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試行錯誤をしない人の心理 (メンタルヘルス大全 2章各論、社会問題、ひきこもり)

00:00 OP
01:29 代表的な4つ
02:33 治療

本日は「試行錯誤をしない人たち」というテーマで、ひきこもりの治療やひきこもりの話をしようと思います。
難易度は3くらいですね。

ひきこもりのことをだいたい知ってるよとか、基本知識があるよという人たちに対して、ちょっとマニアックな話をしてみたいと思います。

トライアンドエラーは大事です。
失敗するかもしれないけど挑戦してみることは、人間のみならず動物だったら全て大事なことですね。
ただ、それがなかなかできない人たちというのがいます。
怖くてできないとか、元気がなくてできないとか、そういう人たちがいて、結果的に外に出ていくことができなくなってしまう。社会と交わっていくことができなくなってしまう人たち。
それがひきこもりということでもあったりします。

ひきこもりの人たちは試行錯誤することが本当に苦手だったりします。
別にひきこもりだけじゃなくて、試行錯誤しない患者さんたちは結構いるんですけど、精神科の患者さんはしない人が多いんですけれど、どういう疾患が代表的なのかという話をします。

代表的な4つ

まず不安障害ですね。社交不安障害や全般性不安障害とか不安が強い人は試行錯誤は苦手です。
あとは不安がゆえに、強迫的になって、そこにこだわってしまう人もなかなかできないということです。

あとはPTSDとかトラウマがある人。
トラウマがある人は試行錯誤ができない、回避してしまうとか、麻痺があってできない。何かやろうと思ってもできなかったりしますね。

あとうつ病の人ですね。
うつ状態の人はエネルギーがないので、そもそも試行錯誤するエネルギーが足りないという感じです。

あとは一風変わって、発達障害ですね。特にASDの人。自閉スペクトラム傾向が強い人はこだわりがあるので、自分のルーティンを守りたいんですよ。なので試行錯誤をしない。

代表的なのはこの4つのパターンかなと思います。

治療

どういう風に治療していくのかというと、うつはわかりやすいんですよね。エネルギーが足りないのでできないので、療養と薬物治療が特に大事です。
だから薬物治療をしっかりしてあげることが大事です。
病気のせいでできないので、病気が良くなったら試行錯誤をまたできるようになりますから、まずうつの治療が大事です。

うつでひきこもりになっている人、統合失調症でひきこもりになっている人、幻覚妄想でひきこもりになっている人、双極性障害でひきこもりになっている人も一定数いるのですが、いわゆるひきこもりのメインのイメージではないんじゃないかなと思います。

よくあるひきこもりらしさは、不安障害、回避性パーソナリティ障害、トラウマの人ですよね。こういう人たちは自信がないんですよね。自信がないからトライアンドエラーができない。
そして自信がないから挑戦をしてないから、スキル不足に結果的になっていたりもします。
スキル不足だから自信がないという悪循環が生まれてたりします。

治療をどうしていくのかというと、支持的に対応していくということですね。
どうやって自信を回復させていくのか、失敗を恐れなくさせていくのか、失敗してもいいんだよと思えるようになるのかを対応していく。
医療だけでは限界があるので、福祉を導入する。就労移行支援、就労継続支援などの福祉の現場を利用することで、少しずつ支持的に対応してもらって自信をつけてもらうことも重要かなと思います。

ただ、福祉を避けてしまう人が多いんですよ。
その背景には、家族からの強烈な「やれ」という感じだったり、叱咤激励というか、ある種の教育的な虐待というか暴言とかがあったりします。

家族は、トライアンドエラーができなくて自信がない彼らをすごく歯がゆく思っている。
背景には能力主義だったり、弱い人への差別意識があったりします。
だからこそ福祉となかなかつながらないということもあるし、親がそういう感覚があると子供もそういう感じがあって、福祉に行くなんて自分は負け犬だという証明なんだとか、優しくされる価値なんかないんだ、でも優しくされているということは、そっちの方が惨めじゃないかみたいな形でよりひきこもってしまうこともあるなと思います。
ここら辺の意識改革から大事です。

社会は能力主義だったり、差別意識というものがありますよ。
そういう間違った常識もあるので、これを疑っていくこともとても重要かなと思います。

あとこだわりが強い人ですね。
発達障害傾向がある人たちは、やはりこだわりを崩していくという治療というか、援助も必要だったりします。
発達の援助ということで、本人はある種不快かもしれないけれども、そこに介入していって変えていくことが必要だったりします。
教育とか発達は不快なんですよ。不快で葛藤を生む行為なんですよね。

勉強が楽しいということはないんですよ。勉強はやっぱり少々不快なんですよね。
益田先生は勉強が好きじゃないかとか思われそうですけど、そんなことはなくてやっぱり頭使うし疲れるし嫌ですよ。
失敗したりテストで悪い点取ったりもして、悪い点取ったら自尊心が傷ついたりしますし、誰かに負けちゃうこともあるしバカにされることもありますから辛いんですけれども、でもそういう葛藤の中で成長が起きるというのは事実なので、そこに介入していくことが大事だったりします。

ただ、一方で個人の自由の問題もあるわけですよ。
介入していっていいのかという個人の自由との兼ね合いもあるので、親の理想を押しつけているだけじゃいけなかったり、治療者の理想を押し付けているのも良くないなとは思います。

ここのバランスは結構難しいんですよね。
支持的に対応して本人を尊重しすぎるだけだと変化が起きない可能性もある。
かといって変化を促そうとし過ぎると、失敗が増えて自信がよりなくなってしまうこともある。
このバランスがめっちゃムズいという感じですかね。

あとは、きちんと薬物治療はできるだけやっていく。
薬はこういう複雑な議論に比べたらただ飲むだけなので、薬の治療をやれるならやった方がいいんじゃないかなと思います。
あとは心理的な介入ですよね。
カウンセリングだったり専門技法を駆使しながら試行錯誤を支えていく。
試行錯誤をするように促していくことは、ひきこもりの治療においてはとても重要かなと思います。

今回は、試行錯誤をしない人たちというテーマで、主にひきこもりの治療をメインに扱いました。
ひきこもりの人以外にもこの概念は大事だと思うので、是非勉強していただけたらなと思います。


2023.10.13

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