今日は編集の池口さんに来てもらっています。
今後池口さんと相談しながらメンタルヘルス大全をつくっていこうと思っているんですけど、その前にちょっと予行練習としてクリエイターの人の悩みとか編集をされているいる池口さんが、作家さんとかと喋っているときに、こういうことで困ってる人が多かったよみたいな話をしようと思います。
池:よろしくお願いします。
まずは作家さんとかで一番多い、ライターさんもそうだと思いますけど、一番多いのはやっぱり書籍業界、雑誌業界だと「書けない」みたいな。締め切りがあるけど、書けないとか。
あるいはこれぐらいの分量を書かないといけないけど、要素が出てこないとか。
あるいは書けたけれど、クオリティが不安だとか、自分はこれでいいかなと思うけど、クライアントなり編集者なりが納得してくれないとか、そういう部分は結構追い詰められて。
益:書けない人問題ですね。さっき池口さんと少し喋っていたんですけど、問題が漠然としていたりして、一個一個問題を細かく分けて一個一個問題を泥臭く潰す人って少ないよねみたいな話をしてたんですよね。
池:確かに。
益:だからこれも一個一個分解する。なんで書けないんでしたっけ?
池:頭の中で書けると思っているけど、パソコンに向かうと書けないみたいなことはやっぱりあると思うんですよね。
益:頭の中のものが言語化できない。
池:今ちなみに言語化の本とか結構売れてますね。
益:他には?
池:単純に、1ヶ月で書けるだろうと思っているけど、時間が取れないとかもありますね。
益:時間管理が下手。
池:あとは自分の完成イメージと編集者なりクライアントの完成イメージが違ったみたいな。それで手戻りが増えるみたいなのもあると思います。
益:コミュニケーションの問題か。
池:そんなものですかね。
コンテンツ
■言語化
益:頭の中のものが言語化できないという問題に関していうとどうなんでしょうね。
精神科的にはよくあるのは知識経験のサンプルがもう少ないというか。そもそもバリエーションが少ないんですよね。
池:なるほど。
益:この人ってどういう人なんだろうとか、これからどうすればいいんだろう、仕事をどうしたらいいんだろうといった時に、そもそものバリエーションとかサンプル数が少なすぎて、そこからでは何も生まれないよねみたいなことが多いので、まずこれを増やさないといけないですよね。土台が少ないっていう。
これが少ないかどうかっていうのはよく考えますね。
池:確かにライター講座で私も登壇することあるんですけど、まず量をやることは大事だよねという話はすることありますね。
益:あとその疲れているから最初の一歩が出ない時は今どきChatGPTを使った方が早いんで。ChatGPTで出だしを作ってもらって、もう一回全部書き直すとか。
池:はいはいはい。
益:イメージを掴んで。ChatGPTが三流のライターだとしたら、それをちょっとアレンジしたら二流になるわけじゃないですか。今日は二流で仕方ないかなみたいな。一流にしたいけど、1.5か2でいいなって。
ChatGPTに一回書いてもらってからもう一回清書し直すのでも良いのかなとか思います。
池:それは仰る通りで、結構私も編集もライティングもやるんですけど、出だしが決まらないので進まないとかはあるので、三流かどうかは別としてChatGPTに冒頭をやってもらうことによって弾みが付くというのはあるかもしれない。
益:あとはこう弱いのはあれが弱いですよね。ロジカル構造。ロジックの構造を作るのが苦手な人は多いですよね。ライターの人とかでも。
作家さんだから自分より皆ロジカルに考えるというか、ロジック構造を一回作って、ピラミッド構造とかを作って、その中からちょこちょこ作ればいいんだけど、最初のデータベースのロジック構造が全然できていない人がいたりする。
論理学とか学ぶとかなんじゃないかなという気がしますけどね。すごく酷な言い方ですけど。
池:書籍だとひょっとしたら目次を作るみたいなところがロジック要素なのかもしれないですね。
益:ちゃんとMECEになってない人多いですもんね。MECEで書けない人って多いですよね。同じ本を読んでいても。
池:そうですね。やっぱり話してる通りに文字起こしとかすると、MECEになってないというか。大きさが違う話が展開されることは、私もそうですけど、やっぱりよくありますね。
益:僕お笑い好きなんですけど、島田紳助さんが喋りがうまい人というのは喋る途中で映像が見えているって言うんですよね。映像が見えているから、作り話みたいなところでも、あれはどうなってんだよと言われたら、いやいやあそこにはバナナがあったんだよとかパッと言えるみたいな。
それと同じでやっぱりもう見えてるんですよね。見ようと思ったら見えるみたいな。僕もそうなんですけど。
喋っていないのは見てないからであって、別に見たら見えるから喋れるみたいなことなんですよね。
だからこういうロジック構造がまず準備が足りないというのもあるのかなって気がします。準備しておけば、そこから小出しにすればいいというか。
書けない人に対してなんかダメ出しが強くて、なんか苦しくなっちゃったかもしれないけどね。
池:もやもやしてなんとなく不安というケースが多いと思うので、こう言語化していただけると。
益:自分なりのデータベースを作るとか、そうですね、紳助さんも言っていましたね。お笑いの方程式を作らなきゃいけないって、自分なりの。
お笑いっていうのも目に見えないし、正解があるわけじゃないんですけど、自分なりの体に合った方程式というか、法則を作ってあげて、それを応用していくっていうのがとても重要だったり。落語の世界とかもそうですけどね。どんな世界もそうですけど。
正解はないんだけど、科学みたいに正解はないんだけど、科学も正解じゃないんだけど、でも一定の法則とか経験則を言語化してあげるっていうのは大事ですね。
■時間管理
益:時間管理に関して言うと、恐らくADHDの人が多いんじゃないかなという気がします。そもそも。ADHDの人が多いので、不注意があったりして時間管理が下手とか。
あと若い人でそういうトレーニングを受けていなかったりとか、ついつい衝動的にやっちゃうとか、あと遊びとかが楽しくて起きてしまう。
10代から20代の人ってまだ脳が完成されてないんですよね。
だから何かこう衝動に負けちゃうとか、欲望に負けちゃって、ついつい時間管理ができないとか。あと10代の人は朝弱いとか、脳科学的にわかっているので、できないとかいうのがあるかなと思いますね。
なのでこれに関して言うと、しっかりトレーニングを積む必要があって。
筆が乗っているからというよりは、規則正しくやるしかないんじゃないかなと思います。
池:有名作家さんとか小説家の方で、毎朝この時間は必ずやるって決められて大御所になられた方とかもいますけど、それを見習う感じですね。
益:うん、だいたいそうですよね。
池:あと追加すると、時間管理と一緒かもしれないですけど、仕事を受けすぎちゃうケースとかはあるかもしれない。
益:これもちゃんと管理してないということだから、マネジメント能力が低いというか、そういう経験が足りないのかもしれないですね。
あとADHDの人とか発達障害傾向の人で、そういうマネジメントができないとか、そういうのもクリエイターに多いですからね、発達系は。
だからマネジメント、セルフモニタリングをしっかりするってことなんですよね。
池:なるほど。
益:今の自分の脳の疲労具合はどれぐらいなのかとか、今やるべきことは何なのかとか、目的や目標は何なのかというメンタルヘルス大全の第1部のセルフモニタリングのところをしっかりマスターしてもらうという感じかなと思います。
■コミュニケーション
益:最後はこれですね。完成イメージの相違とコミュニケーションの問題ですよね。コミュニケーションスキルがやっぱり苦手な人が多いですよね。クリエイターの人で。
苦手だから一人の世界というか、内的世界に関心があって、作品を作っていったということなんでしょうけど。やっぱりコミュニケーションは大事なんで、トライアンドエラーでやっていくってことなのかなと思いますね。
発達の人ってASDとかADHDの人ってやっぱりなんだかんだコミュニケーション苦手な人が多いんで、若いうちは特に。
あと社会との衝突に慣れていない人が多いですよね。
池:それはあると思いますね。そもそも例えば編集者さんって仕事が忙しいからライター側とか、クリエイター側からどこまで喋っていいかわかんなくて、ちょっと怖くなってコミュケーションを取らなくなるケースなんかもあるかもしれないですね。
益:普通の会社員だったら、新人研修のときに上司からこっぴどくやられるんですよ。誰でも。
僕も研修医のときやられたし、自衛隊になってもやられてましたけど、最初ってそんなもんだし、別に開業したって最初は事務員の人にやられるとか、税理士さんから叱られるっていうかね、そういうのはあるじゃないですか。このやり方じゃダメだよって否定されるって。
そういうもんなんですけど、この社会との衝突っていうのが作品を出すとき初めてのときとか多いんじゃないかなって気がしますね。
池:そうかもしれないですね。
益:若いんで、初めて、しかも自分の内的なものを全部出した衝突だから、すごく傷つくんでしょうね。全否定されたような感じはするんでしょうけど。
本来だったら会社員だったら服装がダメとか小出しに指導されるじゃないですか。全否定っていうよりは小出しに否定されるんですよ。
この口調じゃダメですよとか、この名刺の渡し方じゃダメだよとか、なんかまあちょこちょこちょこちょこやられるので一気に来ないからいいけれども、作家さんとか出した時に初めて、社会との外圧にぶつかっちゃうから苦しいのかなという気がしますね。
池:あと、クリエイターは作品と自分を同一視するケースが強いような気がするんですよね。そうすると自分を否定されているというのはあるかもしれないですね。よりショックが大きい。
益:だからここも分離ができてないんで、分離ができてないというのも魅力なのかもしれないけど。やっぱりこう、ぶつけられてもなお怯まない自分がやっぱり大事ですからね。
精神分析でエディプスコンプレックスと言って、親との衝突を指すんですよ。自我ってこう、風船みたい、内側からあるリビドーと社会から来る外圧、超自我と言うんですけど、リビドーと超自我のぶつかり合いのここにできるのが「自我」なんで。
池:なるほど。
益:風船のこの何て言うのかな、ゴムの部分でしかないんですね。だから薄っぺらいんですよ、自我は。それが外圧に負けちゃうとしぼんでいっちゃう。かといって自分の中のリビドーだけを重視すると、過剰に広がって中身がなくなってしまう。薄まっちゃって。
池:なるほど。
益:この外圧との兼ね合いをうまくバランスを取るというのが「自立」なんですけど。最初はこれがうまくいかないんだろうなという。
池:その図は、確かに、中心に自我があると思いがちですけど、その外側なんですね。
益:そう、縁みたいなイメージなんですよね。
だから精神分析って無意識が中心で、意識っていうのはその無意識の上にちょっと乗っかっているものだという風な言い方をするんですけど。
まあ確かに臨床していると自由意志って本当にないなって感じがするので、こういうイメージなんですけど。社会との衝突に慣れてないんだろうなって気がしますね。
あとそうそう、これ言わなかったんですけど、言語化できない時にトラウマ体験があるから避けちゃう人が結構いるんですよ。幼少期のトラウマとか親との対立の結果、トラウマがある人、PTSDの人とかって回避するんですね。
池:なるほど。
益:だからその話題を避けるようになるんですよ。
ここを喋りたくない、これは喋りたくないというのがあるから、それを避けてやろうとするとまっすぐ歩けないので、結果的に言語化しにくいみたいな。
池:なるほど。
益:結構多いんじゃないかなと思いますね。
池:普通にすれば良いものをそこが欠落しちゃうから論理展開も難しくなる。
益:欠落というよりは避けているんですよね。あるのに、そこをまっすぐ行けないから避けて変な道を通ったり、遠回りするから何かまどろっこしい、第三者から見たら何かすごく野暮ったく見えるんだけど、本人からしてみるとトラウマを避けるための必死の努力だったりするっていう。
これも結構多いんじゃないかなと思いますね。クリエイターの人には。
メンタルヘルス大全
2023.10.30