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人間関係がうまくいかない人と親子関係

00:00 OP
02:14 認知の歪みがある
03:34 一番最初の記憶
09:35 感情的にはすっきりしないが
12:35 他者理解のためにも

親を憎むのをやめる方法(益田裕介)
https://www.amazon.co.jp/dp/4046061286/

親といるとなぜか苦しい(リンジー・C・ギブソン)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0C1BMLVXB/

本日は「人間関係が上手く行かない人と親子関係」というテーマでお話しします。

人間関係が上手く行かない人、精神科にかかりやすい人、うつになりやすい人、不安になりやすい人は親子関係が問題になっていることが多いです。
必ずしも全例じゃないですよ。
全例ではないけれど、やはり治療が長引く人、なかなか幸福感を感じにくい人というのは、その背景には親子問題が関係していることが多いです。
今回はその話をしようかなと思います。

なぜこの話をしようかと思ったかというと、取材があったんです。
これ案件じゃないですよ。この動画案件じゃないですからね。

案件じゃないんですけど『親といるとなぜか苦しい』という東洋経済から出された本、この前取材があり、その時に話した内容をまたYouTubeで詳しく説明しようかなと思います。
ネットの記事になると思うので、もし興味がある方は検索してもらったらなと思います。

この本をもとに取材を受けていて、元々僕はKADOKAWAさんから『親を憎むのをやめる方法』という本を出しているんです。
内容が結構似ているので取材があったということです。

親を憎むのをなぜやめた方がいいのかと言うと、それは人間関係が上手く行かないのは親を憎んでいるから、親に対して上手く距離を作れていないからなんです。
これが上手く行くと、親を憎むのをやめることができると、適切に距離を取ることができると、他の人間関係も良くなるということを説明している本です。
今回、そういう話をします。

認知の歪みがある

なぜ人間関係が上手く行かないのかということですが、それは簡単に言うと、雑に説明するならば、その人に認知の歪みがあるからです。
認知の歪みがあるから上手く行かないんです。
だから適切な行動をとれていないんです。
もちろん相手の問題があったり、その時の状況の問題だったりするんだけど、そういう時もあるんだけれど、なぜ人間関係が他の人より上手く行かないのか、トラブルが多いのかというと認知の歪みがあるからです。

だからよく患者さんにも言います。
もし僕が同じ立場だったらそんなに悩まないし、トラブルは起きないんですよ、と。あなたと同じ立場だったらね。
それは僕が医師免許があるとか、僕は男だから、腕力があるから、そういうことを差っ引いて、そのままあなたになったとしてもそういう風には思わないし、不安になったりとかはないんです。
それはなぜかと言うと、僕は認知の歪みがそこにはないからなんですよ。そういう話をします。

あなたは気づいてないかもしれないけれど、認知の歪みがあるんじゃないの、あなたが考えている世界観、信念、価値観にはどこか病的なものがある、歪みがあるんじゃないの、ということを言います。

一番最初の記憶

具体的にはどういうことかというと、人間とは、ということですね、そもそも人間とはどういうものであるかというところが崩れてしまっていることが多いんですね。
つまりベースとなる人間のモデルからずれている、と。
だから人間は悪いものだ、ケチなものだ、意地悪なものだ、いざとなったら裏切るものだ、という風に思っていることが多いんです。
もしくは操作するところがある、自己中心的だ、と思うときがあります。

このロールモデルが狂っていることが多くて、なぜかと言うと、やはりこの親子関係に戻るわけです。
ベースとなる人間のモデルは、やはり親子関係から来ているんです。

それはなぜかというと、親子というのは最初の人間関係だからなんですね、親子だったり、兄弟だったり。
人間とは何かというところを最初に学ぶ相手は親からなんです。
親がこういう人間だから他の人もこうに違いないという風に人間は考えがちなんです。

記憶のメカニズムは大体そういう刷り込みから始まるんですよ。
一番最初にバーンと理解したものから修正するように覚えていくんですね。

一番最初はとても大事で、第一印象って。
例えばお寿司のウニがあるじゃないですか。
最初食べたウニが口に合わなかったりすると、2回目、3回目といくらおいしいウニを食べても何となく警戒しているし、おいしいと思えなかったりするんですよね。

逆に一番最初に食べたイクラでも何でもいいんですが、おいしかったりすると、最初に食べたイクラがおいしかったりすると、次が生臭かったりしても「まあ今回はハズレだったな」と思いがちなんですね。

一番最初に記憶に残ったものをベースに、次の情報が加わっていくようにできいる。人間の記憶は。
それを「新雪の丘」と言ったりするんですが、人間というのは最初に何もないところに一回記憶の跡みたいな、ソリの跡ができるんです。
そうすると次からは同じようなところを辿りやすいというか、同じように思いがちなんです。
これはちょっと雑に説明しちゃいましたけど、もう一回ちゃんと説明しますね。

人間の記憶はどうなっているかというと、繰り返し考えることで記憶力が強化されるんです。
何度も何度も考えることで強化されるんだけど、じゃあ2回目とは何かというと、1回目の影響を受けたものを感じるんです。

最初に食べたイクラがおいしかったりすると、2回目食べたイクラというのは、前回の記憶と新しい記憶があるんです。
2回目食べたイクラは「前回おいしかったな」と前回の記憶が強化されつつ新しい記憶が入っていくんですね、基本。
でも今回はまずかったな、と。

3回目は、もう一回食べてみると、1回目は美味しかったな、前回はイマイチだったな、今回はまあまあだったな、みたいな記憶になるんです。
ここの一番最初がどんどん強くなってくるんですよね。
なかなか第一印象は変えにくいんです。

それを例えると「新雪の丘」といって、一番最初の記憶がどんどん強化されやすいし、そういう風に考えがちだったりするんですね。

そして第一印象に引っ張られて強化されてしまうんですよね。
正確に味を理解することはなくて、最初においしかったりすると2回目食べた時においしくてもおいしくなくても、おいしいものだと思い込んで食べているからおいしい感じがするんですよ。
どんどん強化されていく感じですね。

最初の人間関係で、例えば親が厳しい人だったりすると、次に会った人もなんか厳しいんじゃないかと思いながら接するんです。
厳しいところを探しがちなんですよ。
やっぱり厳しかったじゃないかみたい思って記憶が強化されてしまって、本当は厳しくない人でもその人の厳しいところをピックアップして、それが強化されやすかったりします。

あとは、「転移」ということが起きるんです。
過去の記憶の影響を受けて、その人を捉えやすいんです。
例えば自分の父親がすぐ暴力を振るう人だったら、大人の男性というのは暴力を振るうものだと思い込んで接しちゃうんです。
その結果歪んで見ちゃうんです。

逆に父親というのが甘やかす人、母親が叱っていても、後でこっそり呼んで飴とかくれるとか、そういう甘やかす父親、優しい父親だったりすると、部長がいくら怒ってもどこか優しくしてくれるんじゃないかとか思って、ちょっとなめてたりするんですよね。
「いやいや、そんなこと言って部長」みたいなことが言えるわけですよ。
部長も「仕方ないやつだな」「お調子者だな」と思って、ついつい甘くしちゃうみたいなところがありますから、そういう形で人間関係というのは最初の親子関係の影響を強く受けます。

もちろんロールモデルだけの問題じゃなくて、パーソナリティ障害や発達障害の問題、PTSD、トラウマの問題等があって認知が歪むということもあるんですが、ロールモデルというのは結構大きい要素だなと思います。

感情的にはすっきりしないが

最初の親子関係をベースとして、他の人間関係もできるという話なんですけれど、これを説明していくと、患者さんも比較的すぐわかってくれることが多いです。
よく話になるのは、頭では理解していても感情的にはすっきりしません、頭では理解してるんだけどやはりなかなか治せません、みたいなことです。

頭で理解した上で、じゃあ行動でも補正できるようになったとして、感情的にまで腑に落ちるのか、感情的にはわだかまりがなくなるかというと、実は臨床的にはそこまで向かえないことが多いです。
つまり、目が悪くなったらメガネをかけ続けて生活するように、頭で理解すれば実生活では問題がなくなることがあるんです。
感情的にはイマイチなんだけれど、実生活では問題がなくなってくる、人間関係もとりあえず表面的には上手く付き合えるになっていくということが起きます。

人間関係は上手く行ってるけど感情的にはすっきりしません、となったら、ここから先の治療は進みますかと言われるとなかなか進まないことが多いです。
目が悪い人が常に眼鏡をかけながら生活して、本当に目が良くなって死を迎えるということはないわけじゃないですか。
同じように、一度ついた跡、記憶の問題というのは頭で理解しても、どこか寂しさとか感情とか、わだかまりというのは残りながら墓場まで持っていくということは起きます。

治療のゴールを感情的なわだかまりというところにしてしまうと上手く行かないことがあります。
感情的なわだかまりではなく頭で理解し、生活面では問題が起きないというところなんだ、と理解することはとても重要です。

よくやりがちなのは、まずは感情からスッキリさせたい、今の目の前の人間関係を良くする、とりあえず仕事ができるというよりも、まず私は気持ちを満たしたい、幸福になりたいんだということだと上手く行かないです。
治療が上手く行かないことが多いです。

そうじゃなくて、もちろん感情を満たしたい、満たすために生きているんだと思うかもしれないですし、仕事が上手く行くために生きているわけじゃないんだと言うかもしれないんですけど、やはりそこをゴールにしちゃうとあまり上手く行かないので、どこか感情的なわだかまりは常に残るんだ、それはある種仕方ないんだ、と思いながら頭で理解していく、そして生活面を変えていくということを重視した方が良いですね。
でもそうしてると、そのうち感情的にも解決することもありますから、運が良ければね。
そういうものだと思うと良いんじゃないかなと思います。

他者理解のためにも

いや私、親子関係は問題なかったからこの話はいらないです、興味ないですね、という人もいるんですけど、これはNGだと僕は思っていて、相手を理解するためには、親子関係が上手く行かなかった人もいる、そして、そういう人たちはついつい愛着の問題として不適切な行動を取ってしまう、ということを他者理解のために必要だったりするんですよ。
だからこの知識はいらないとかバッサリ切り捨てるのではなくて、この知識もきちんと身につけておく、こういう視点も持っておくことがとても重要ですね。

特に部下と接するとかそうした時に、部下の人が自分に対して親を転移させていることってあるんですね。
上司である私自身をまっすぐに見ている、バイアス抜きで見ているのではなく、彼らの親子関係を重ねてこちら側を見たり反発したり、過度に理想化したりするので、そういう意味で部下と接したり、教育していくことが重要ですから、親子関係がどういう問題を引き起こすのか、どういう病理を生むのかを理解しておくことはとても重要かなと思います。
それは自分の理解のためだけじゃなくて、他者の理解のために必要だったりするということですね。

ということで今回は、人間関係が上手く行かない人と親子関係、というテーマでお話ししました。

これで興味を持った方は、このKADOKAWAが出している『親を憎むのをやめる方法』という本もよかったらご購入ください。


2023.8.29

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