本日は、神経発達性、いわゆる発達障害ですね。最近は神経発達症って呼び名が変わったんですけれども、いわゆる発達障害と自殺というテーマでお話ししようと思います。
神経発達症の人は、一般の人よりも自殺リスクが2倍なんですよね。
一般人の1%強が亡くなるということなので、発達障害と診断された人の2%~3%位が自殺で亡くなるということになります。
神経発達症(発達障害)
神経発達症というのは、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症、学習障害の3つから成り立つんですけれども、これらは合併することが多いです。
診断基準を満たさない形で合併することもありますね。
いわゆるASDとADHDグレーゾーンとか逆にADHDとASDグレーゾーンとかあったりします。
神経発達性の中の疾患同士でも合併することが多いんだけれども、2次障害として他の疾患を合併したりすることもあるということですね。
その前に神経発達症の説明をした方が良いかもしれないですね。
ASDは、こだわりが強かったり、コミュニケーションが苦手だったり、感覚過敏があったりするタイプですね。
心の理論と呼ばれるものが苦手で、いわゆる相手の立場で何かを考えたりすることが苦手な人たちが多いです。
相手の経験とか知識を自分のものとして利用するのが苦手で、コミュニケーションが苦手な人たちが多かったりします。
ADHDは、注意欠如多動症と言われるもので、集中力が保てないんですね。
集中力が保てないので、不注意だったり、衝動的に動いてしまったり、いろいろなトラブルが起きてしまう病気です。
これらを合併することが多いんですよ。
両方の要素を持つことが多いということです。
学習障害は、算数だけできないとか、漢字だけ書けないとかですね。
靴ひもだけ結べないとか、何か特定のものだけが苦手だったりするということです。
他のことができるのに、そこだけの学力はちょっと低いみたいなイメージですね。
色々な病気を合併することが多いですね。
例えば、うつ病とか不安障害とか依存症ですね。ギャンブル依存、アルコール依存、違法薬物、性依存、摂食障害、自傷、いろいろあります。
こういうものを合併しやすくて、合併するが故にこれらの困りごとから自殺を検討してしまう人が多かったりします。
あと、ADHD傾向が強い人は、反抗性障害とか行為障害とか薬物依存症とか、ちょっと悪い人、ワルになってしまうパターンも多いんですね。
ワルになってしまうパターンもあって、ワルになっちゃうが故に、色々な社会的な問題に巻き込まれたりすることで、にっちもさっちもいかなくなって自殺を検討してしまうこともあります。
あとは事故死ですね。事故死の割合も多いんですよ。
溺れてしまうとか、交通事故に遭ってしまうとか、そういうのも多かったりしますね。不注意だからね。事故をしてしまうのもあるだろうし、過集中で別のところに集中しているから事故を起こしてしまうとかもあるのかなと思います。
様々な要素が絡む
神経発達症は多様なんですけども、症状とかその人の個性が故に多様だというよりも、それ以上に周囲の環境が色々あってその相互作用によって多様に見えることが多いです。
例えば、神経発達症+虐待のパターンとか、神経発達症+貧困のパターンとか、ヤングケアラーのパターンとか、ひきこもり、孤独のパターン、差別とかのパターンとか色々あるんですよね。
生い立ちの影響によって色々な要素が絡み合って、その人の障害は出来上がってくるので、こういう要素が絡むとやっぱり生きていても嫌だなとか、生きていることは辛いなと思いがちですね。
例えば、子供の時に酷い虐待に遭ってたとか、そうすると人間不信になっていて、大人になってからも人間に対して、友達、恋人、上司や部下に対して心を開けなかったりする。
ヤングケアラーで家族の世話をしなきゃいけないというタイプだったりすると、過度に奉仕しすぎちゃう。職場へ行っても自己奉仕の精神が強すぎて、何となく自分のために生きられなくて、利用されて苦しい思いをしてしまうこともある。
ひきこもりになってしまう、孤独になってしまう。社会とうまくいかないから引きこもってしまって、社会進出ができなくなってしまい、自らノイローゼになっていくというか、自らマインドコントロールしていくような感じになってしまうんですよね。
ひきこもっていると周りとの接触が絶たれて、自分で自分を追い詰めることになってしまって苦しいというパターンもあるし、あとはコミュニケーションがうまく取れないので差別されちゃうとか、仲間外れにされちゃうとか、馬鹿にされちゃうということが結構多いんですよね。
その結果、苦しくなってしまう。
自己肯定感が下がって死にたくなってしまうパターンもあります。
あと、そもそも繋がりを感じにくいので、そういう嫌な思いをしても良い繋がりもあるじゃないかと思われるかもしれないけれども、嫌なことばかり覚えて良い繋がりを忘れてしまうというか、なかなか記憶に残らないんですね。
優しくされるとか、仲が良い友達との関係とか、あまりそういう繋がりは感じにくくて、暴力をされた、意地悪をされた、馬鹿にされたとか、そちらの方だけ感じやすかったりします。
嫌な記憶は残りやすいんですよ。
それがフラッシュバックのように思い出されたりするんですね。
辛かった時のことを生々しく何度も何度も思い出すので、忘れることが苦手で、何度も何度も思い出すので、「もうこんなのやってらんないな」ということで死を考えることが多いようです。
発達障害の治療は結構難しいんですけれども、丁寧にやっていく必要がありますね。
うつとか2次障害の目立つところだけを治療しようとか、不注意のところだけを治療して薬だけ出せばいいよというのではなくて、やっぱり全体的な治療がとても重要ですね。
特に自尊心の低下ですよね。
色々な人から馬鹿にされたり、差別されたり、意地悪なことを言われたりしてきているので、すごく自尊心が低下していることがあります。
そこをどう回復させていくのかも治療の肝かなと思います。
でもなかなか難しいですね。
他の障害であれば、主治医と患者さんの優しい温かい人間関係の中から学ぶことがあって、治療に繋がっていくこともあるんだけども、繋がりがそもそも感じにくい人たちに対して繋がりを作ろうとしても、うまくいかないこともあったりしますから、そういうやり方だけではなくて、発達障害の人に合わせた治療法、自尊心の回復のし方とかテクニックを治療に持ち込む必要があります。
得意を伸ばすとか社会常識を伝えていくとか、ティーチングをしていくこともとても重要だったりします。
今回は、神経発達性と自殺というテーマでお話ししました。
死について
2023.9.10