本日は「子供の精神科初診について」というテーマで、色々自分が思っていること、知っていること、考えていることをお話しします。
精神科に子どもを受診させたほうがいいんじゃないかとか思っている親御さんは、たくさんいると思うんです。
このYouTubeを見ている人の中にもそういう親御さんはたくさんいると思うんです。
だけどなかなか予約がとれない、迷っている、あと学校の先生や夫は問題ないよと言うから行かなくていいのかなとか、色々なことを考えている人がいると思います。
でも一回診てもらいたいなと思っている人が多いと思います。
とりあえず一回診てもらって、うちの子は変わっているのか変わってないのか、白黒はっきりさせたいなと思っている人は多いと思うんです。
でも実際、なかなか受診できないんです。
もう初診を受け付けてませんというところも多いだろうし、取ったとしても2ヶ月後か3ヶ月後というところは多いと思います。
受診できたとしても、1ヶ月に1回、5分診療、短いところも多いと思いますし、通院も薬が少ないから、薬はこれだけだからと言って2~3ヶ月に1回であるところも珍しくないかなと思います。
結局、診断書や手帳、そういうもののために2~3ヶ月に1回だけ行っているけれど、もう子どもも行かないと言うから親だけ行っていて、何のための精神科なんだろう、と思っている人も珍しくないという感じです。
何でこういう状況なのかということですよね。
精神科医の本音を少し話そうかなと思います。
コンテンツ
子どもの難しさ
まず、子どもの診療は結構難しいです。
大人の診療よりも難しいということで、ドクターは少ないんじゃないかなと思います。
子どもの今の精神状況、子どもの心を診るのは、やはり大人の心を見るよりも難しいです。
会話でわかっていくことが少ないですし。
あと成長速度が結構違うんですよね。
子どもによって全然違うので、そこの違いがわかりにくい。
あと社会背景によって結構違うんですよね。
どういう教育を受けているかによっても全然違うだろうし、その子が持っている社会的な問題も結構違ったりします。親の様子が違ったりとかして。
というのが色々あったりするので、どこからが疾患なのか、どこからが教育的な問題なのかということの見定めも難しかったりします。
そこに加えて、10代という思春期に入ってくると、脳自体がやはり特殊なんです。
10代の脳はすごく特殊で、すごく怒りっぽかったり、衝動的だったり、感情に負けやすかったりもするだろうし、他人の目がすごく気になるんですよ、その頃の子というのは。
急激にアイデンティティが生まれたり、葛藤しているときなので。
まあ普通の子も悩んでいるんですよね。
より激しいので、これを病気とするのかしないのか、自分たちがどこまで関与すべきなのか、色々悩ましいですね。その兼ね合いが難しいなと思います。
親の問題もあるので、親への心理教育をどうするのかということもあるだろうし。
親も若かったりしますからね、子どもの親というのも。
20代、30代、40代で若かったりしますから説明をなかなか理解してもらえないということもあるし。
あと連携が必要になることも多いんです。
児童相談所や学校など色々連携しなければいけないこともあったりするので、なかなか難しいですね。
精神疾患のみならず医療はどこかですね、挫折を伝える場所でもあるんです。
あなたはガンですと伝える場所も似ていますよね。
スポーツ選手に、あなたはケガがあるのでどれぐらい休まなければいけない、手術しなければいけない、場合によっては引退ですよ、と伝える場所でもあるので、責任が重いですよね。
その責任を負うには、やはりきちんと勉強しなければいけないですよね。
そうするとやはりなかなか育たない。育てるのが難しいですね、医者を。
なかなか数も増えていかないだろうなと思います。
昨今のコスパ重視の医療の流れでは、美容皮膚科とか産業医とかわからないですけど、本当に臨床現場の責任の重さが苦手な人たちもいるので、うん、という感じですけどね。
そう言ったら、「お前、産業医のこと馬鹿にしてるのか」「美容皮膚科だってちゃんとした医者だろう」と言われそうですけど、別に揶揄するつもりはないんですけれど、でも何となく重さが違うと僕は思っています。
そういう意味で、医者も少ないし、こうなっているのだろうなと思います。
将来的にはもうちょっと親の心理教育や多施設連携も、AIやITの力を借りてもっと効率良くしていくことで、もっと上手く回るシステムを考えていかなければいけないんでしょうけど、それは先の未来の話なんだろうなと思います。
人間だけでやろうとすると、人間が大事なんだ、人間でやってもらうべきなんだ、医師を増やすべきなんだと言うと、そう言えばそうなんだろうけれど、あまりにも現実的でない答えを期待しすぎているような感じがしてしまって、じゃあそれをどうやって増やすのか、診療報酬を増やせばいいのか、など色々な問題があるんじゃないかなという気がします。
益田の場合
じゃあなんで益田がそう思うのかというと、僕個人の話をしようかなと思います。
僕は防衛医大卒なんですが、2010年卒なんです。
2010年卒で、そこから元々防衛医大なので、そのまま陸上自衛隊に入隊するんですが、もちろん陸上自衛隊なので、子どもを診る機会はほとんどないです。
隊員さんの子どもとかは一部診てましたけど、たまにね。でも擦り傷や怪我、風邪などです。
自衛隊にずっといたので、その間もないですね。
もちろん小児科を研修で回るとか、精神科の指定医、専門医を取るときに、児童の入院症例か外来症例をいくつか持たないといけないので一定期間は診ていましたけど、あくまで一定期間で生業にしていたわけではないので、資格はありますが充分なトレーニングとは言い難いなと思います。
そういう事情がありました。
自衛隊を辞めて2018年に開業するんですが、辞めた後に民間病院を経て2018年に開業しました。
開業当初は、どちらかというと認知症の人が多いんじゃないかなと思ってクリニックを開業した思いがあります。
だから、あまり子どもを診るということは考えてなくて、まだまだ自分も精神科医として一人前になったばかりというか、まだ一人前ですらないかもしれないですけど、だったので、社会的にそういう問題があるということまではまだ視野が広がっていなかったです。
2020年に、子どものクリニックに週1でバイトに行こうかなと思っていたんです、勉強するために。
開業して2年経つ中で色々なものが見えてきて、自分が臨床家として今後どうすべきなのか、社会にどういうことが求められているのかと考えたときに、もうちょっと勉強したいなと思って、子どものクリニックに週1回行こうかなと思ってたんです。
自分のクリニック+週1どこかで勉強させてもらいに行くことをしようと思っていたんです。
思っていたんですが、このときにコロナになるんです。
コロナになるといっても僕がなったのではなくて、世の中でコロナが流行ったんです。
コロナが流行って、週1回で子どものところへ行ったり、色々と移動するのは相手側にも迷惑を掛けるし、こちら側の患者さんやスタッフにも迷惑を掛けるなと思ったんですよね。
当初きちんと厳密にマスクしなさい、という感じだったじゃないですか。
そういう中で不特定多数の人に僕が会いに行くというのは変だと思ったんです。
だからちょっと一回話が流れたんです。
その後、何年か経つうちに、もうちょっとこういう風に安全性を配慮すればいいんじゃないかとかわかってきましたけど、当初はそんな感じでした。
そうこうしているうちにYouTubeをやったりしてましたね。
YouTubeが伸びてきたので、こっちの方のが忙しくなってしまって、もう子どもの方にバイトしに行けるという感じはなくなってるという感じです。
2023年の今すごく忙しいという感じになってしまったということです。
僕自身のキャリアを見ても、やはり子どものことをやっていく、子どもを専門に持つという機会がなかったなと思います。これは益田のみならず、他の精神科のドクターも同じような状況なのかなという気はします。
今経営者でもありますから、医師を雇うとか子どもを診る体制を作るとか、そういう病院のシステムを作るということを考えてみると、なかなか難しいなと思います。
連携するシステムを組まなければいけないし、そういうことをすると本当にビジネスになるのか、ちゃんとお金が回るのかということも考えなければいけないので、結構難しいなと思っています。
もちろん僕自身がまだ子どものことをしっかり診てないというのもありますけどね。
今は高校生以上は診ていますが、思春期も診ていますけど、ガッツリ児童は診てないということになるかなと思います。
何が難しいのか
何が難しいんだろうということをちょっと書きますけど、まず子どもの脳という独特の傷つきやすさ、子どもの傷つきやすさというのが大人とは違うし、そこの配慮。
理解力の低さ、そういうのも考えなければいけない。
先程言ったような10代の特殊性ということも加味しなければいけない。
あとは子どもの能力と親の能力ですよね。
親の能力にも色々な差があるので、養育能力は結構違いがあるので、そこも加味しなければいけないし、そういう親に対してどういう心理教育をすべきなのか、自分が悪いと思ってなかったりするときに、いやあなたの問題でもあるんですよ、ということを直面化していく、その難しさがあります。
親の未熟さの問題もあります。
それが問題だと思っていなかったり、夫婦喧嘩をしていることは子どもには関係ないだろうとか。
いや迷惑がかからないように、私たちは子どもを愛して遊んだりしているんだということを言うんだけれど、それが振り回すことになってしまうこともあるわけで、それが子どもの心にどれだけ悪影響を与えるのかということをどういう風に説明するかは結構難しい。
あとは政治的な意味や本人の生き方の問題とか、そしてそれらはまだ日本社会のにおいて世論としてきちんと伝わってないんですよね。固まっていないので、なかなか伝えにくかったりします。
ある意味、君たちが悪いんだよということを突き付けすぎて、親自身がうつになってしまうということになりかねないしね。
その背景に貧困ストレスの問題があったり、社会の問題があったりとかあるだろうし、虐待の問題、虐待の連鎖の問題もあったりします。
こういうことが生まれてしまう背景には、やはり核家族の問題、地域との繋がりがないなど、色々な問題が隠れているので結構難しいんですよね。
そういうことを抜くと、こういう状況でできるのか、色々なことを考えていかなければいけなくて、子どもの問題は難しいなとは思ってますね。
自分がもしやるとしたときに、こういうことをどうやって扱えばいいんだろう、それをビジネスとしてどうやって持っていけばいいんだろう、というところが何となく答えが出てないし、そういうのが僕自身の考えです。
他の精神科医の先生ももちろんそう思っていると思いますけど、体が足りないという感じです。
どういう風にすれば今の子どもの問題、いじめの問題、虐待の問題を解決していけるんだろうということが、わからないというのもあります。
でも結局結論を言うと、自分ができることを考えていくと、僕自身はYouTubeというのが唯一無二なので、YouTubeを通じて色々社会や親御さんに対して啓蒙啓発していく、そして問題点を明らかにしていくということなんだろうなと思います。
そして繋がりを作る。
こういうところに、僕がシンボルとしていることが色々な繋がりを生むだろうし、今後の治療の中でも、学校の先生同士の話し合いの中でも、YouTubeの先生が言っていたのと一緒だよね、今自分たちは同じようなことになっているよねとなると、ちょっとずつ楽になる、良くなっていくんじゃないかなとは思っていますけどね。
子どもの精神科初診問題について、社会問題でもありますから取り上げてみました。
あとね、やってました、僕。
子どもを直接診ることはそんなにできてないですけど、家族会をやっているんですよ。
オンライン自助会や家族会をやっていますし、そういうところで色々やったりしているので、もし良かったらそちらの方もご参考ください。
メンタルヘルス大全
2023.11.23