今日は「ひきこもり、親が死んだら」というテーマでお話ししようと思います。
親が死んだ時、この子はどうするんだろう、どうしたらいいんだろうと困っている親御さんはたくさんいらっしゃると思うんですよね。
精神科医目線でこの問題について考えてみたいと思いますし、アドバイスしたいなと思います。
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精神科の受診、通院の有無
まず確認したいのは、精神科の受診や通院をされているかされてないかです。
なかなか社会に適応できないということとか、家から出れないという状態は、全てが精神科の病気なんだ、症状なんだとは言えないかもしれないですけれど、やはり何かしらの病名がつくんじゃないかなと僕は思います。
僕がよく診ている臨床のケースだと統合失調症の陰性症状もありますけれども、そうじゃなくても不安障害からくる引きこもりのケース、トラウマから来る引きこもりのケース、パーソナリティーの問題から来る引きこもりのケースとか多数あるので、薬物治療が絶対的に必要か必要じゃないかとかではなく受診するということはあっていいんじゃないかなと思います。
通院して病名が付けば使える福祉の制度がたくさんあるんですよ。
例えば、精神障害者手帳とか精神障害者年金ですね。年金をもらえるとか。
あとは訪問看護という形で看護師さんが来てくれるとか、場合によっては親が亡くなったあとはグループホームで暮らすことができる。
グループホームもいろんなタイプがありますし、一人暮らしのところから身の安全を確認してくれるところから、食事が出るところまでさまざまあるので選べるんじゃないかなと思います。というのが1点です。
生活保護、扶養照会と拒否
次に生活保護ですね。
親が亡くなった後に生活保護を受給できるかできないかというのもあります。
結構これもややこしいです。
生きているうちに手続きを取るというのも一つかなという気がします。
役所や保健所に相談して、死んだ後はどうなるの?この子をこういう風にしたいとかそういう手続きを踏むとか考えていくのもいいのかなと思います。
生前に世帯分離をしてしまって、生活保護を受給するところまで繋いであげるというのも一つかなと思います。
家族に扶養義務があるのかと皆さん疑問に思われますけれども、扶養する意志がないということをきちんと伝えれば扶養しなくてもいいわけです。
扶養照会というのがあるんですよ。役所から連絡が来るがあって、これを拒否することもできるし、断ることもできます。
兄弟の仲が悪くて自分たちは絶対嫌だという時もあるんですよね。
だから親が生きているうちに、そこら辺を整理してあげるといいのかなと思います。
あとできれば通院していると兄弟の仲もある程度誤解が解けるんじゃないかなという気がします。
甘えとかではなくやはり病気だったんだなとか、こういう特性があったからなんだなとか、そういうのがわかると思うので、それもいいのかなと思います。
遺産相続の問題まで含めると、弟にちょっと多めにとかいろいろ考えるのであれば、僕はわからないので弁護士さんに相談しつつ決めるのがいいんじゃないかなと思います。
これも生前にやる方がいいと思います。
でもこういうことを言うとやれない人が多いと思いますね。
やっぱり親子だから性格が似てるんですよね。こういうことを言うとちょっと怒られそうですけども、まあ話半分で聞いてください。
子供がなかなかチャレンジするのが苦手、奥手、新しいことに挑戦したり、新しいところに行くのが苦手と言うと、親もそういう人が多いですよね。同じタイプだったりしますよね。
だいたい親子でそうなっていることもあるので、そうするとなかなか弁護士さんのところなんて怖くて行けないなという親御さんも多いかなという気がします。
インクルージョンの達成
今の社会全体が変化としてインクルージョンをしていく。
こういう病気がある人や障害がある人を抱えていく、ということがとても重要じゃないかなと僕は思いますね。
そして働けない人間の価値ですよね。
病気が重いとか色々な理由があって働けない人は絶対に一定数いるわけですよね。
でも、そういう人たちも価値があったりするわけです。独自の視点もあるわけですよ。
これだけ苦しんできたから知っていること、僕がYouTuberとしてやれている、精神科医として働けているのは、こういう人たちがいるからなんですよね。
こういう人たちがいて僕の価値を認めてくれているから、僕は生きていられているというかな。
不思議なんですけどそういうことなんですよね。
彼らの価値だったりする。
僕らがそういうことを通じて知っていることが、健常者の人、病気でない人たちにも知ってもらえると、いろんな人生の別の見方とか角度から考えるきっかけにもなるんじゃないかなと思います。
それが価値だったりしますよね。
現代は色々なことが効率化されてしまって、お金を払えばできるとか、家電を使えばできることが多くなりすぎてしまって、働ける人の水準はすごく上がっちゃってそこに満たない人たちの労働が失われてしまっているんですよね。
だから今後も人類はたぶん働く基準は上がっていくと思いますよ。
働けない人たちというのが増えていくと思いますから。ここら辺の意味とか価値というのももう一回というか、今度は考え直す必要があるんだろうなとかよく思います。
僕は働けない人たちの価値ということは、もう骨の髄まで理解しているんだけども、これを言語化してみんなに理解してもらうのはとても難しいです。
あとよく専門家の人、ひきこもりの支援団体の人たちから言われることです。
我々もよくわかっているんですよ。だから受診してもらいたいんです。家族も受診させたいと思ってるみたいです。だけど、どうしても初診が取れないんです」とか。
「どうしても本人が受診に行ってくれないんです」とか、よく聞きます。
確かにね難しい。予約がなかなか取れないとかね。
あと訪問診療でドクターが行ってくれればいいんだけども、なかなか精神科の訪問診療は都心でも少ないぐらいですから。精神科医が足りていないというか、そういう状況があるなと思います。
あとは神経症圏のケアができるドクターも少ないですよね。
ひきこもりが精神科の領域だとした時に、全員が薬物治療の対象とは思いません。
彼らを言語的に治療していく、言語的介入によって治療していける、そういう技量を持ったドクターが少ないという部分も現実的な事実なのかなと思いますね。
そこも僕らが反省すべきことなんだろうなと思ったりします。
でも僕はどういうことを考えているのかというと、とにかくひきこもりの人たちの親たちがいろいろ情報を共有できるように自助会をつくって、その自助会の中で家族会というのも作っている。
オンライン自助会は患者さんたちが集まってしゃべれる場所を作っています。
もちろん、病気の症状が重い人たちは参加できないですが、働けていない人でオンライン自助会に参加している人で喋ったり、ゲームをしたりしている人たちもいます。
オンラインコミュニティの色々な運営のやり方も研究していきたいというか、やっていきたいなとは思っていますね。
それは僕一人でやっているのではなくて、チームでやってますけど、チームメンバーの人たちがいろいろ考えてくれたり、やっているという感じですね。
中川さん、リョーハムさん以下でやっています。益田は口を出しているだけですね、だいたい(笑)
今回は、ひきこもり親が死んだらというテーマで、どういうアプローチがあるのかを精神科医目線でお話ししました。
社会問題・現代精神医学
2023.7.22