一般社団法人OSDよりそいネットワーク
https://www.osdyorisoi.jp
本日は「ひきこもり治療の問題点と解決策」というテーマで、ちょっと難しい話をします。
この動画は講演会が終わった後に撮っています。
9月24日に一般社団法人OSDよりそいネットワークさんの依頼で講演会をしてきたんです。
豊島区の区民センターホールみたいなところでやりました。
250人くらい集まってくれて、そこで講演をしたということです。
講演会の後に社団法人の人たちとお話をして、今どんなことに問題意識があるのか、どういうサポートを求めているか、ということを話してきたので、この場で共有したいなと思います。
コンテンツ
診断にこだわる必要はない
ひきこもりの治療が難渋している点として、まず親や子の理解というのがないというのがあります。
親が、子供が精神疾患である、障害がある、ということを認められないということです。
精神科医から見ると、9割以上がひきこもりというのは精神疾患があるんじゃないかなと思います。
家にこもっていて、それが生き方だというよりは、どちらかというとうつっぽくなっていったり、悩んでいることが多いので、そういう意味で病気なんじゃないかなと思うんです。
まず最初に、うちの子はひきこもりなのかひきこもりじゃないのかという定義にこだわったり、うつ病なのかうつ病じゃないのか、不安障害なのか不安障害じゃないのか、発達障害なのか発達障害じゃないか、この定義にすごくこだわってなかなか先に進めないということがあるみたいです。
例えば、うちの子は確かに会社では働けていないけれど、好きな時にコンビニへ行って自分の好きなものを買っているから、これはひきこもりというんじゃなくてただ怠けてるんじゃないの、遊んでいるんじゃないの、と思う親もいるみたいですね。
厚労省がひきこもりの定義を作ったりしているんですよ。
社会参加がどうしてできないのか、そこに違和感を感じている、色々あるのですが、我々プロからしてみると、そこの定義は別にこだわる必要はないんじゃないかなと思います。
結局、今何に困っているのか、実際具体的に自分たちはどこに困っているのか、そしてどういうサポートがあればより幸せに暮らしていけるのか、ということを考えていけばいいので、最初に診断がつくのかつかないのか、ひきこもりに当てはまるか当てはまらないかはこだわる必要はないんじゃないかなと思います。そのことでまず最初トラブるんですよ、ということを言っておられました。
この動画でもそこにはこだわる必要はないんだよ、診断や定義の細かいところにこだわることは全くないよ、ということです。
あとはレッテルが貼られるということが、やはりなかなか受け入れられないということも多いようです。
ただ、わからないですよね。
地方だと違うかもしれないし、東京に住んでいると他人の目とかあまり気にならないですが、何となく僕も田舎出身なのでわかります。
ただそこにこだわるのではなくて、利を取りに行く、必要な福祉を取りに行った方が僕はいいんじゃないかなと思いますし、僕ら全体としてはそういう社会的な偏見を今後も無くすための努力をし続けなければいけないなということを意見を共有しました。
親の理解・子の理解
あとは親が子育てに問題があったんじゃないか、自分たちが間違ってたんじゃないか、自分たちの責任なんじゃないかと思って、思いつめているパターンも多いみたいです。
そうかもしれないし、そうでないかもしれないですね。
別に間違った子育てというか、少々厳しく言ったって育つ子は育つわけなので、親はそこまで気にしなくてもいいんだけれど、そこに自分の責任感を感じるがあまり、責任感を感じれば感じるほど助けを求めてはいけないんじゃないかと思うみたいです。
でも僕らからしてみると、子供に問題がある場合、親に問題があるのも、だいたいみんな問題ありますから。
別にだからと言って、「いや、あなたのところは問題ありますね」とかそういう話はしませんので、気軽に相談してもらえればいいんじゃないかなと思います。
だいたい本人たちが思っている以上にこちらは問題だと思っていません。
遺伝的な要素もあるし、環境的な要素もあるので、本人の自由意志で間違ってしまったというよりは、なるべくしてなってしまって不運が続いた結果なんじゃないかと僕ら精神科医やプロは思います。
その点も気にせずに受診してもらえればなと思います。
親が理解があっても、今度は子供に理解してもらえない。
子供が理解してくれないので、なかなか受診に至らないケースというのもやはりあるということです。
初診の予約もなかなか取れないし、取れたとしても、子供が一緒に来てくれないということで悩んでいる親御さんはたくさんいるということのようでした。
医師の理解
次に病院には何とか行きましたよといっても、医師がちゃんと理解できているかどうかというのもポイントだったりします。
ひきこもりのことがよくわかっていない医師もいます。
これが精神疾患による影響だということがわかっていない人、本人は楽しそうにしているし、困ってないと言ってますよね? じゃあ生き方なんじゃないですか? そもそも精神科には来ない方がいいですよと言ってしまう医者も多いわけです。
全員とは言わないですよ。
でも3割ぐらいはこういう人なんじゃないかなという気もします、僕は。
3割もいるのかという感じがするかもしれないですけど、だから親御さんたちは困っている人が多いと思います。
薬だけ出すのが医師の仕事だと思っている精神科医もまだまだたくさんいるんじゃないかなと思います。
人生全体の理解をしていけるドクターはどれぐらいいるのか。
発達障害と診断して、でも薬は副作用があって飲めない、じゃあこの人たちが医療の援助が不要かというと、そういうわけじゃなかったりするわけですよね。
うつ病で家を出られない、だけど薬を飲むと副作用で飲み続けられない、じゃあ彼らが本当に医療の援助が不要かというと、そういうわけではもちろんなかったりします。
とにかく何かしら医療のネットワークに繋がっていけば、福祉を使えたりするので、こういう時に何か医師側でちょっと冷たくされたり、ひきこもりのことがよくわかってない人だとすごく傷つくし、家族ももう無理だと思っちゃうんですよ。
ひきこもりの人、子どもたちは試行錯誤は苦手ですけど、親も決して得意なタイプじゃないんですよ。
あそこはダメだったからもっと別のところへ行こう、そういう風に思えるタイプの人たちじゃないことが多いわけです。
引っ込み思案の人が多いわけですよ、遺伝的にも。
そういう人たちに向けて、じゃあ理解ある医師はどれぐらいいるのか。
そういう人たちのリストが欲しいよねということは言われたし、求められました。
手帳、年金など
OSDというのは、「親が死んだらどうしよう」の略なんですよね。
現実的にひきこもりの人全員が薬物ないし言語的介入(カウンセリング)で、みんなが社会復帰できる、社会に適応できるとは、僕らもそんなに楽観的に考えてるわけじゃないです。
ただ、今手に入る福祉、今ある制度は十分利用したいなと思っているわけです。
そのためには手帳や障害年金が取れるような体制を作っておきたいというのがあります。
でも医師によってはこれは書かないよって言う人もいたりするんですよ。
年金なんか渡さないよ、年金なんか出したら却って怠けるんじゃないかと言ってしまうドクターもいるので、そういうことにならないようにマニュアル、教育ノウハウをしていく。
医師も忙しいし、なかなか話が聞き取れなかったり、一回ちゃんと聞くんだけれど患者さん側が準備できずに言えなくて、「いや大丈夫です」とか言ってしまって流れてしまうケースもあるんですよね。
そうならないように必要な情報があるので、それが繰り返しチェックできるようなマニュアルを作っていくといいんじゃないのかな、という話をしていました。
あとは将来的には往診、病院になかなか行けない場合、ドクター側からそこに行って診断を付ければ、往診ができればこういう風に行くんじゃないかというのがあったので、こういう往診ができるシステムを作れたらいいよねという話をしたり。
あと行政的な話ですね。
政治家とのコミュニケーションの問題ですけど、ひきこもりが精神疾患などそういう障害名がついていけば福祉に繋げられるし、受けられる行政サービスがあるわけです。
十分じゃないかもしれないけれど、あることにはあるんですね。
日本はそんなに福祉が充実した国ではないので、どちらかと言うとアメリカ側ですね。
福祉が充実している北欧側の価値観というよりは、福祉がどちらかと言うとあまり充実していない、自己責任論が強いアメリカ型の国家なんですけど、それでもやはりあるものはあるので、それが利用できた方がいいんです。
もしひきこもりというのが生き方、彼ら個人が選んでいる生き方であれば行政は動けないんですよ。
これが病気やそういう障害だということがわかれば、行政も動きようがあるので、ここら辺のところも偏見を減らしていければ、必要な人に必要なものが届くんじゃないかなという話はしたという感じです。
こういう成功事例をできれば作っていって、それを溜めていって教育ノウハウとして蓄積できれば、ひきこもりの人たち、ひきこもりの親御さんたちがどうしたらいいのか、動きやすいのかなという話をしたということです。
僕も協力できることは協力したいと思っています。
まずは医師ですね、自薦他薦は問わないのでもし良かったらコメント欄に入れてもらえると、ひきこもりに理解のある病院をリストアップできると思うので、ご協力いただきたいなと思います。
そしてこの動画を上げて反響を見つつ、またそれをOSDさんにフィードバックしたりして色々考えていけたらなと思います。
OSDさんも手弁当でやっていますから、僕なんかこうやってYouTubeの広告収入とか企画の利用をさせてもらってて、逆に僕の方があくどいんじゃないかとか思われそうですけど、やれることはやりたいなと思っております。
今回は、ひきこもりの治療の問題点と解決策というテーマで講演会をしたので、その時に出た問題点などを皆さんにシェアしました。
またどういう形がいいのかを一緒にディスカッションしつつ考えていきたいなと思っていますので、引き続き動画を通じて皆さんと意見交流できたらなと思います。
社会問題・現代精神医学
2023.10.14