本日は「自分の気持ちが言えない人の特徴および治療法」というテーマでお話しします。
社交不安障害、回避性パーソナリティ障害、発達障害の人が多いかなと思います、自分の気持ちが言えないという人は。
主に「超自我が強い」と言われたりします。
こうあらねばならない、こうしなきゃいけない、という人たちは、自分の気持ちを言えなかったり、怯えきっている人、相手のことがよくわからなくて、怯えきってる人もなかなか言えないと思います。
自分の気持ちを言えない人にどういう問題が多いのか、ということを要素分解してみて、それらについて一言ずつコメントしていきます。
まず、自分の気持ちが言えない理由を3つに分けました。
1つ目は自分。
自分の問題で、自分の気持ちが言えない。
次は相手。
相手の問題のせいで、相手の影響で自分の気持ちが言えない。
あとその他です。
状況の問題によって、状況が気持ちを言わせないようにしている。
という3つに分けました。
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自分の問題の場合
自分の問題というと、どういう問題があるのか。
色々な分け方があると思いますが、科学的な分け方ではなく雑に分けているだけなんですけど、1つは抑うつ、うつっぽい感じです。
うつ状態のような形で、自分の気持ちが言えなくなっている。
次は神経症的な問題、あと不安の問題、そういうことから自分の気持ちが言えなくなっている。
そして最後は能力的な問題、知的な問題やパーソナリティの問題から自分の気持ちを言えなくなるという3つに分けてみました。
なんとか病ではないです。
そういう要素の話です。
うつ状態とかそういう病的なものであった場合は、病的な症状の回復を待てば自分の気持ちが言えるようになります。
うつ病でうつ状態がひどくて、思考制止や意欲低下がある場合、自分の気持ちを言おうと思っても頭が回らないので言えないですね。
ということは、うつを回復させた方が早いんです。
そういう時にカウンセリングをしてもあまり意味がなくて、どちらかと薬と療養で回復するのを待つんです。
回復したらそもそも喋れるようになったりしますから。
そういう時にはカウンセリングをせずに、まずは病的な症状を回復させましょうよ、ということになります。
次に神経症的な問題です。
それは主に2つに分けられるのかなと思います。
トラウマの問題、そういう記憶があって、その記憶に支配されているから自分の気持ちが言えないというパターン。
あとは逃げちゃうパターンです。
不安だから逃げてしまう、逃げてしまうので失敗や経験が足りないから、どんどん自分の中の妄想というか、自分の中の思いが広がって、あれをやったら失敗するかも、あれをやったら怖いかも、ということでがんじがらめになって動けないパターンがあります。
記憶によってがんじがらめになって言えないのであれば、やはり記憶の問題を解決していく。
記憶というものをもう一回語り直すことで、あれはああだったんだね、あれはこうだったかもね、あれはあなたの問題じゃなくて相手の問題だったよね、あれは親がそうだったから、他の大人はそんなことないよ、とそういう現実見当識を訂正していく。
そういう認知の歪みを修正していくことでやっていくというのが治療になります。
人間というものがどういうものなのか、ということの学び直しです。
そういうことによって、人間ってそんなに怖くないな、じゃあ自分の気持ちを言っても大丈夫だな、ということを学ぶということがあります。
あとは回避している回避性パーソナリティ障害や社交不安障害の問題であれば、そもそも経験や失敗が足りないので、失敗しても大丈夫という経験を積むということです。
成功しようと思ったら、100%の成功はあり得ないので、失敗しないと成功できないわけです。
失敗しないとというか、成功を狙おうと思ったら必然的に失敗もついてくるんです、確率的に。
ある程度割り切って、3割程度の成功で良しとするのか、9割成功しないと良しとしないのかはわからないですし挑戦する類いによって変わると思いますが、まずそういうところを見直して、ああそれは大丈夫なんだな、じゃあ一緒に頑張ってみよう、落ち着いてやってみよう、失敗するかもしれないけれども、中長期的に考えて最終的には成功で収束するのでやっていこう、ということです。
1回1回で考えたら良いも悪いもあります。
ポケモンだってそうだし、ギャンブルだってそうだし、パチンコだってそうだし、マージャンだってそうです。
だけどだんだん収束していきます。確率というのは。回数を重ねていけば。
そういうことを受け入れていく、そして人間というのはどういうものかを知っていくということで自分の意見を言えるようになります。
最後に能力の問題です。
残酷ですけれども、やはり知的な能力の問題で言えないというのがあります。
例えば、集中力がない、整理ができない、自分が喋ろうと思ってもごちゃごちゃになっちゃう、もともと整理されていないので、自分の考えがパッと言えないということです。
このパターンがある場合は、そもそもあなたは会話の前に、自分の気持ちを喋る前に予習してきてますか、ということです。
「トークのおみやげ作ってますか」というのはヤツですね、さんまさんがよく言いますけど。お土産がないんだよね。
僕もそうです。
人と喋る前に、この人とこんな話しようかな、こういう話が来たらこうしようかな、と予習をしているんです、頭の中で。
ぶっつけ本番で喋っているといつも言いますけど、本当にぶっつけ本番で喋ってるわけじゃなくて、ああ来たらこう言おう、こう来たらこうだな、事前に考えています。
それをやっていないとできないよね。
だから準備しておく。
こういうことが来たらこう喋ってみよう、そういう準備は結構大事だったりするので、そういうトレーニングをしていけば、自分の気持ちを言いやすくなると思います。
国語力の問題があります。
単純に自分の気持ちを表現する国語力がない、デッサンする力がないということです。
スケッチの回数がそもそも足りないんです。
私はこの絵を描きたい、こういうことを描きたい、スケッチしたいと言ったら、何度も何度も絵で表現したいと思ったら描きますよね?
スケッチしていくじゃないですか。
デッサンの練習をするじゃないですか。
それと同じで、デッサン力というかスケッチ力は大事で、何かを表現する。
無秩序なものですよ、自分の気持ちというのは。
自分の気持ちというのはなかなか言えないし、学習された成果でもあったりするので、感情というのは。
だから学習していないとダメなんだよね。
一般常識というのは大事です。リテラシー。
色々な知識がないと自分の気持ちや今の自分の状況を説明する言葉が足りないので、やはり言葉を覚えていく、そして科学的な常識を身につけていくことが大事です。
常識を身につけていくことがとても重要だし、ロジカルな力、きちんと構造を組み立てる。
パパパッと喋っても相手には伝わらないので、上手い言い方をする。
自分の気持ちを強く伝えたいときには、「すごい痛いんです」だけじゃなくて、「痛いんだよね。本当になんだか身がよじれるくらい」みたいに倒置法を使うとか、比喩を使うとか、色々なことを駆使しないと伝わっていかないので、レトリックを学んだり、相手に伝わりやすいようにロジカルに伝える、そういうことも大事です。
あとは言い間違いをしないということです。
僕もそうなんだけれども、発達傾向がある人は言い間違いが多いんです。
自分はそんなつもりなかったのに、と言っても、相手は言葉でしか通じないので、言葉が最初から違うと伝わるものも伝わりませんから、やっぱり言い間違いを減らしていくというのもとても重要だったりします。
狙った球を投げてないというか。
そんな気持ちではないのに、精神科医なんだから私の気持ちわかるでしょう? ちゃんと言えなくたって伝わるのが精神科医なんじゃないの? と言ったり、親子なんだからわかるでしょう? 言わなくたってわかるでしょう? 恋人なんだから、好き同士なんだから、と言いますけど、知識があるから、一緒に経験してきた背景があるから予測はつくけれども、でもやっぱり言葉が違ったら、言っていることが違ったら理解しがたいです。
それはそういうものですから。
言葉が違うのを理解しろというのは無茶なので、そういうことです。
知的な問題や発達の問題があるのであれば、やっぱり練習とか国語力をつけるということも大事だなと思います。
相手の問題
じゃあ全部自分の問題かというと、会話は人とやるものなので、そもそも相手の問題だったりすることもあるのです。
自分はちゃんとやっているけれど、相手に整理する力がなかった場合は勘違いされるし、相手に国語力がなかったら勘違いされるし、相手がトラウマがあったり不安があったりして、こちらがちゃんとロジカルに伝えても全然別の解釈しちゃう、別のポイントに引っかかって、きちんと全体の文章を聞き取れないということがあります。
これは結構大きいんですよ。
国語のセンター試験(共通テスト)で100点満点取れる人はほとんどいないので。
何となくみんな雰囲気で喋っているだけで意外ときちんとわかっていません。
Twitterを見ていても、ちゃんと文章を読めていない人が多いと言うじゃないですか。Twitterでさえそうだから、ましてやもっと長い文章は絶対わからないですよ。本当に思いますね。
それは国語力だけの問題じゃなくてトラウマや人格の問題だったり、抑うつなどの問題もあると思いますけど、そういうのがあります。
ある患者さんが「益田先生の動画のコメント欄や感想を見ていると、なんでこの人はこんな感想を言うんですか」と聞いてくることもあるんです。
そしたら僕は「動画見ずにタイトルとサムネだけで答えてるからだよ」と言ったりします。
煽りタイトルだけで評価してコメントを書き始める、と言ったりしています。
そうするとその患者さんも「ああ、わかります。私も動画見ずにコメントばかり読んでコメント書いてます」と言ったりして、「なんじゃそりゃ」みたいなことを言ったりしてます。
まあそんなもんです。
相手は自分ほど自分の気持ちに関心ないですからね、そもそも。
その他の問題
あとはその他のものとして、TPOです。
TPOに合わせて会話をしてるので、そもそも自分の気持ちを言う場所じゃない、自分の気持ちを聞く場所じゃない、そういうのはあります。
言わせないシステムにあえてしているというのもあります。
クリニックでわざと混んでいるような雰囲気をつくることで、会話を防ぐみたいな手段もあるだろうし、今は職場だからお前の気持ちを聞いてる場合じゃないだろとか、そういう言い方もあったりします。
それはあなたの問題とか相手の問題とかじゃなくて、そもそも今はそういう時間じゃないよね、ということもあります。
じゃあいつ私はそういうことを喋ったらいいのよ、と言われそうですが、どうやって場所と時間を作るかということになります。
精神科医ですら話を聞いてくれないならどこにもないじゃない、と言われそうですけど、いやいや、そしたらカウンセラーがいるでしょう、という話になります。
カウンセリングなんか高くて払えないよ、という話になると、いやいやあなたブランドのバッグ買ってますよね、と言いたくなります。
色々な努力をしたら時間もお金も作れるんですけれど、そもそもそういう努力をしないということも結構あるなと思ったりします。
理解じゃなくて解決してほしい?
自分の気持ちが言えない、理解してもらえない、理解してほしい、というときに、よく聞いていると、理解してほしいんじゃなくて解決してほしい、ということを言っている時もあります。
そもそも自分の気持ちを言えていない、だから困ってる、と言ってる人もいるんだけれども、いやいや、あなたは結構自分の気持ち言ってますよね、相手だってあなたの状況を理解してますよね、ただ、その問題は解決策がない、そういうことだってあります。
子どもの問題とは違って、大人の問題というのは解決不可能な問題というのがつきまといますから、あなたの気持ち、あなたが言っていること、あなたの抱えている問題はよくわかるけれども、それはなかなか解決できないものなんだよ、これはそういう制限なんだよ、ということも知ってもらうのが大事かなと思います。
そもそもの話を言うと、自分の気持ちが言えないと言うけど、そもそも言ってますよね、という話です。結構あります。
解決できない問題というのはあって、病気の問題、死んでしまうということだったり、老化の問題、愛する人から愛されない問題、片思いの問題、愛する人と別れてしまう問題、別れの問題、事故に遭う問題。
それは人間である限りなくなることはないです。
お釈迦さまの時代から言ってますから。
だけどその限界をどう受け入れるのか、痛みを、傷があるものを、どう抱えて生きていくのかというのがとても重要なので、そういうことも理解してもらうというのが大事かなと思います。
■若い人は?
じゃあ、若い人はどうなの?という話になります。
若者はどうなのと言ったら、若い人は全部が足りてない、という感じです。
ここで言う若者とは何歳ぐらいまでを指すのかはなかなか言い難いですが、少なくとも30歳までは全部足りていないという感じがします。
今と32、3くらいまで、転職を2回ぐらいするまでは全部足りてないと言ってもいいかもしれないです。
本当にそれだけ一人前になるのがすごく難しい、複雑化している時代になっているなと思います。
若いということは、それ自体でドパミンがすごく出ているし、報酬系に弱いし、刺激に弱いんです。
甘い言葉に騙されがちなんです。
それはなぜかというと、脳の問題だったりします。
年齢を重ねることで、脳のドパミンへの過剰な反応は落ち着いてきたりしますから大事です。
人間の学び、理解、経験と失敗が足りないので、そもそも若いということは苦しいですよ、ということだったりするし、国語力とか整理する力、集中力、お土産を持っているか持っていないかなんて、若い人はみんな持ってませんから。
僕だって同じ話を何回してると思いますか?
毎回毎回自衛隊の話をするなよと言われそうですけれど、それは僕のお土産であって準備してる持ちネタなので。初めての人もいますから。そういうことです。
そういうお土産が増えていくと、割と会話はやりやすかったりしますし、雑学や常識というのも年齢を重ねたらついてくるとかあります。
僕も全然わからなかったですから。
自衛隊にいたときは自衛隊が払ってくれていたとか、よくわかってなかったし、開業してから、これも自分で払うんだ、こんな税金あったんだ、本当にお恥ずかしいことがいっぱいありました。
それに遭遇しないとわからないです。
僕だって開業前に色々な本を何冊も読みましたよ。
だけど抜けてるんだよね、意外と。
それは経験してないからなんだよね。
ロジカルなことでも、僕は毎日YouTubeを撮ったり、色々なことをやったり、色々患者さんと喋ってるからだんだん喋りが上手くなってきましたけど、最初はめっちゃヘタでしたから。
自衛隊なんて「ちゃす!」の世界ですから。
「ちゃす!」と言っていればよかった世界なんで。誤解ありそうですけど。
でも本当にそういう体育会系のところがあったから、それを説明する努力はあまりしてこなかったです。
上の人から言われたら「はい、わかりました」という感じだし、後輩が自分の言うことを聞かなかったら「何でなんだ」と言って怒るみたいな、そういう要素はやっぱりあったので、それが100%悪いわけじゃないですが、最初はそうでした。
他に学ぶべきことが多かったので、そういうところは能力が伸びなかったというのはあります。
だけどちょっとずつ伸びてきて今に至るという感じです。
いやいや益田、全然喋るのヘタじゃないか、と言われそうですけど、いやいやでもそうは言っても僕、YouTube結構伸びてますから、と言いたくなっちゃいます。
ここまでネタなんですよ。
でもね、そんなこと言っちゃダメなんだよね。
医者ってやっぱり怖いですから。
権威があるとやっぱり言いにくいよね、相手は。
雰囲気づくり
だから親しみやすい、相手の失敗を許す雰囲気、助け合いの空気、あと、変な人オーラですね、変な人だから喋っていいだろうとか、変な人だからバカにしてもいいだろう、そういうオーラを持つのはすごく重要で、そういう空気じゃないと、やっぱりこういう失敗や経験を積ませてあげられるような雰囲気が出ないので。
医者はそれだけですごく怖いし、医者というだけで知識がないことを責められているような感じに皆さんになります。
受験勉強をもっと頑張れたんじゃないか、もっと普段から勉強できたんじゃないか、普段からもっと何かを調べる努力ができたんじゃないか、ということを暗に伝える象徴みたいな感じでもあるので、まあだからそういう圧を与えちゃいけないなと思います。
それはこちら側の問題でもあります。
自分の気持ちを言わせてあげる環境を作らなきゃいけないので、やっぱり僕としては、親しみやすさ、失敗を許す雰囲気、助け合いができるような空気、コメント欄や自助会もそういうのを作っていきたいし、そういうのをお願いしたいし、僕は変な人オーラを出していきたいなと思います。
僕のことを親しみを持って批判できるような空気を作ることを、これからも努力していきたいと思います。
こういう努力をしないと僕なんか本当にすぐ何か立派な人って思われちゃいますので、そういう努力をして、ハードルを下げていきたいなと思います。
ということで、今回は、自分の気持ちが言えない、というテーマで色々な条件があってどういうことをやっていけばいいのか、ということをお話ししました。
人間関係
2023.2.13