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理想主義者の先駆者:プラトンとメンタルヘルスを考える

00:00 OP
00:27 プラトン
03:14 イデア論
07:58 「知」「徳」

本日はプラトンですね、ソクラテスの弟子プラトンについてちょっと語ってみようかなと思います。

プラトンのことを知ってもらいつつ、それを現代のメンタルヘルスにも活かしてもらえたらなと思います。

プラトン

プラトンは古代ギリシャの人です。
いわゆる哲学や思想の世界というのはギリシャからスタートします。
ギリシャ時代の有名人と言ったらソクラテス、プラトン、アリストテレス。そのプラトンです。
紀元前4世紀くらいの人です。

プラトンはどんな人かと言うと、ソクラテスの弟子なんですよね。
ソクラテスは「無知の知」が有名です。我々は何も知らない。僕らは本当のことは何も知らない。だけど知らないことは知っている。だから僕は他の人たちよりよく知っている、みたいなことを言った。

ちょっとひろゆき感があるんですよね。冷笑的というか。
だからソクラテスは人に嫌われて、最後は死刑にさせられるのですが、そのソクラテスの弟子です。
ソクラテスが亡くなった後、留学と書いてますが各地を巡ったようです。

ギリシャの中の哲学の一派をピタゴラス派というのですが、ピタゴラス派でも学ばせてもらったことがあったようです。
「ピタゴラスの定理」とか聞いたことがありますよね。
ピタゴラス派は、数学は神様の教えだ、数学こそ真理だという哲学であり、宗教みたいな学派なのですが、ピタゴラス派に学んだ。

そこからアカデメイアという学校を作るんですね。それが40歳くらいの時のようです。
このアカデメイアでは、哲学のみならず、政治学なども教える。
ここの学生の一人がアリストテレスです。

プラトンは理想主義者なんですよ。
哲学を学んだ人が政治をすれば国家は良くなるんだという考え方があったので、シチリア島のシラクサに行くんですね。
2回くらい訪問して自分を売り込みに行ったみたいですが、うまく行かなかったみたいです。
その後アテネでまた教師をして亡くなったということのようです。

いろいろな哲学やそういうことをやって、よし政治だと言って失敗する感じは、儒教の孔子と似ていますよね。
本当に人間は繰り返すなと思ったりします。

イデア論

プラトンの代表的な理論の中の一つに「イデア論」というのがあるので、この話をしようかなと思います。
イデア論というのは、人間が住んでいる世界とは別にイデアの世界があると言います。

現実にある三角形というのは、どうしても完璧な三角形にはならない。
人間の手で描いたりしているから。
だけど、イデア界では究極の三角はあるよね、みたいなね。

我々の心の中にある世界にはそういう完璧な世界があって、そして現実にはないんだけれど、完璧な世界が本当はあるんだということを言いました。

それを「イデア」と言うんですね。
正三角形のイデアというものがあるし、これが拡張していくと、魂のイデア、美のイデア、幸福のイデア、何でもあるわけです。
そういう理想、究極体みたいなものがあって、現実はそれの劣化版みたいな感じなんだ、と言いました。

イデア論は後世にも影響を与えて、主に神学に取り込まれます。
キリスト教の神学に取り込まれて、アウグスティヌスやトマス・アクイナスが理論体系化していく時に、このイデア論をうまく利用したんですよ。

神の世界はイデアの世界だと、イデア論と似たような形で、そこには究極的な世界があって我々はその究極的な世界を作ろうとしている、という思想に発展していく。
だから西洋的な思想は、このイデア論がベースにあったりします。

洞窟の比喩と書いていますが、我々が見ている現実は、洞窟に見える影なんだとプラトンが比喩をするんですよね。
僕らが見ている世界は影のようなものを見ていて、僕らは見えないけれど本当の実在は後ろの方にあるんだ、イデアというものがあるんだと。
イデアを求めることをエロースと呼んだりする。
魂に刻み込まれたイデアを思い出そうとすることを、アナムネーシスと言ったりします。

なんとなく直感的にわかりますよね。現実ではない本当の究極の世界があって、現実はそれの劣化コピーなんじゃないかみたいな。

これはソクラテスの無知の知の補完だという言い方もされます。
僕らは何も知らないよね、でも僕は知らないということを知ってるんだよ、というソクラテスの教えから、とは言っても本当に知らなきゃいけないことは何なの?ということを考えると、「それはイデアでしょう」というのがプラトンの考えです。

知らないことを僕らは知っているよね、知らないんだよね、という形でそのまま行ってしまうと老荘思想みたいになるし、知らないことを知っているんだけれども、それでもなお真実は何かというと、イデア論みたいなところに行く。

その後にアリストテレスという人が出てきて、「そうは言ってもさ、もうちょっと現実主義で行こうよ」みたいな形になっていくんですよね。

プラトンは政治の世界で出世しなかったですけれども、アリストテレスは出世しました。
中庸が大事と言ったりしてね。
勇気のイデアというかもしれないけど、勇気も行き過ぎたら野蛮になるから、だいたいのところがいいよね、いい感じの按配、白黒思考じゃなくて真ん中ぐらいがいいよね、ということをアリストテレスは言いました。

これはすごく臨床的ですよね。
診察の中でも生きていることの意味は何なんですかとか、自分はどうやったら幸せになれるんですかと言って、どこかイデア論を語るようなやり取りはありますよね。
常に現実的な話をするのではなくて、自分は何をやりたいのか、もっと自分の軸を掘り下げていく、自分の心のコアなところを掘り下げていくというと、やはりイデア論に通じるようなことはよくやります。
究極の幸せとは何なんだろうというのは、人は考えざるを得ないというのも思いますね。

「知」「徳」

あとは、「知」「徳」です。

プラトンは理想主義者なので勉強しろというタイプなんですよ。
ガッツリ勉強しろよ、道徳って大事だよね、哲学は大事だよねという人で、道徳や哲学を勉強すれば心身の健康は保たれるんだというごり押しタイプなんですよ。

そういう精神科医はいますよね。
僕もどちらかというと理想主義者タイプですけど、学ぶことで心は癒されるんだということを、ガンガン押し通したのがプラトンのイメージですよね。

カウンセリングのカルチャーは日本には根付いてないところがありますが、フロイトの精神分析もそうですけど、「学ぶこと」を特に重要視している感じがあります。
それはここから来ているんだと思います。プラトン個人というかギリシャ哲学から来ているところもあるんだろうなとはいつも思います。

臨床的にもそうだなと思いつつ、そうだなと思い込んでるから、そういうデータばかり集めているとも言えるしね。
まあでもこのYouTubeを見ている人はどちらかというとこういうタイプですかね。
学んでいった方が良いと思うタイプだと思うので、同意してくれるかなと思いつつ、でもこれもなんか僕は酷だなと思ったりします。

前に日本の仏教について取り上げましたけど、日本の仏教だと「でもね」と言ったりしますよね。
「だけどそれって難しいよね」と。
一般の庶民に対してはキツすぎない?みたいな感じで言うんですよね。仏教の教えは大事だけど、それってインテリ向けだよね。

一般の人たちは救われないし、そんなこと覚えきれないし、勉強しきれないよね、みたいなことを日本の仏教では言う。
浄土宗と浄土真宗はその流れで、だから信仰が大事なんだよと言ったりしますね。
キリスト教もそういう部分もある。

学ぶことが大事だよというものがあれば、次の瞬間に現実主義になって、いやでも信仰も大事だよねみたいな形になって、またどんどん体系化していって知識になっていってまた元に戻る。

こういう循環のアウフヘーベンというのを人類は繰り返している感じはしますね。
臨床もそうだなと思いますね。精神科の診療、精神疾患のことを知ることが治療につながっていくんだけど、そうするとどんどん息苦しくなっていって、もうちょっと共感してよみたいな話になる。
でも共感だけしていても良くならないから、やはり学ぶことが大事だよねとなる。
でもやっぱり繋がりが欲しいよね、と。
本当にそういうことを思います。プラトンの理想主義、アリストテレスの現実主義、いろいろ考えてしまいます。

今回はプラトンを紹介しました。


2023.5.12

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