右側が調子が良いとき、左側が調子が悪いときです。

①調子が良い・挑戦する:余力で挑戦すべき
②調子が良い・挑戦しない:この選択をする人が多い
③調子が悪い・挑戦する:ギャンブル、古代なら正解
④調子が悪い・挑戦しない:うつの時は大きな決断をしない

調子が良いときは

①の調子が良いときは挑戦した方がいいんです、もちろん。
余力があるから。
こういうときこそ挑戦すべきなんです。

余力があって、エネルギーや時間、お金が余っているときには、次の世代というか次の目標に向かって挑戦したり、新しい勉強をしてみたり、新しい事業に挑戦してみたり、これをきっかけにいつも出来なかったこと、旅行に行く、そういうことをやったらいいんです。

そりゃそうだと思います。
ただ、しないんです、調子が良いときに。
調子が良いときには保守的になる人が多い(②)です。

調子が良いときこそ挑戦したり新しいことをすべきなのに、多くの人はやらないです。
この状態というのが大衆的だと思いますし、多くの人はこの状態なんです。
この人たちに向けて本を作るので、「挑戦しなさいよ」と言います。

だいたい本には挑戦した方が良いことの根拠を書いているんですが、調子が良いとき、安全なときに挑戦しないというのは人間の本能に合っているんです、そもそも。
命の危険性がないときには、安全な場所で食べて暮らしていきなさい、ということなんです。

命の危険があったりしたら、挑戦した方がいい。
その方が生存率は上がるんです、大勝ちする必要はないので。
それは古代もそうだし、現代でもそうなんです。
大勝ちする必要がないから、問題がないなら何もしない方がいいんです。

ただ現代は資本主義社会なので、挑戦して色々なことをやった方が、お金持ちになったり成功したりする可能性は上がるので、①がいいよという話なんですが、でも本能的には②が正しいと判断するので、多くの人は②を選択しているということになります。

調子が悪いときは

本能的には調子が悪いときにどうしたいかというと、何かやりたくなるんです、調子が悪いときは。
このままいったら死んでしまうので、それだったら九死に一生を得るというか、どうせダメなら何かしてやれ、とギャンブルしたくなっちゃうんです。

古代だったら③が正解なんです。
このままいってもジリ貧だからどこかに行こう、今まで食べなかったものを食べてみよう、住んだことはないけどあっちに居住してみよう、そういうのは正しいんです。
本能的には正しいんだけれども、現代ではそれは不正解なんです。

なぜなら調子が悪いときには、大きな決断をせずにゆっくり身体を休めた方が生存率が上がるからです。
ギャンブルをしてしまうと、上手く行ったらいいですが、ほとんど上手く行かないわけで、負けが重なってしまうんです、多くは。

パチンコでも負けてるときは大きく賭けてしまいたくなるんです、負けを取り返したくなって。
だけど、③はダメなので損切りしなさいよ、というのが正しい選択です。

昔だったらいいんです。
古代だったらいいんだけど、現代では間違っているということになります。
でも③が本能的です。

現代では理性的な判断ということなので、うつのとき、調子が悪いときは大きな決断をしない方がいいと言われてます。(④)
失敗を恐れて挑戦しないというのは、恐らくこの動画を見ている人は調子が悪い人たちが多いと思うので言いますが、理に適っています。
④がいいんです。

大きな決断をせずに医師に言われた通り、周りの人のアドバイスに従って「ゆっくり休みなさい」「こうしたらいいよ」と言われたら、自分で決断するんじゃなくて、保守的なことをするというのが正しかったりします。

ずっと調子が悪いんです

ただ、私はずっと調子悪いんです、だから休まなきゃと思って外に出なくなっちゃいました、社会的に引きこもりになっちゃいました、そういう人もいると思うんです。

基本は④でいいのですが、④だと上手くいかない時があるので、認知行動療法で行動を促すこともあるということなんです。

基本は④です。
基本は、調子が悪いときはゆっくり休む。
半年、1年と休んでいれば良くなっていきますから。

「益田先生、なんかしなくていいんですか?」とよく聞かれますが、休んでいていいんです。
休んでいていいし、寝ていていいんです。
休んで寝ていたら、そのうち良くなってきますから。
そしたら自分で勝手に歩き始めます。散歩を始めたり、何かやり始めます。
料理を始めたりとか片付けとかし始めますから。
そうしたら自然に任せておけば体が動く。
それでいいんです。
無理して運動をしたりする必要はないです。

ただ、無理させるときもあるんです。
認知行動療法のときには無理をさせます。
医師やカウンセラーが様子を見ながら、この判断をするんです。

メカニズム

メカニズムとしてはどうなっているかというと、人間の脳の中では現実をそのまま見てないんです。
脳内に一回、現実みたいなもの、仮想空間を作るんです。

現実と脳内のズレを認識しながら、色々なものを考えるように作られているんですけど、このズレに対して回避をしてしまう。
「自分が予想したのと違う」「予想した結果と違うことが起きてる」と思うと、不安になったり、ストレスを感じるんです。

現実と脳内で予想していたことのズレが大きければ大きいほど、不安になってしまう。
そうすると、これに対して回避というパターンをとったりします。
挑戦しないということですね。

脳内の世界というのは何で出来上がっているかというと、もともとの遺伝的なもの、遺伝子は設計図ですから、設計図で作られた脳、これがハードウェアです。

そしてソフトウェアの部分は記憶です。
これまでの学習や経験、知識によって作られているもの、これらが脳にインストールされて脳内に映し出されているので、回避してしまうと「嫌な思いをしたから逃げたらよかったんだ」という形でますます世の中が怖いということになってしまうし、逃げたら正解だと脳内にはインプットされちゃうんです。

これが悪循環を生んで、これは危険なものだ、あれも危険なものだ、という形で危険なものが増えてしまうんです。
危険なものが増えすぎると行動ができなくなって、悪循環になってうつっぽくなっちゃいますから。そういう場合は頑張って行動しましょうよ、ということになります。

ネガティブが強化されるので、強化されないように回避ではなく、成功体験を積めるような行動を促していくということになるんです。

成功しないと不安は消去されない

逆に言ったら成功しないと不安は消去されないんです。

挑戦した方がいい、と言うけれども、挑戦した結果失敗したんだったら、より失敗や行動することに恐怖を覚えてしまうので、上手くいかなくなっちゃうんです。

だから行動するのであれば絶対成功できること。
絶対は無理なので、比較的成功する可能性が高いことをやった方がいいんです。

対人不安であれば、いきなり難易度が高い人と喋ったりする必要はないんです。

例えば、オラついている人、半グレっぽい人、ちょっとヤンチャをしてしまうような人と付き合う必要はないわけです。
あとは夜の世界、酔っぱらった人と喋ったりする必要はないわけです。
そうしたら余計に機嫌をとるのが難しいですから、失敗体験になります。

そうじゃなくて、もっと優しい人、自分のことを好きでいてくれる人、あとはプロだから怒りすぎない人、福祉のプロ、そういう人との成功体験を積んで、「人間って怖くないんだな」ということをやった方がいいんです。

一番身近な親、兄弟が一番変わり者の場合は、よく患者さんは「親と仲良くできないんだったら、友達となんて絶対仲良くできない。ましてや会社の人なんて絶対仲良くできない」と思いがちなんです。
それは違って、親と付き合う方が難しい場合があるんです、はるかに。

はるかに難しかったり、ある意味で職場はドライな関係だから、却って付き合いやすかったりもするので、そこら辺はケースバイケースというか、人によるんですが、とにかく成功体験を積みやすい形のところで行動を促していって、ポジティブな記憶に変えていく、ポジティブな循環を生んでいくことが重要だったりします。

この説明でわかりますかね?
ちょっとわかりにくいかもしれないですけど。

とにかくもう一回まとめると、失敗を恐れず挑戦しよう、と世の中では言いますが、それは多くの人に向けた言葉であって、調子が悪い人に向けている言葉ではありませんよ、ということです。

調子が悪いときこそ、大きな決断をしないことが重要です。
ただ場合によっては行動を促すこともあり、それはなぜかというと、悪循環を生んでいるからです。

行動しないことで悪循環を生んでいることが多いので、その場合は成功体験を積めるものから行動していってください、ということになります。

今回は、失敗を恐れて挑戦しない方がいいについて解説しました。


2022.11.11

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