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最近多い臨床疾患

00:00 OP
01:23 開業当初は
03:21 社会の変化
05:17 周囲の人の発達障害
07:16 性被害、性依存、宗教2世、フェミニズム問題

本日は「最近多い臨床疾患」というテーマで、最近こういう患者さんが多いよという話をしようと思います。

精神科の病気は、遺伝的な要素×社会ストレスの掛けあわせによって発症することが多いんですね。
もちろん遺伝的な要素が大きい疾患もあれば、逆に遺伝的な要素よりも社会的な要因の方が大きい病気もあるんですけれども、基本的にはこの重ね合わせで起きるということです。

なので、社会的な影響によって病気の多さとか来る患者さんの悩みや病気の感じは全然違うんですよ。
地域によっても結構違うんですよね。
その病院やクリニックによっても集まる患者さんの質が違ったりするので、多様で結構面白い。そこが精神科の面白さでもあります。

今回は、最近はどういう患者さんが多いのか、どういう社会的な問題を抱えていて悩んでいる人が多いのかをお話ししようかなと思います。

開業当初は

開業当初は働き方改革以前で、どちらかというと過労の問題が多かったんです。長時間残業だったり。
後は精神科への偏見ですね。なかなか通院できない。
通院していることがバレたら家族からやめろと言われるとか、会社で差別されるとか、そういう時代でした。

多かったのは過労から来るうつ状態、適応障害とか、皆が忙しくてピリピリしてそこで起きるパワハラから来るうつ状態、そこから来るセクハラのうつ状態とか、これが多かったですね。

その当時、働き方改革前は、クリニックに夜9時とか10時くらいに来て、その後また職場に戻って働くとか、仕事をぎりぎりまでやって、夜はみんなでお酒を飲みに行って、お酒を飲みに行った後にまた新入社員とか仕事がある人は二次会に行かずに職場に戻って働けとか。
お酒を飲んだ場所で上司から女の子はお尻を触られるとか、セクハラされた後にまた職場に戻れとかね、そんなことがありました。そんな時代でしたね。
だからそれで苦しくなってうつになってという人をよく診ていた感じです。
ただ、働き方改革が始まってそういう患者さんは減ったんですよね。

最近多いのは、今はやっぱり発達障害ないし発達障害のグレーゾーンが多いですね。
これは色々言われます。医師によって診断基準が違うんじゃないかとか、医師によって診断の幅が大きいんじゃないか、狭いんじゃないか、あの先生は発達障害と言っていたけど次の先生は言ってくれなかったとか、逆もしかりですよね。
どっちがいいんだという話もあります。

社会の変化

色んな見方がありますけど、ここら辺は臨床でよく悩む話です。
また後でも説明しますけど、僕も何なんだろうなということを考えてきたんですけど、ずっと考えてるんですけど、やっぱりその会社だったり、職場だったり、家族だったり、社会全体がすごく能力主義になっているし、自己責任論の時代になっているし、市場主義になっているなと思いますね。

長い時間一緒に働こうとか、残業してでもいいから頑張ろうという時代から、最近は残業するな、一人で頑張れ、誰にも迷惑をかけるなみたいな感じに移っている。
そこでうまくこなせないと、自分は能力が足りないんじゃないか、自分はダメなんじゃないかと発達障害を疑う。
他の人はできるのに、自分は能力不足なんじゃないかと全部発達障害や知的障害の問題に変わり、周りからそういう風に言われたり揶揄されたりとかしつつ、受診つながることが多かったりします。

そこで精神科医から「いやいや、あなたは障害じゃないよ」と言われたりすると患者さんが更に落ち込んで、じゃあどうしたらいいんだと行き場を失って自分を責めてうつがどんどん悪化してしまうとか、そのまま引きこもりになってしまうことも多かったりするなと思います。

でも本質的には両方あって、医師があなたの問題じゃなくて社会の問題だみたいな形で社会を批判する気持ちもよくわかるし、一方でこういう能力主義みたいなものの中でも、うまく適応するために薬をどう使うのかとか、その人の認知の歪みをどう治していくのかも精神科医として取り組む問題なのかなという気はしますね。

周囲の人の発達障害

あとこの問題の中で、本人だけでなくて周りはどうなのということが結構言われるようになりましたね。
最初は自分の発達障害の問題だったのが、発達障害の知識が普及するにつれて、「あれ?これって自分の親が発達障害だったんじゃないの?」みたいなことで受診したり、悩みを打ち明ける人も多かったりします。

親からすごく虐待を受けていたとか、モラハラ的なことを受けていたとか、親から教育的な虐待だったり、親からストーカーみたいなことがあったということがあって、うつっぽくなって自己肯定感が下がってしまった、今もうつ状態であるという人はいます。

でもそれを掘り返してみると、親のことを発達障害とわかることで、親はこれだったかもと理解が進んだり、ネグレクトだと思っていたのたんだけれども、愛されていないからネグレクトされてたんだと思ってたんだけど、実は発達障害の不器用さでお弁当作ることができなかったお母さんだったとか、そういうものもわかったりしています。

あとはカサンドラ症候群ですね。
旦那さんが理解してくれないとか、パートナーが共感してくれないとか、そういうことで孤独感を抱えていたりとか、愛されていないんじゃないかと思っていたりしたのが、実は旦那さんは発達障害だったと。
それがわかってきたということですよね。

じゃあどうやって付き合っていくのか、離婚しなきゃいけないのか、この障害とどう付き合えばいいのか悩み始めるとか。
あと子供の問題ですね。子育てのしにくさはしつけが悪いとか言われるんだけれども、いろいろな人から言われてうつになっているけれど、しつけの問題じゃなくて、子供の発達障害の問題だったとかね。

でも、それがわかると救われた部分もあるし、一方でじゃあここからどうしたらいいんだろうとか、どんなにしつけてもうまくいかないのかしらとか、そういう悩みが増えたりとかそういうこともあります。

性被害、性依存、宗教2世、フェミニズム問題

あとは、ジャニーズの件を取り上げてからうちのクリニックで増えたのは、性被害報告とか性依存の問題です。

これも今までアンタッチャブルだったと思いますし、メディアの中ではあまり語られなかったんですよね。
語られなかったから抑圧されて皆自分で言えなかったんですよね。苦しいと言えなかった。
性的被害というのは10年も20年も続く。トラウマがずっと続くと思えなかったんですよ。

だけど、今はそれを言い出しやすくなってますよね。
ジャニーさんからそういうことを受けてからもうずいぶん経つわけです。10年、20年経つし、亡くなってからも結構経ちますよね。今更何で言うんだみたいなことを言う人もいますよ。

だけど多くの人は「苦しかったね」という雰囲気になってきましたよね。
この結果言いやすくなって、実はと受診されることが多いです。
パニック障害と診断されてたんだけど、実はそれはフラッシュバックだったんですよとかいう人も結構多い感じです。
臨床していて、そういう人をよく見ます。

被害者だったんだけど、被害者から加害者に変わっているパターンもいるし、性依存みたいになっている人もいる。
誰かを攻撃するわけじゃないんだけれども、今度は何て言うかな、ずっとポルノを見続けなきゃいけないとか、Hなものを収集しなきゃいけないという形の性依存の人も最近告白しやすくなっているなという感じですね。

あとは安倍さんの事件ですよね。
安倍さんの事件をきっかけに、宗教2世の話題も取り上げられやすくなったのかなと思います。

宗教2世で虐待を受けていたとか、親とうまくいかなくなってしまったもしくはそこを抜けたんだけども、今度は社会から抜けた。そういうコミュニティから抜けたことで、孤独感を高めていてすごく苦しいとか、宗教2世に関わるうつも語られやすくなっているし、その結果受診につながりやすくなったような気がします。

最近はこういうものがうちのクリニックだと増えたなという感じがします。
今まではネットやSNSがなくて語られにくかったものがいっぱいあるんですよね。それが語られやすくなっているということですよね。

それは動画になったからだと思うんですよね。
動画だから伝えやすくなってきているということもあります。それで広がったっというのがあります。
テキストの時は広がらなかったのが、動画になったことで広がったということでもあるのかなという気がします。

あとは女性問題ですよね。
フェミニズムの問題というのも何かよく考えます。
昔は良妻賢母でなきゃいけないと抑圧されていた女性が、最近だと働ける女性、仕事もできて育児もできて、そして旦那とは男友達のように一緒に遊べる女性が求められていて、そうしなきゃいけないという形でやられている。

よくあるのは専業主婦はダメだよ。働けないとダメだよみたいな。働けないと結婚しないよ。
働きながら子育てできるなら妊活してもいいけど、働きながら子育てできないなら妊活させられないよ。俺は子供いらないよという形ですごく苦しい女性。
家事だけやってたら自分はダメなんじゃないか不十分じゃないか。
家事と子育てしかしていない私はダメな人間なんじゃないか、働けないとダメなんじゃないか、もっと頑張らなきゃいけないのに頑張れていない自分を責めている女性も結構多いなと思います。

それは良妻賢母を押し付けられた時代と結構似ている。
これも新しい能力主義、自己責任論至上主義の形という気がします。
その中で、女性という立場の弱い人たちが抑圧されているっていうのも、現代で見る要素かなという気がします。

今回は、最近多い臨床疾患というテーマでお話ししました。


2023.9.14

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