東西線「早稲田駅」徒歩1分。夜間・土曜も診療。心療内科・精神科。自立支援対応

WEB予約はこちら

再診患者専用

03-6233-9538

予約制:木・日・祝休診

0362339538
初診WEB予約

  

再診患者専用TEL

03-6233-9538

トラウマがある人はどうなってしまうのか?

00:00 OP
01:58 強烈なストレス体験を持つ人の割合
06:00 PTSDの症状
11:01 合併症
12:14 周りの人にもトラウマがある

本日は「トラウマがある人はどうなってしまうのか」というテーマでお話ししようと思います。

主にPTSDですね。Post Traumatic Stress Disorder 心的外傷後ストレス障害と呼ばれるもの。あと複雑性PTSDの解説になります。

PTSDというのはどういう病気かというと、命にかかわるような強烈な恐怖体験をする。それがトラウマになるんですね。その記憶に支配されてしまう。
時間が経ってもその恐怖体験に支配されてしまって、現実を満足に生きられない人たちのことをPTSDと言います。

古くは第一次世界大戦とかベトナム戦争の兵士です。
戦場から離れてもなお心身に異常をきたしているものから見つかった病気です。

複雑性PTSDというのは、虐待を受けていた子どもたちのことを指します。
長い間強烈なストレス体験をし続けた結果、心身に異常をきたしているものを複雑性PTSDと呼んだりします。
記憶に関係するところ、海馬や扁桃体の異常なコネクションによる病気ではないかと、神経科学的には考えられています。

強烈なストレス体験を持つ人の割合

結構身近な病気なんですよね。
実際、ひどい暴力や自然災害、愛する人の死、そういう強烈なストレス体験を感じたことのある人の62%は18歳までに経験すると言われています。
19%ぐらいが3つ以上のトラウマを経験したりしていると言われています。

これはアメリカの調査です。UpToDateという世界中で使われる医学の教科書というか、インターネット上の教科書があるんですけれども、そこから取ってきました。

ちょっとずれるのですが、国際的に行われた子どものPTSDの調査で、メタ解析をした結果、その経験をしたうちの15~16%がPTSDを発症すると言われています。

だから9%ぐらいですね。子どものうちの9%~10%くらいが、PTSDないしトラウマによる心身の異常をきたしているんじゃないかと考えられています。

疫学調査なのでしっかりしたデータは出ないですし、国の状況によっても違うと思うんですね。
アフリカみたいに内戦や戦争が多いところや治安が悪いところもあれば先進国もあるので、一緒にしてしまっていますが、そんな感じです。

アメリカ、カナダにおいては、一般人口の生涯発症率は6~9%くらい。
そのうち、この1年の間でPTSDに悩んでいる人は3.5%~4.7%ぐらいいるのでは。
うち3割は性被害者ということです。

だから人口の2~3%ぐらいが性被害のPTSD症状を持っていたり、現在も1~2%ぐらいの人は性被害によるPTSD症状で悩んでいる。
だいたい15~16%が発症するということです。

人口の20%近くの人は性被害に遭ったことがあるということになるのかな、単純に計算すると。
概算しても結構な人が性被害に遭っていますよね。
3割近くの人が性被害に遭っているということですから。

ここら辺のきっちりとしたデータというのは出てこないんです。
どれぐらい痴漢に遭ったことがあるかとか。でも2~3割の人は遭っているということになりますね。

全員がPTSDを発症するわけじゃないんですけど、1割くらいかな。
1割強ぐらいの人がPTSDに発展していくということです。

PTSDの症状

PTSDの症状というのはどういうものかというと、
・侵入症状
・持続的回避
・認知と気分の陰性変化
・覚醒(イライラ、攻撃的)
この4つの大きな症状が挙げられます。

恐怖があったり不安な時に、生物は「闘争・逃避反応」というのをするんです。
交感神経系がガッと上がって、いつでも戦えるようにしたり、逆にいつでも逃げられるようにする。

心臓がバクバクして体が熱くなってきて、アドレナリンが出てきて、バッと攻撃的になったりバッと逃げられるようにする。不安で逃げてしまう。走って逃げるような体勢を作る感じなんです。
記憶の中に常にそれがあって敵がいるので、常に闘争・逃避反応が起きている状況なんですよね。

侵入症状は具体的にどういうものかというと、トラウマについてふとした瞬間に考えたりする、思い出してしまう、悪夢を見る、フラッシュバック、今まさにその被害に遭った事件現場、レイプされた現場を思い出してしまう。

あとはそれを連想させるものを見た時、ニュースやテレビの報道、その地域や場所など連想させるものを見た時に強烈な苦痛を感じる。
もしくは気持ちは落ち着いているんだけど、なぜか肩が痛い、頭痛がする、そういうものを侵入症状と言ったりします。

子どもの場合は明確な悪夢ではなくて漠然としたものだったり、言葉で言えないので、殴りごっこと言ってぬいぐるみを殴るとか。そういう再演みたいなことで確認することができたりします。

後は持続的回避ですね。
トラウマに支配されたくない、強烈な苦痛を感じたくないので、できるだけ考えないとか回避する。
テレビをつけない、テレビに出た瞬間スイッチを変える、そういう場所に行かない、思い出したくないから喋らない、考えない、ということをしたりします。

あとは、認知と気分の陰性変化と言うのですが、いわゆるうつっぽくなる感じです。
思い出すことができなかったり、世界は危険なんだとか、自分は最低なんだとか、他人は誰も信用できないと、自分や他者、社会、世界に対する否定的なイメージ。

あとはトラウマの原因は自分だ、事件が起きたのは自分のせいなんだ、暴力を振るわれたのは自分のせいなんだ、性被害に遭ったのは自分のせいだ、という思い込み。
ずっと続く怒りや不安、罪悪感、やる気が出ない感じ。
常に誰かといても孤独感を感じ続ける。
喜びや満足、愛情を受け入れる感じがない、うつの症状があったりします。

あとは覚醒ですね。常にイライラしていて攻撃的だったり、攻撃が自分に向かう時もあります。
無謀なことをしたり、自己破壊的なことをしたり、過剰な警戒心だったり、びくっとしたり、集中困難だったり、睡眠障害があったりします。
何かわかりますよね。何か怯えていて、バッと殴ってきたり、イライラして、逆切れしたかと思ったら落ち込んだり、そういう感じですね

これがPTSDの症状です。付き合いにくそうですよね。
だからね誤解されやすいですね。PTSDの人はすごくわがままに見えたり、すごく自分勝手に見えたり、性格が悪い人のように見えますけど追い詰められているという感じです。

あと解離と呼ばれるものもあって、これが子どもだったり、ちょっと未熟な精神というか、言語化しにくい人だと、もう分離しちゃうんですよね。
自分が自分じゃないような感じ。自分の身体から抜けているような感じ。
現実が現実じゃなくて、夢の中にいるような感じを覚えたりする。

こういう症状を持つようになります。
全員が全員そうじゃないんだけれども、こういう症状を持ったりする。
ここまではいかないけれど、これに似たような部分が出てきたりするというのがあります。

忘れることができないというのは結構大変なんですよね。

合併症

それから、合併症ですね。
こういう不快感があるので、全員が全員通院するかというと、そういうわけじゃありません。
自分を慰めるために、アルコールやドラッグに依存してしまう、乱用してしまうことがあったりします。

あとはうつ病や不安障害になる、摂食障害になってしまう。そこまで発展してしまうこともあります。

薬物やアルコールに手を出してしまうっていうのは、本当に自己治癒的な感じで、自分は病気じゃないと思っているんですよね。
トラウマのせいで今落ち込んでいたり、イライラしたりするんだけど、そうじゃないと思っている。

でも何かお酒を飲むと楽だなとか大麻を仲間内でやると結構落ち着くなみたいな感じで、ズブズブはまる。
生きづらいよねとか言いながら、世の中終わってるねとか言ったりするんですけど、まあ世の中が終わってるというかトラウマに支配されてしまっている。
そもそもトラウマを引き起こした社会が悪いと言えば悪いのかもしれない。
これも陰性変化の問題だったりもするので、認知が歪んでいたりします。

周りの人にもトラウマがある

PTSDは特殊な状況ではないんですよね。
特殊な状況ではないんだけれども、一部かなり苦しむ人がいるという状況です。

周りの人も同じようにトラウマを持っていたりするので、うまく反応ができないんですよ。
トラウマで苦しんでいる人を見ると、自分のトラウマを思い出してしまう。
なので無視をするとか、逆に共依存的になる。自分を慰めるかのように、自分と相手の区別がつかなくなって共依存的になって、過度に甘やかしたり、助けてあげようという気持ちになったりする。

今度は逆ですね。
イライラしちゃうんですよね。イライラ症状が出てきて、攻撃したくなる。否定したくなるということが起きたりします。
周囲の人の反応もいろいろ問題があって、これがセカンドレイプみたいな形でまた次のトラウマを引き起こすみたいなことがあったりします。

だからトラウマで苦しんでいると、他の人のトラウマも刺激することになって、何かなということになってしまいます。
そうすると今度は自分の罪悪感が深まって、自分はダメなんだとなってしまう。

でもそれは何て言うんだろうね、人間はこういうものなんだとか、社会はこうなってるんだとか、そういうのがわかってくると、知識がちゃんとあれば、周りの人も自分の中のトラウマ体験をきちんと言語化したり、理解していれば、これは同じようなものが刺激されているな、自分もそういう気持ちになっているな、逆転移が起きているなと思えば抑えられるから、適切な反応ができるわけです。

こういうのはとても重要だったりします。
そして自分の中にもトラウマがあって、そのトラウマを解決していけば、相手に対する攻撃的な部分も減るし、世界に対してポジティブに思えるし、逃げなくても済むし、思い出すこともない、ということになっていきますね。

今回は、PTSDと複雑性PTSDの症状、周りの反応、合併症について解説しました。


2023.5.1

© 2018 早稲田メンタルクリニック All Rights Reserved.