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精神科医が「社会」を語る

00:00 OP
03:04 世の中の流れ
06:09 中間層の没落
11:43 精神疾患の増加とは?
17:04 何ができる? すべきなのか?

本日は「精神科医による『社会』」というテーマでお話ししようと思います。

僕が「社会」というものをどういう風に見ているのか、そこら辺を一度全体として語ってみようかなと思います。
なぜこんな話をしようかと思ったかというと、コメント欄で結構そういうリクエストがあったからなんです。

精神疾患というのは遺伝子+環境ストレスの相互作用で起きる疾患なんですね。
遺伝子だけの問題ではなくて、やはり環境ストレスの影響は大きいんです。
だから社会的な問題がなくならない限り、精神疾患というものはなくならないんです。

常に病気を考える上で、個人の脆弱性だけではなくて、社会的な問題、環境ストレスも考えてあげなければいけないんです。

ではそもそも「社会ってなんぞや」ということですよね。
ミクロに見ていくと、環境の問題とか、家族の問題ということになるんだけれど、そもそもこういう家族になってしまったのはどういう社会だからなのか、こういう職場になってしまったのはどういう社会があるからなのか、政治の問題なのか、それとも国際政治の問題なのか。
それとも人類が持っている原罪みたいなものなのか、集団が持っている問題なのか。
資本主義という思想が持っている問題なのか。

いろいろな見方はあるのですが、そこら辺をマクロに語ってみようかなと思います。
社会で今どういう問題が起きているのかということをざっくり解説してみようかなと思います。

書きながらやった方がわかりやすいと思うので、今回はちょっとやり方を変えて、ホワイトボードを書きながら説明します。

話の流れとしては、まず世の中の流れを説明します。
世の中の流れの結果、いわゆる中流階級の人が減っているんです。
中流階級が減って貧困の問題が増えているのですが、貧困の結果精神疾患が増えているんですね。

そこら辺の話をするとともに、じゃあどういう形で僕らはアプローチできるのか。僕らがすべきことは今どういうことなのかということを、最終的にお話ししようかなと思います。
だいたいこの流れで説明します。

世の中の流れ

今どういうことが起きているんですかということです。
社会全体、人類としてどういうことが起きているのかというと、大きく3つの流れがあるんじゃないかなと僕は思っています。

一つは「金融」です。
金融の知識、経済という流れ、資本主義だったり、お金の流れ、金融というものの思想とか理解がすごく進んでいってたんですよね。
その結果、お金でお金を生むとか、お金持ちがお金持ちになる方法というのはすごく研究されているんです。
そのいびつさを正すために税金を取って、尖ったものを平べったくしなきゃいけないんですね、本来だったら。資本主義の起こしている問題を。

だけど、税金のことをうまくやろうと思ったら、イタチごっこのような形で、それを逃れる人たちもどんどん増えていくんです。
その結果、どんどん一般大衆がおいてけぼりになって格差が広がっている。

次に「AI/IT」ですね。
AIとITの進化というのもすごい。+ロボットと入れてもいいかもしれない。
これによって稼げる人がより稼げるようになったんです。
普通に優秀な人でも、なかなか一人の力には限界があったのが、ITとかAIを使うことによって個人でできることがすごく増えたんですね。
お金持ちがますますお金を稼ぐようになってしまった。
数字を扱うのが得意ですから、ITやAIは金融との相性がめちゃくちゃいい。

もう1個が「グローバル化」です。
極端なことを言ったら、日本だと人件費が高いから海外に行っちゃおうとか、日本だと税金が高いから海外に行っちゃおうとか、そういうことができるようになってしまった。

国際的に戦うようになってしまったので、金融とグローバル化も相性がいいんですよ。
そうするとその結果お金持ちがますますお金持ちになっちゃう。
しかもAIやIT的なものはプログラミングですからただの文字のコードなので、一回作ってしまえば世界中どこでも使える。
新しく作り直す必要がなくてコピペで済むので、AI/ITとグローバル化も相性がいいんですよ。
儲かれば儲かるだけ早く儲かる。

ここが人類が今起こしていることなんですね。
だからこの結果、お金持ちがどんどんお金持ちになっている。

中間層の没落

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「世界の超富裕層1%、資産の37%独占」日本経済新聞、2021年12月27日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB272Q20X21C21A2000000/

日本は上位10%の資産が57.8%でそのうち最上位1%は24.5%を占めた。下位50%は5.8%だった。報告書は日本の富の分布について「欧州ほどではないが非常に不平等だ」と指摘した。

ーーーーー

お金持ちがどんどんお金持ちになることで、格差が生まれているんですね。
格差が生まれるということは何かというと、「中間層の没落」ということなんです。

お金持ちはどんどんお金持ちになっていくし、普通の人はどんどん貧乏になっちゃう。そうするとここの差が開いてしまうんですね。

プラスですね、日本には少子高齢化の問題があるんですね。
働けない人が増えていくということです。
医療費はお金がかかります。それが税金で賄われています。

働いても働いても税金を取っていかれちゃうんですよ。
年寄りだから死ねとか病院にかかるなとか言えないですから、社会保障費がどんどん上がっている。だから税金の負担が増えているんですね。
それで結果的に国力が低下してしまう。
日本の相対的な競争力が低下している。

少子高齢化というのは、文化的な要素もあるんです。
高齢者が好むようなテレビが流行るし、高齢者が好むような本が売れるんです。
売れるものとか、人気が出るものにエネルギーは注がれがちなので。

高齢者は変化を拒みますから、世の中の流れから逆行するというか、抵抗するような動きが起きているんです。

・国際政治の問題

あとは国際政治の問題もありますよね。

がんじがらめになっているんですよ。
独裁国家じゃない限り、他の国の様子とか牽制のしあいになっているので、自分たちで決められないんですね。
日本なんか特にそうで、自国では決められないんですよ。

ヨーロッパでもそうだし、アメリカぐらい大きかったら自分勝手に決められるかもしれないけれど、そうじゃなくてやっぱり相互的に決める。
自分の国だけでコンパクトに決めるわけにはいかないので、なかなかフットワークが軽くならない。
だから社会変化になかなかついていけないんですよ。
お金持ちたちが変えていく動きに合わせて政治を変えていくことが、とても難しくなっているんですね。

身近で起きていること

これによって身近なところでどういうことが起きているのか、ということを話します。

中間層の没落はどういうことを起こしているのかということです。

まず長時間労働です。
最近でこそ減りましたけど、やっぱり労働の問題は常につきまとう。
貧しくなったらどんどん儲かるようにしなきゃいけないので、労働時間が必然的に伸びるんです。
長時間労働をすれば、みんなと過ごす時間がなくなるんですね。

その結果、地域社会の崩壊から、会社と自宅以外のコミュニティーがなくなって、地域のつながりというものがなくなってしまった。
家族というのも会社中心の家族になってしまう。家中心の家族だったものが、会社中心の家族になってしまっているので、核家族とか生まれていますよね。
だから家族機能も壊れている。

夫婦共働きというと、お父さんとお母さんが仕事に行ってるから、昔より家族としての機能を果たすのが弱くなっているんですよ。
こういう問題が起きているということですね。

もちろん、女性が社会に出て働ける楽しみとか喜びもありますよ。
女性の犠牲によって成り立っていた家族ともいえるかもしれないけれど、とにかく家族の機能は弱くなっています。
だから子どもを作る機能が落ちているし、家族に子どもを増やすという機能が落ちている。

これらと貧困の問題は密接につながっています。
中間層が没落することによって、より貧困の層が増えていくというのが今起きている問題です。

精神疾患の増加とは?

そして、貧困というのはやはり精神疾患を増やします。

長時間労働によってうつ病は増えるし、長時間労働によって人と喋ったり人と遊んだりすることでストレス解消をすることができないので、依存症が増える。
アルコールだったり、大麻だったり、そういうものが増えます。

そして家族機能が落ちているので、虐待の問題も増えている。
家族だけで子育てをしなければいけなくて、地域で子育てができなかったから虐待が増えている。

うつ病は依存症を生むし、依存症は虐待を生む、アルコール依存症の人が子どもに虐待をする。大麻依存症、ギャンブル依存症の人が家族に暴力を振るう。
虐待を受けた子どもはうつ病になりやすい。
ここら辺もやはり相互関係があります。

貧困がこれらを生む。長時間労働がこれらを生む。
コミュニティがない、地域社会がないので、セーフティーネットが機能せずに病気を生むというのがあります。

最近の流れでいうと、AI/ITによって今まで見えなかったものが可視化されたんですね。
それが発達障害や境界知能と呼ばれる人たちです。

今までは肉体労働だったり、コミュニケーションだったり、いろいろな形で仕事を求められてきたんですけれども、最近は頭脳労働が可視化されてしまったため、いわゆるできる人できない人がわかりやすく出てしまった。

そして、マルチタスクを求められるようになってしまったので、今まで働けた人がなかなか働きにくくなっているというのがあります。
今までは1、2%の人が働けなかったのが、3、4%に増えている。そういうイメージですね。

分断もされているんですよね。
社会が分断されているので、発達障害や境界知能に対する偏見も増えているんですよね。
それはなぜかというと、子どもの時から私立に行ったりして、お金持ちやリーダー層の人たちが子どもの時から一緒に育たなくなった。
そういう人たちと付き合った経験がなくて、差別を生んでいるというのがある。

だから心配できない。そして自分たちはお金持ちにならなきゃという競争に乗っかっているので、この人たちに対する心配をする時間がない、エネルギーが足りていないというのがあったりします。

福祉や教育や医療という形で、この問題を解決していく必要があります。

これがきちんと政治的な問題としてできているのかというと、やはり後手後手になっているというのがあるなと思います。
なぜ政治がこの問題に対して後手後手になっているかというと、そもそも知識がないのです。

知識があったとしても、その政治家にあっても意味がなくて、皆が知らないと。民主主義ですから。
民意にないというか、そもそも。
多くの人がそういうことを知らないので政治に反映されない、というのがあるんだろうなと思います。

今起きていることのおさらい

世の中の流れとしては、金融、AI/IT、グローバル化、そして少子高齢化、国際政治の複雑化、ここら辺の絡みがある。
その結果何が起きているかというと、中間層の没落と貧困の問題が起きている。
そして中間層の没落と貧困の問題の結果、長時間労働、第3のコミュニティ、家族機能とかそういうものが落ちていって、精神疾患が増えているということです。

そして、AIとかITが進化していく。
頭脳労働が中心になるので、発達障害とか境界知能の人たちの働く場所が減っていますよということですね。
また彼らのうつが増えているよ、ということです。

これが今起きている社会のことかなと僕は考えています。

自分たちは何ができるのか

じゃあ自分たちは何ができるのか、ということですよね。
何ができるか一個ずついきます。

例えば、長時間労働の問題は今は解決しつつあります。
働き方改革で解決しつつありますよね。

第3のコミュニティに関して言うと、やはり地域社会は壊れてしまったので、なかなかもう一回作り直すのは難しいです。
家族機能についてもすぐ取り戻すのは難しい。
だからこれに対しては、オンラインサロンとかが有効なのかなと思っています。

オンラインサロンとかそういう形でいろいろなサロンがあることで、インターネット上に会社や家族とは別の第三のコミュニティを作る。
そういうことで横のつながりを増やしていくという流れが必要だと思っていて、なので僕はオンラインサロンという形で自助会をやっているんですね。

オンライン自助会をやることで、今まで繋がらなかった人が繋がる。
そしてそこで自分のアイデンティティや生きがいを見いだしたり、助け合いができたらいいんじゃないかなと思っています。

依存症の問題は引き続きNOと言わなきゃダメですよね。
ストロングゼロはダメ、アルコールはダメですよ。
ストロングゼロダメ、大麻ダメ、ギャンブルだって危険ですよと。
依存症の問題がありますから、やはり精神科医としてはそこら辺の危険ドラッグ、依存を生むようなものに対してはNOと言い続けなきゃいけないんじゃないかなと僕は思っています。

そして依存性というのは個人の問題じゃないんですよね。
依存症が家族を壊し、子どもたちを壊し、組織を壊していったりします。
それは気をつけなきゃいけないですね。

虐待の問題もしかり。
きちんと子どもの教育をやっていく必要があるんじゃないかなと思います。

ここら辺のことって、教師の人たちが精神疾患のことを知らないんですよね。メンタルヘルスを。
知っていても自信がなかったり、フォローが足りなかったりする。
教育改革というのも大事なんだけれども、僕らができることは何かというと、やはりYouTubeを通して啓蒙活動をしていく、啓発活動をしていくということはとても重要かなと思います。

偏見の問題に関して言うと、インクルージョン教育という形で、幼い頃から一緒に学ぶ場所というのを作った方がいいと思います。
彼らを見えない場所に置くというのは良くないと思うんですね。

彼らのリアルな声とか生身の声を聞いてもらう。
一緒に働けるようにするためには、メンタルヘルスの教育が重要かなと思います。

あとは医療も限られているんですよ。
例えば、カウンセリングを受けたいと言っても、なかなか受けられない人は多いんですよね。
医療コストの問題だったり、社会保障費の問題だったりするんですけれど、なかなかできなかったりします。
それはもうもうちょっと難しい話になるので、考察とか、考え方とか、やれることとかの間は端折りますけれど、じゃあ自分ができることは何かと言ったら、やっぱりYouTubeを使って病気のことを伝えるとか、オンライン自助会をやることでピアサポートや補助行為というか、メンタルヘルスをサポートするようなサービスをやっていくというのがいいんじゃないかなと思います。

これらは新しいアプリを作るとか、新しい治療法を開発するとか、そういうことをしなければできないことじゃないんですよね。今できることなんです。
今あるものを組み合わせることでできたりするので、それはやろうかなと思います。

あとは福祉の問題もちょっとややこしいのですが、使われてない福祉の制度もいろいろあるので、いろいろな情報をやりとりするとか、インターネット上の声を集めて政治に働きかけるとか、そういうことができればいいんじゃないかなと思います。

とにかくそもそも知識がないんですね。精神疾患に関する知識がなかったりする。
どうして僕らはこうなのか、どうして僕らは病気になったりするのか、どうして弱い人がいるのか、世の中は個人の実力じゃなくて運の問題なのか、基本的人権の問題とかそういうことも含めて、やっぱり精神医学という観点から人類を捉え直す、人間というものの理解を深めていく必要があると思います。
そうしないとやはり問題は解決しないんじゃないかなと思います。

だからやはり啓発活動は必要だと思いますし、実際国にしても文科省にしても大事だと思うので、義務教育の中に精神医学が含まれましたからね。
とても重要なんじゃないかなと思っています。

ということで、何ができる、何をすべきなのか、ということもお話ししました。
こういうことを考えているので、YouTubeをやったりオンライン自助会を運営し始めているんですよね。
それを挑戦しているので、出来るだけですね、ノウハウを溜めたらいろいろなところに公開していったり、手伝ってもらえたらなと思っている感じです。

今回は精神科医による社会というテーマで、今社会どんなことが起きているのかどういうこと、僕は考えているのか、実際に何をしているのか、ということをテーマに動画を撮りました。


2023.1.13

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