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患者さんの自殺による主治医の喪失感と悲嘆

00:00 OP
01:05 どんな精神科医も…
04:13 年間2万人の人が自殺で亡くなる
05:24 僕の経験
07:34 先輩Dr.の気遣い
10:03 家族への説明
11:24 特別扱いはしない

本日は「患者さんが自殺で亡くなった時」というテーマでお話ししようと思います。

このテーマはちょっと苦しいテーマですね。とても苦しいテーマなんですけども、毎週日曜日は「死」を扱っているので、今回は精神科医目線で受け持ちの患者さんを失ってしまった時に、どんな気持ちになるのか、どういうことを考えているのかということを、自分の臨床体験を交えながら話そうかなと思います。

ホワイトボードを書いてから今思ったんですけど、書いてる時はこの話をするのはやめようと思ったんですけど、先にこの話をしようと思います。

どんな精神科医も…

いきなり結論みたいなことを言いますが、どんな精神科医も患者さんが自殺するというのはすごく傷つきます。やっぱり精神科医を自分の仕事に選ぶということは、世間の人たちが思っているほど簡単なことではないと僕は思います。

一見何でこの人が精神科を選ぶんだろうと思う人が精神科を選ぶことがありますけど、そこの裏にはいろんな物語があったりします。
うちの先生やる気ないな、5分診療だな、薬だけ出す先生だなということであったとしても、自殺ということは耐え難いし、患者さんを殺そうと思って診察している人はいないですよね。そう思います。

本当にいろんなことを考えますね。
いろんなスタイルの臨床があって、いろんなやり方はあると思うんですよ。
医師ごとにいろんなやり方があって、僕は自分のやり方と違う先生に対して時々批判的な言い方をすることはありますけど、でもやはり同じ医師として共感することも多いし、彼らがこういうことをどう考えているのかはよくわかります。

でも患者さんが自殺で亡くなるというのは精神科だけじゃないんですよ。
小児の先生だったり、癌の治療をしている時に、自分の受け持ちの患者さんを失ってしまう先生もいるし、産婦人科の先生とか産科の先生も自殺で亡くしてしまうことはあるんですよね。

そういうドクターの心のケアも、僕も臨床の中で決して多くはないですけどしたことはありますし、相談に乗ることもありました。

そういう時って何て言うんだろう、うまく言えないんですけど、うまく言えないなりに自分の心をオープンにして相手の話をオープンに聞いて、共感したり、事実を伝え合ったりすることはあるなと思います。

僕らドクターは神様じゃないので、誰も神様だと思っていないと思いますけど、全てのことができるわけじゃないですね。

年間2万人の人が自殺で亡くなる

日本では年間2万人くらいの人が自殺で亡くなってます。2万人を切ってますね。
僕が医師になった頃は3万人くらいいたんですけど、だいぶ減りましたね。

働き方改革とかいろいろなことが変わって、自殺対策があって、この10年、15年でやはり数を減らすことができたなと思っています。
でも、まだまだたくさんいますね。

全人類の1~2%ぐらいは自殺で人生を終えるんですね。
多いと取るか少ないと取るかさまざまですけども、そういう感じです。
うつ病を患っている人は自殺で亡くなるリスクが7倍とか10倍になります。これもデータの取り方によります。
精神科に通院中の何人に一人が自殺で亡くなるのかというのは、データで持ってくることはできませんでした。
調べてもちょっとわからなかったんですけど、こういうことのようです。

僕の経験

僕も何人かは自分の受け持ちの患者さんを自殺で亡くしています。
そういう時に自分が主治医でなかったらどうだったのかなとか思いますね。そう思いますよね。

僕の力不足とか、自分の臨床が良くなかったなとか、あの時ああいう声を掛けてたらなとかいろいろ思います。

診察の時にいつもより時間をかけたら気付けたんじゃないかなとか、あの時は注意が散漫だったんじゃないかとか、一生懸命100%の力で臨んでいなかったのではないか。他の患者さんのように注意深く見ていればよかったんじゃないかとか、いろんなことを考えます。

個人的に自殺される方で多いタイプは、無口で薬をもらう人が多い印象が自分の中ではあるんですよね。
信頼関係が築けているような築けていないような。
「はい」と言って患者さんも薬をもらって「異常ないです」と言ってすぐ帰っちゃうような人に多い気がしますね。

知らないうちに通院しなくなって、知らないうちに亡くなっていて、時々警察から連絡が来るみたいな感じが多いなと思いますね。

だからやっぱりね、ウザがられるとは言わないんですけど、やはり患者さんとは雑談も含めて少しやりとりをしないといけないなといつも思っていますね。
でもそうするとウザイと思う人もいるんですよね。患者さんで。
ウザイと思ったりとかする人もいるんですけど、でもやっぱり病状を把握するためにはそういう部分も必要だなと思ったりしてやっています。

先輩Dr.の気遣い

研修医の時はなかったかな。でも、先輩の受け持ちの患者さんが亡くなっているとか、チームの患者さんが亡くなることもあったりとか。
でも本当に自分が主治医としてやっていて、その患者さんを何というか、そういう風に亡くしてしまった時とか事故があった時とかに、先輩のドクターが気をつけてくれて飲みに誘ってくれたりとかしていましたね、当時は自衛隊だったんですけど。

僕は自衛隊を辞めてますし、今一人でやってますけど、色々思うことがありますけど、やっぱりそういう時に先輩たちが自分のことを気にかけてくれたことは覚えていますね。
やっぱりそれはなんかね、よく思いますよ。
先輩だなとか思ったりしますね。

医師はいろいろな科の先生いるし、いろいろな先生がいますけど、でも同じ共通のカルチャーを持っていて同じ目標に向かっているという感覚は、実は僕にはあるんですよね。
それはどこに原体験があるかというと、やっぱり自衛隊での経験なんですよね。
思い出すと悲しくなってきて、色々思うことがありますけど。

今でも後輩とか、そういう心理も含めて何かあった時とか、福祉の人があった時は協力してあげたいなとか、自分より年下の人で、こういう同じようなメンタルヘルスに関わっている人は、できるだけ助けてあげたいというのは思いますね。
それはこの時の経験があるからだなと思います。

どういう言葉とか、どういうものが本当に役に立ったかというとあれですけど、あれというかまあいろいろ覚えてるんですけど。
でもその場にいる息遣いとか、一緒にいてくれるとか、何かやっぱりチームなんだという感じは、体で教えていく必要があるんじゃないかなと思います。

家族への説明

全てのケースではないですけれど、家族へ説明することもありますね。
そういう時にはすごくいろいろな言葉をやりとりしますけど、僕らは僕らでやはり家族に対してもっと早く気づいてあげられなかったんですかとか、あなたたちがもし薬の管理をしていればとか、あなた達がもうちょっとね、という思いもゼロじゃないんですよね。

でも、それは相手がこちらに対して思う怒りとも似ているし、今更というか、その時はそれがベストだと思っていたことだってあるだろうし、家族だってね、そういう思いとかやるせない感じは常にあります。

僕はやはり責任がありますよね。
患者さんへの責任があるし、患者さんの家族への責任があるので、やはり本当にこういうことがあった時にも胸を張ると言ったら変ですけれども、責任を持てるような治療をしていきたいなと僕は思っているんです。
僕はというかみんな思っていると思いますけど。

特別扱いはしない

だからある程度できないものはできないと言いますね。できないものはできない。
それはたとえ患者さんが怒ったりとか、嫌な思いをしたとしても、もう最初の段階でできないものはできないというし、嘘は言わない。

嘘で褒めたりとか、嘘で共感することはしませんね。
そういうことは結局ボロが出るんですよね。
これから5年10年付き合うかもしれない人たちですし、それは益田厳しすぎるよと言うかもしれないですけど、それはまあでもできないことはできないと言います。

その患者さんだけを特別扱いすることはしませんね。
その患者さんをよく見ることで、他の患者さんのことを見れなくなるかもしれないし、そうすると結局その目立つ患者さんの陰に隠れた人が苦しんでいるのを見落とす可能性もあったりするので、この患者さんは手がかかる患者さんなんだよとか、この患者さんは時間をかけてあげなきゃダメなんだよ、という先生もいますけど、それは僕はあんまり好きじゃないし言わないです。

外来でやっている限りはこの外来の枠でやって、できるだけ事故がないようにしたいといつも思っています。
薬もね、やっぱり出せないものは出せないですね。
だからよく薬のことでトラブルになることがあります。

もっとくれとかもっと出せとか、何でこうしてくれないんだとかまとめて1ヶ月分出してくれとか。
今病状悪いから出せませんとか言ったりしてやり取りすることもありますけど、でもやっぱり本当に事故が起きた時とか、そういう可能性が万に一でもあるんだったら、なかなかね。

患者さんたちは相性の問題とかいろいろ言いますけど、本当に相性というものがあるのであれば、それはそれでいいんじゃないかなという気がします。

益田の外来に通わなければ良くなるんだったら、益田の外来に通わないという決断をするとか、益田が嫌だからかえって良くなりましたとかいう患者さんがいますけど、まあそれはそれで良いと思います。一つのメタファーとして活用できたということだから、良いんじゃないかなと思います。

あと、私の自由じゃないかとか迷惑掛けないからやってくれとか、そういう患者さんいますけど、僕はあんまりそうは思わないんですよね。
本当にあなたの自由、個人主義というか、自由に全てをコントロールできるかというと、そういうわけでもないし、自由にやっていれば治療がうまくいくというわけでもない。

臨床はいろいろありますけどね、何て言うのかね、まあ何かそういうことを考えますね。
でもそうだね、歯切れが悪くて全然喋れてないですけど、でもまあそういう思いがあります。

僕の臨床のやっぱり原点としては、やっぱり自衛隊の時のことがあるし、それは精神科のみならず、いろんな科を回った時の経験というのはやっぱりあるなと思いますね。
その時の先輩とのやりとりはなんとなく覚えていたりしているという感じですね。

だから、あまり他のドクターの批判はしたくないし、よくする先生とかよくする心理の人もいるんですけど、自分のやり方が正しいとかね。特に多いのは医療系以外の人ですよね。
福祉系も全てじゃないですけど、まあそういう人もいますよね。
でもそういう人たちはどこかこういう辛いことがあったときに、やるせない思いをしたからかもしれない。
そういう時に孤独を強めてしまったのかもしれない。

でも僕の場合はそうではなくてわりとね、かわいがってもらえていた部分、かわいがってもらうキャラじゃないんですよ、僕は全然、生意気だし。でもそんな僕なんだけれども、やっぱり後輩として見てくれていたというところがあったので、それが医療のチームの良さというか、そういう経験がやっぱり今の心の奥底にもあるから、自分はやれているというか頑張れている。
ある意味純粋無垢にYouTubeもやれているというかなんかね、図々しいことをやれているなという気はしますね。
うん、でもまあ、そんな感じです。

ありがとうございます。なんかね患者さんの話をしていくかと思ったら、実際蓋を開けてみたら先輩との思い出を喋りそうになるけれど喋らずに抑えてますけど、そんなことをちょっと思い出して動画にしてみました。
はい、いいでしょう。こういう日があっても。


2023.6.4

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