不登校の小中学生 過去最多の29万人超 いじめ加害者への対応は | NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231004/k10014214891000.html
本日は「不登校の親のうつ」というテーマでお話ししようと思います。
先日、小中学生の29万人が不登校だというニュースが発表されていました。
僕も思うところがあって、今回動画を撮ろうと思います。
僕は大人を診る精神科医であって児童を診ていないんですよ。ただ、高校生以上は診るようにしているという感じです。
だから、あくまで子どもの精神科医ではなく、大人の精神科医です。
ただ、親御さんを見ることが多いんですよ。
不登校の子どもの親、不登校で子どもが病院に行ってくれなくてどうしたらいいんだろうと思っているうちに、うつっぽくなってウチに通っている、そういう親御さんをよく診ているので、そういうドクターからの意見として聞いてもらえたらなと思います。
この動画も不登校の子どもを抱える親御さんに向けて、今あなたの状況はこういうことじゃないですかということを解説してみたいと思います。
不登校の理由
小中学生の29万人が不登校ということです。
だいたいこれが3%ぐらいなんですよ、計算してみたら。
小中学生の人数はだいたい900万人くらいなので3%前後です。
不登校になるにはある程度理由があって、例えば子どものうつ病。
それからよくあるのは強迫性障害です。手洗いなどの強迫症状がいろいろあって学校に行けない。
うつ病なんだけれども、身体の方に出る。
お腹が痛い、頭痛という形で気持ちよりも身体症状に出るパターンもあったりします。
あとは発達障害(ASD/ADHD/LD)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動性、学習障害、ここら辺で学校でうまくいかなくて二次障害的にうつになってしまって行けない。
あとは境界知能とか知的の問題ですね。
知的な問題から学校の勉強についていけず不登校になる。そういうこともあるかなと思います。
病態としてはひきこもりに結構似ています。
ひきこもりと言うと、「いやいや、コンビニとかには行っているよ」「親と会話するよ」「外に出てるよ、だからひきこもりじゃないでしょ」と思う人もいるかと思いますけど、ひきこもりは物理的に外に出られないとか、それでひきこもりというわけではなくて、社会的な接点が少ないということもひきこもりの定義だったりします。
広い意味でのひきこもりかなということもあります。
あとはいじめですね。
いじめが原因で不登校になるケースも少なくないです。
いじめはもうちょっとパーセンテージが多かったんですよ。計算をしてみると。
5~6%くらいの子たちがいじめに遭っているということでなので、これがきっかけで不登校になることも珍しくないだろうなとは思いますね。
いじめも行き過ぎたら犯罪ですからね。
いじめる子どもたちにもベースに発達とか虐待の問題があったりすることも多いんですけども、いじめの問題。
加害者と被害者がいるということですね。被害者側で不登校になることも珍しくない。
こういうことがつながって自信がなくなっちゃうんですよね。
自信がなくなって、自己否定が続いてしまって、なかなか外に出て行けないということがよくあるんじゃないかと思います。
これがどこまで言語化できているかはわからないですけども、多くの人が思っているより、僕らは社会的な生き物なので、自分の自由にやったらいいとか、自分の意志で行きたくないなら行かなくていい、それも一つの生き方だと思いたくなるんですけども、それはあまり良くない。
やっぱり本当は行きたいんですよ。多くの人はね。
「本当に行きたくないんだよ」みたいな変わり者は珍しくて、多くの人はやっぱり社会に溶け込みたいし、溶け込めないことで苦しんでいることが多いかなと思いますね。
います時々、社会に馴染むのそんなに好きじゃない人みたいなね。
自信満々でこんな奴らに構ってられないなみたいなタイプも時々いますけど、そういうのはレアですね。
本当にレアで1%にも満たないと思うので、今回は無視していいんじゃないかなと思います。
親は悩む
こういう子の親はやっぱり悩むんですよね。
どういうことで悩んでいるのかというと、親自身が子どもに対して虐待をしてしまっているパターンも珍しくはないし、どこまでしつけたらいいのか、どこまで甘やかしたらいいのかというバランスがわからなくて、困惑しているケースも多かったりします。
例えばベースに発達障害や知的な問題があったりすると、普通の子と同じことをさせようとしたり、普通の子と同じことを求めると、ついついやり過ぎになっちゃうことが多いんですよね。
かといって甘やかすといつまでたってもできないので、やっぱりしつけは必要だったりする。
福祉の人、学校、精神科の先生はあくまで他人だから、本当の意味での家族でないとやれないようなしつけはやらない。
やらないし、やれないんですよね。
だから家族は矢面に立たされて苦しいだろうなとは思います。
もちろん、そこまで考えずに感情的に怒ってしまうとか、感情的にやり過ぎてしまう親というのもいるとは思いますけど、そういうこともあるなと思います。
親自身が何かしらの精神疾患を患っていることもあります。
二次障害的になってしまうこともありますけど。
うつ病、人格障害、発達障害の問題、あとカサンドラ症候群ですね。
旦那が発達障害で一緒にいて苦しくなって、こっちもうつになってしまって、それが家族病理の問題として子どもに悪影響を与えているパターンもあるだろうし、逆もあります。
母親が発達障害で旦那がうつになっているカサンドラのパターンもあるだろうし、両方発達障害で互いに共感してもらえないということでうつになるパターンもある。
いろいろあるなと思います。
あとはよくあるのは無理解ですよね。無理解。
例えば旦那とかパートナーからの無理解。
「お前が悪いんだろ」「お前がしつけてないから」「お前がちゃんとやってないから子どもが不登校になっちゃうんだよ」とか。
自分の親、義理の両親とか親戚から「あなたが悪いんでしょ」「あなたの育て方が悪いんでしょう」と言われてしまうとか。
あと学校とか児相からもそういうことを言われることは珍しくないですね。
理解ある親御さんも学校の先生もいるけれども、同時に理解がない学校の先生もいますよ。
児相もしかりです。
精神疾患の理解は結構難しいので、プロの中にもきちんと理解できてない人が紛れていることも多いです。
児童精神科医もちゃんと診れていないこともあったりします。
あと転移ですね。
転移の問題というのもあって、子どもに寄り添い過ぎている。
自分が子どもの時に辛い思いをしたからとか、今も現在進行形で親を憎んでいる人たちがいますよね。
そういう人たちがついつい無意識、もしくは意識的に、苦しんでいる子どもの親に対して厳しく当たってしまうことはあるんですよ。
「あなたがちゃんとしないからでしょう」と。
それはすごく攻撃的に言うこともあれば、何となく違和感があるような形、なんかこの人はちょっと嫌な感じで言うなみたいな間接的なパターンもあります。
全ての人が親子問題に対してクリアでいられるわけではなくて、親子問題に対して何かしらの問題を抱えていると、無意識のうちに転移という形で先入観を持って、もしくは何か嫌な言い方をしてしまうこともあります。
そういうプロの人も珍しくはないかなと思います。
僕もよく思いますけど、中立であることは本当に大事ですね。
僕も自分自身の過去がありますから、トラウマはなくはないわけですよね。
いろいろな経験もしてきていますので、ついつい自分の過去の記憶が診察中に出てきて、それが患者さんに影響を与えることもあるんですよね。絶対あると思いますね。
だけど、できるだけないようにするために中立であるべきだし、できるだけそういうことが起きないように、自分の心の状態は常に健康でいなきゃいけないということです。
だから治療者自身が治療を受けておくことはとても重要なんですけど、そこまで至ってないことが多いです。
つまり親というのはうつになりやすいんですけども、親自身がきちんと治療を受けておく。そして親自身が悩みから解放される。
悩みがあったとしても、それをきちんと抱えられる、ネガティブ・ケイパビリティ、悩みに振り回されない感情に振り回さないで、自分の軸をしっかり持っておくことがとても重要だったりします。
ついつい子どもはこうしてあげたらいいんだろうとか思いがちなんですけども、まず自分なんだよね。
自分がきちんとしている、自分がきちんと正しい姿勢で正しい態度で臨めている、冷静にいられていることが重要です。
親が冷静にいられたらいくらでも動けるんですよね。
だから本当に基本は大事で、親がちゃんと基本を維持できている、冷静なポジションにいられることはとても重要だったりします。
手前みそですけども、最近やっているメンタルヘルス大全の総論、セルフケアをマスターしてほしいです。
常にセルフモニタリングをし続ける、自分の今の疲れ具合はどうか、感情的になっていないかを常にチェックできる。
そして主観2.0をマスターしていく、主観2.0に近づけていく、偏見をなくしていく、柔軟な考えができるようになっていく。
そして、感情コントロールができるようになっていくことをマスターしてもらいたいなと思います。
急にマスターはできないので、少しずつ日々マスターに至るような鍛錬をし続けることが大事です。
YouTubeもそうですけど、別に毎日見ろとかそういうわけではなくて、チャンネル登録してどこか心の中に精神科医療を、何かしらのネットワークに引っ掛けておいてくれたらなと思います。
別に僕の動画じゃなくてもいいと思うんですよ。渥美先生とか松崎先生とかいろいろいますから、ちょっと引っ掛けておく。
月に一回も見なくてもいいと思いますよ。
だけど、何かそこの世界に触れておく、時々見てもらうということをしてもらうと、自分の軸とかセルフケアをしやすくなっていく。
時々興味が湧く時があると思うので、そういう時に見てもらって学んでもらえれば、子どもの気持ちもわかるし、何より自分の気持ちもわかるんじゃないかなと思います。
自分のことがわかれば、相手のこともわかるようになります。
己を知り、相手を知れば百戦危うからずなので、特別なことはそんなにないんですけど、心のネットワークの片隅に僕らを引っ掛けてもらえたらと思います。
社会問題・現代精神医学
2023.10.8