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なぜ一般人は死を悪いものとみなすのか?

00:00 OP
00:38 死後は
02:32 なぜ悪いものなのか?
06:46 精神科医目線では

本日は「死はなぜ悪いものなのか」というテーマでお話ししようと思います。

「死ぬ」ということは良いものと思わないですよね。
何かBad Thingsというか、悪いものと思いがちですよね。良いイメージは持たないと思います。
それはなぜなのかということを一緒に考えていきたいなと思います。

死後は

ぱっと思い浮かぶのは死後ですね。
死後に「地獄」があるからみたいな形ですよね。
僕が子供の時、小学校の登下校の時に紙芝居屋さんが来て、地獄の話とか、死後地獄に行くんですよみたいなのを読んでいる人たちがいたんですよ。

怖いながら、でも聞くのが好きで、そんなの許されるのかという感じですけど、昭和はあったんですよね、そういうのが。

「地獄」というのは括弧付きで書いてますけど、いろんな宗教によって地獄の定義は違います。
死後に地獄と天国があって、特に地獄があるから死ぬもんじゃないとか、死は怖いものだみたいな教え。

あとは日本の民話でも「黄泉の国」と言ったりね。死はやはり怖いもの、避けるものとして描かれていることがあって。
それがカルチャーなのか、本能的なものから来ているのかあれですけども、怖いものとして人間は本能的に感じるというか、カルチャーの奥深くに根付いている。
だから悪いものと感じるという説ですね。

人間が好む物語やストーリーは集団的無意識から来ていると言ってもいいし、そうじゃなくて、そもそもの脳の構造というか、そこから導かれる普遍性みたいなのがどこかあるんじゃないか。
その普遍性に「死」「死後」というものに対してBADなものがつきやすいのがあるという概念も面白いなと思います。

なぜ悪いものなのか?

宗教の話は日曜日はあまりするつもりはないので、一元論、脳心一体論の立場から、物理主義的な立場からここからお話しします。

死はなぜ悪いものなのかというと、遺された人にとって辛いとか、別れというのが辛いものだから悪いものだと僕らが考えている可能性もあるなと思います。

僕らは生きている限り死を経験したことがないので、死を経験しているのは他人の死だけなんですよね。
他人の死だけしか経験したことが僕らはなくて、他人の死を経験した時に良い気持ちがしたことはないと思うんですね。

悪い気持ち、悲しい気持ち、苦しい気持ち、辛い気持ちばかりだと思いますね。
そういう気持ちになっているから苦しいし、そういう気持ちにさせるものだから嫌だとか避けたい。
だから我々は死んじゃいけないとも思うということですよね。
他の人にも申し訳ないし、迷惑かけたくないというのがあります。

だから死はなぜ悪いかというと、遺された人にとって辛いからだ、という説です。

あとは「死ぬ」というプロセスの中で痛みとか悲しみを帯びるからです。
余命宣告をされた後にすごく悲しくなりますよね。悲しい気持ちになったりするし、周りの人も悲しい気持ちになるから、死は悪いものだと考える。

あと死ぬ直前は痛かったり苦しかったりしますよね。例えば、怪我で亡くなるときとかね。
痛いのはみんな嫌じゃないですか。だから悪いものと思う。そういう説もあります。

あとは死はなぜ悪いものなのかというと、自分という存在がなくなるからです。
物理主義というか、脳心一体論の立場からいうと死後というのは無ですよね。完璧な無。
何もない状態が延々と続く。1万年、100万年と続く。
自分という存在がなくなっていくから悪いものだという考え方です。

自分という存在がなくなるのがなぜ悪いかと言うと、自分がない、考えられない、人に会えないとかありますけど、将来にある幸せが得られなくなる。
死によって全ての可能性が絶たれてしまうので、良いものを得られる可能性も0になってしまうんですよね。だから悪いものと考えるという説です。

あとはですね、面白い話はこれですね。
生まれてくる前も無だったわけですよ。
死んだ後も無なんだけれども、生まれてこなかったらいいというのはわりと受け入れられやすいんですよね。
中絶の問題にしても。
だけど中絶の方が自殺よりも受け入れやすいというのは何なのか。

生まれてこなかったから良かったというのは、自分の中でも受け入れやすいんだけども、死ぬということは受け入れ難かったりするのはあるみたいですね。

人間というのはどこか未来志向で、本能的に未来志向な部分がある。
過去の可能性がなくなることよりも、未来の可能性がなくなることの方が怖いみたいです。
だから過去のことを忘れてしまう、思い出を失ってしまうというのは、ある意味過去の自分を殺していることなので、悲しいことであるはずなのに、そこに対しては人間は案外そんなに悲しみを覚えない。

子供の時のことを全然覚えてないんだよということは、人間はあんまり怖がらないんですよね。
だけど、これから認知症になるかもしれないということは怖がるわけで。何でなんだろうというのはちょっと面白いですよね。

精神科医目線では

精神科医目線の話をします。

何で死が悪いものなのか、自殺を否定するのかと言うと、基本的には良くなることがわかっているから、患者さんたちはこの瞬間が延々と続くものだと思うと言いがちですけど、5年後、10年後は良くなるということを僕らは経験的にも知識的にも知っているんですよね。

状況は変わらなくても、苦しみとか今の劣等感を受け入れて、傷つかないようになるんですよね。

私には恋人も家族もいなくて、こんな私だったら生きていたくないと今の20代のあなたは思っているかもしれない。でも全く同じような状況で、むしろ若さを失っているにもかかわらず、30代になってもっと楽になるとか、40代になるとわかっているんですよね。

そういう意味で苦しみの受け入れ方とか、フラストレーションの乗り越え方も身につけられるものです。
それを僕らは知ってるから、少しでも先延ばしして彼らの成長を待とうとしている。彼ら彼女らの成長を待とうとしているということだったりします。

でも実際、死はどういうものなのか、死ぬのはなぜ悪いものなのかというのはちょっとよくわからないですね。
ただ、やはり自分の患者さんとか、自分の家族、自分自身が死ぬと考えると、すごく肌寒い思いをするというか悲しい気持ちになるし、苦しい思いがしますよね。

日曜日のYouTubeでこれらのテーマで語り合うことで、僕らがどこに向かおうとしているのか、どういうものを得ようとしていくのかというのはちょっとよくわからないんですよ。僕もそんなにわかっていない。

でも少しでも自殺患者さんが減ればいいなと思っているし、こういう動画があることで、月曜日に自殺しようと思ってる人が少しでも減ればなと思いながら動画を撮っています。
どういう風にどこにたどり着くかわからないんですけれども、この場が存在するいう意味をまたこれからも追いかけていきたいなとは思っています。

コメントは僕も読んでいますし、チャット欄も全部確認しているんですけど、ここにいるのは自分だけじゃないと思えることはすごくいいことじゃないかなと僕は思っています。

ということで、死はなぜ悪いものなのか、というテーマでお話ししました。


2023.6.11

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