東西線「早稲田駅」徒歩1分。夜間・土曜も診療。心療内科・精神科。自立支援対応

WEB予約はこちら

再診患者専用

03-6233-9538

予約制:木・日・祝休診

0362339538
初診WEB予約

  

再診患者専用TEL

03-6233-9538

優しいだけで利用される人と出世する人との違い

00:00 OP
02:20 成功者の多くはテイカー
04:24 突き抜ける人はギバー
05:18 どこを目指す?
07:11 マッチャーを目指すには?
10:23 日本の悪習

本日は「優しくて利用されてしまう人と出世する人の違い」というテーマでお話しします。

身近にもいると思うんです、「あの人素晴らしいね」「優しいよね」「よく助けてくれるんだよ」「あの人が社長になってくれたらいいのにな」そういう人いますよね?
そういう人は結構順調に出世していって、トップに立つことは珍しくないです。

でも逆に、優しくするし色々なことをやってくれるんだけれども残念な人っています。
「あの人、いいんだけど残念だよね」「あの人優しいんだけど結婚はしたくないよね、アハハ」みたいな女子トークがあると思いますけど、そういう残念な人と出世する人というのは違いがあります。

同じように優しくしている、人に対して親切にしているのに何故こういう差が出るのか気になりますよね?
そういう話を今日はします。

この話のもとになった本がありまして『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』という本です。
楠木さんが監訳されている本です。
これは中田敦彦さんが紹介していて、書店でも売れたビジネス書です。

組織心理学を研究している人が書いた本のようですが、その中で人間を3種類に分けて研究されたそうです。
これは心理学的な概念で、医学的な概念ではないです。
心理学的な概念で、「ギバー」「テイカー」「マッチャー」という概念を仮説し、そしてそれに基づいて組織の人間の構成を研究したということになります。

成功者の多くはテイカー

そうすると面白い事実が見つかったんです。
世の中の成功者の多くはテイカーだったんです。

徳がある人や真面目な人、立派な人こそ成功しているかと思ったらそんなことはなくて、自分の利益を優先的に考えている人が社長になったり、出世していたということがわかりました。

そして親切な人は出世できていなかったんです。
本来正しいこと、真面目な行動をしている人、人のために動いている人というのは、そういう人が人望を得て出世していくと思うじゃないですか?
だけど実際は違ったんです。
人に対して何かをしてきた人こそ出世しにくかった、というのがあります。

多くの大衆はマッチャーと呼ばれて、損得で動いている人です。
損得のバランスをしっかり考えている人、損得で普通に動いている人は、半分ぐらいの感じだったということです。
これを聞くと、元も子もないなと思いますよね。

実際にデータを取ってみると、自分の利益を優先するケチな人が本当に出世していって、お金持ちになっていって、惜しみなく与える人はなかなか成功できてなかったと。
損得勘定をきちんと考える人は程々だったということです。

突き抜ける人はギバー

ただこの本の気持ちがいい点は、身近なところにいる人ではなく、もっと出世している人、いわゆる会社の社長、大企業のトップとか会長、一流アスリートとかは実は「ギバー」だったんです。

身近なところにいる部長、身近なところにいる中小の社長であれば、テイカー側なんです。
だけれどもそこを突き抜けちゃう人というのは全てギバーなんです。
自分の利益とかを考えずに、後先考えずに他人のために惜しみなく出し尽くす人が出世していたということであります。

どこを目指す?

我々はたぶん惜しみなく与えちゃう残念な人たちだと思うんですけど、そういう人たちはどうしたらいいの、ということです。

どうしたらいいのと言われると、トップギバーを目指せというのはやはり酷だと思います。
精神科医が患者さんに対して「君たちも同じギバーだからここ(一番上)を目指そうよ」というのは酷です。
ここに至るということは、運だったり、才能だったり、能力だったり、時代の流れだったり、色々なものが重なる必要があります、並外れた体力だったり。

そういうことなので、一番下のギバーからテイカーを目指すのかというと、今度は自分の利益ばかり考えててもいいもんじゃないですね。
本当に幸福かどうかはわからないですね、こういう人たちというのは。

社会的な成功はある、お金はある、イエスマンの部下もいる、ゴルフも行けてる。
もちろんそれで満足したブタというか、そういう形でいるのかもしれないですけど、無知であるからこそ幸せを感じてるのかもしれないですけど、でもやはり我々はもう社会のことを知ってしまっているので無知なる状況には戻れません。

だから「満足したブタ」よりは「不満足な人間」の方がいいし、「満足した人間」よりは「不満足なソクラテス」がいいということなので、我々は「マッチャー」を目指しましょうよ、ということが治療的な戦略としては正しいです。

マッチャーができたら別にテイカーになってもらっても構いませんよ、ということですけれど、僕らは医師なので、病院に通わないほど健康になってもらうということが目指す目標なので、マッチャーかなと。
マッチャーを目指しなさいということになります。

マッチャーを目指すには?

でもマッチャーって難しいんです。
どうやって判断したらいいんですかとよく聞かれます。患者さんから。
どういう場面では断って、どういう場面では手伝った方がいいんですか、ということになります。

これはケースバイケースなんです。
どうしたらいいんですかではなく、ケースバイケースでその場その場で考えていかなきゃいけないんです。
自分の今の体力はこれくらいだから、これはできるな、今は余裕があるから手伝えるな、そういうことになります。

どうやって今はどういう状況なんだとわかるかというと、やはり自他の境界線をしっかり作るということなんです。
今の自分の体力がどれくらいなのかな、とセルフモニタリングがしっかりできるということがとても重要です。

今体力がどれくらいなのかな、今のメンタルポイントというかMPがどれくらいなのか、今の自分の目的、最優先事項は何なのか、今やりたいことは何なのか、今の家族の状況はどうなのか、ということです。

他の人もそういうのがあって、互いに境界線を押したり引いたりし合って妥協したりとかやってるというのが、いわゆるマッチャーの世界というか普通の人間関係です。

テイカーだと、何ていうのかな、「もういいよ!」という感じです。
「お前がそこまで言うんだったら、俺が仕事やるから帰っていいよ」みたいな、そういう形で境界線をグングン押してくるって感じです。

ギバーというのは勝手に仕事を引き受けちゃうというか、どんどん自分から引いていくので、勝手に自分で苦しくなってるというイメージです。
そのためには、自分の今の状況、セルフモニタリング、自己理解、そういうことが必要になってくると思います。境界線を引くには。

あとは重要なポイントとしてはコミュ力をつけることです。
またコミュ力かとか言われそうですけど、私たちコミュ障なのにとか言われそうですけど、でもコミュ力は大事です。
あとはチームマネジメント能力、問題解決能力というのがとても重要です。

色々な能力を高めていく必要があります。

日本の「悪習」というのがあって、例えば自己犠牲的な職人さんを褒め称えることがあるんです。

例えば安くておいしい店というと、お客さんも褒めるんです。
でも今度はお金をちょっとでも、値段を上げようものなら、めちゃくちゃ怒るわけです、「何なんだ!」みたいな。
マッチャーの人まで怒るみたいなことがあります。

昨日Twitterで見てたんですけれども、本物の寿司職人は寝る時間なんかないんだよ、朝ちゃんと築地に魚を買いに行って、仕込みをして、色々なことをやってたら、寝る時間なんか4時間ぐらいしかなくて、自分のプライベートの時間なんかとてもじゃないけど持てないんだよ、そういうことをつぶやいているものがあったんです。

そういうことをやっている職人さんたちというのはいかに素晴らしいんだ、ということを書いてあったんですけれど、冷静に考えると、まあそうだな、と思うし、僕もそういう世界観、人間観、職人観が好きです。
僕はもともと自衛隊にいたし、医師も自己献身的で自己犠牲的じゃないですか。わかるんです。

僕も結構好きだし、実際自分もそういうのをやっていても、これがやれてると言って、ある種のナルシシズムが満たされるところもあります。
でも冷静に考えてみてくださいよ、そしたら家族が困るじゃないですか、ということです。

他の人が困りますよね、あなたがそうやってるせいで他の従業員の人たちの給料は上がりませんよね、そういうのがあるんです。
お客さんに気を遣って、本当に自分のことを考えてくれている周りの人たちを幸せにできてなかったりするというのがあります。
日本の悪習というのはこういうのがあります。

でもこの人はこの人で悪いんだよね。
そもそももうちょっと中長期的に考えなきゃいけないし、じゃあ自分一人でやる、私が頑張ればいいじゃなくて、この技術やノウハウをキチンと他の人に渡していく。
自分の仕事を分業化して、誰かに渡していくことはとても重要なんです。

この人も他の周りの人も、あいつが頑張っていけばいいやと言って、無関心なわけじゃないんです。
みんな心配していたりするので助けてあげたいと思っているんだけど、「いやいや、僕いいです」と言って、結果的にうまくいかなかったりするので、きちんとチームマネジメントをするということです。

これはずっと続けたら難しいから、忙しいから、とにかく仕事を分割していって、自分でしかできない本当にギリギリの最後までとっておこうということです。

例えば築地まで行くんだったら他の人に頼むとか、魚の目利きを教える、マニュアルを作る。
仕込みのことだって全部を自分でする必要はないわけだから、お弟子さんを作る。
営業とかのマネジメントを他の人とやる。
色々な要素があると思うので、自分の仕事を一回振り返って、俯瞰して、言語化していって、区切って、そして他の人に渡していく、そういうチームマネジメントがとても重要です。

「いやいや、こんなことしてると余計時間がかかるんだよ」「人に説明する時間がもったいない、そういうのは難しいんだ」と言うんですけれども、そうです。
それはそうなんだよね。
短期的に見れば、今やっていることが最適解なのかもしれないんだけれども、中長期的に考えた場合は、やはり最適な行動をとっているはずが実は違うということが世の中にあるわけです。

だから中長期的な視点を持って、今は損かもしれないけれどもお弟子さんをしっかり育てる、今は却って売上が下がるかもしれないけれども優先する、ということはとても重要です。
長い視野で物事を考えて、自分も労らなきゃいけないし、周りの人、チームのメンバーの幸福も考えていく必要がある、ということです。

そういうことをしていくと腕も上がります。
普段何気なくやっていること、当たり前のようにやってることも、一度人に教えたりマニュアル化していくということは、問題解決能力を高めることになるし、結果的により美味しいお寿司ができるようになると思うので、頑張ってみるということです。

お客さん側、僕らもそういうのはもうやめましょうよ。
自己犠牲的な人たちを見たときに、それに対して値段を上げるなとか言うのはやめて、やっぱり相手は相手の立場がありますから、表面的なその人の生活や個人の自由だよとか思うのでなくて、その人にいるその人の親御さん、その人にいる子ども、家族、その人の周りにいる職人さん、仲間たちのことを考えて、それは過度なこちら側の言い分だなと相手の立場に立つということは、とても重要じゃないかなと思います。

日本はメンタルヘルスに対する理解が本当に遅れてるんです。
そこが連想できないんです。
「そういうことまで考えてなかったんだけど、そうか」という感じで。

日本は空気を読んでいるようで読めてないというか、メンタルヘルスのことを知らなくて、疲れるとか、気力には限界があるとか。あなただってそうでしょうとか思ったりしますけどね。

日本はうつ病の人が2~3%いますがアメリカだと10%なんです。
そういうことを僕が言うと、「アメリカ人は自己主張の国だから弱ったらすぐ言えるんですよ」と言うんですね。
そうなんだよね。
弱ったら言っていいんです。
弱ったら自己主張して、私は今苦しいよ、うつだよって言っていい。
それが国際的なものになってきているんです。

もちろんアメリカはハードワーク過ぎる、日本よりもっと過酷な労働条件だと思います。
そういう中での10%だと思いますけど、でもやはりメンタルヘルスの理解があるから言いやすいところもあると思います。
プロスポーツ選手も、うつですと言えてますからね。
でも日本のプロスポーツ選手はそんなこと言えないですから。

そこは周りがうまくサポートできていなかったりもするだろうし、頼れなかったりとかあるんだろうなと思います。

そういうところを全体的に国際化していくことがとても重要かなと思います。
だからもっと声を出して、うつ病の人は苦しんだよということは言っていいんですよね、ということです。
日本人はまだまだ言ってないということです。
それは恥ずかしいことです。

今回は優しくて利用されてしまう人、出世する人との違いというテーマで動画を撮りました。


2023.1.28

© 2018 早稲田メンタルクリニック All Rights Reserved.