今日は発達障害についてざっくりとした解説をしてみようと思います。
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発達障害とは
発達障害とは「知能水準に問題はないが、凹凸がある」と僕は定義しています。できることとできないことの差が激しく、日常生活に支障がある状態です。知能水準に問題がないというのがミソで、知能水準が全体的に低い知的障害(精神遅滞)とは違います。
・学校の勉強はできるけれど、なぜか片付けができない
・学校の勉強はできるけれど、人とコミュニケーションがとれない
このような障害があるのを発達障害といって研究してきました。
そもそもは、1944年にハンス・アスペルガーという人が「勉強はできるのに、人とコミュニケーションがとれない」という症例を発表したところから始まっています。2000年に広汎性発達障害という病名で広まり、2013年からは自閉スペクトラム症(発達障害の1つ)と呼ばれています。
もう一度まとめると、精神遅滞ではないけれどできることできないことの差がある人、を発達障害としています。
発達障害の種類
発達障害にはいくつかの種類があります。
・自閉スペクトラム症(ASD)
対人交流が苦手、相手の気持ちを考える想像力の欠如、こだわり、過集中、感覚過敏
・注意欠如多動症(ADHD)
不注意、忘れ物が多い、じっとしているのが苦手、衝動性
・限局性学習症(LD)
他のことはできるのに文章を読むのが苦手、一文字一文字は読めるけれど文章として読むのが苦手、書けない、計算だけができない
特徴
上記のような特徴は誰にでもあると思われるかもしれません。
グラフの横軸を発達障害らしさとすると、図のような正規分布になります。
精神科では、特徴の極端なものを病名をつけるというカルチャーがあります。
例えば、年をとれば誰でも物忘れはあるけれど、ある一定ラインを超えると認知症と診断をつけます。それがどこからかというと、社会的にどれだけ保証・援助しなければいけないかということと繋がっています。
また、発達障害の上位1〜2%(人口の1〜2%)の人は学校の勉強も普通にやるとついていけなくなってしまうので、合理的な配慮(その人に合わせたカリキュラム)が必要になります。
そこまではいかないけれど特徴が強い人たちは、グレーゾーンと呼ばれ人口の7〜8%といわれています。進級はできるが大学だとレポートが書けなくて落ちてしまう、授業に通えなくて留年してしまう、職場でいじめられてしまう、人のことが気になって不安症になるなど結構大変です。こういうことで苦しんでいる人がいるということです。
また、障害は重複することが多く、ADHDとASDの2つの特徴をもつことも多いです。
こだわりが強くて人の気持ちを読むのが苦手な人ならばASDかというと、意外と隠れたところにADHD的な衝動的だったり忘れ物が多かったりする要素があることもあります。忘れ物が多くて多動で元気で人とコミュニケーションを取るのがうまそうな人も、喋ってみると意外と相手の気持ちがわからないから過剰適応となってサービスしすぎてしまうといったこともあります。
ASDのADHDのどちらが目立つかはありますが、本当の問題はどちらなのかを見極める必要があります。
検査→診断
・問診
基本的には問診で診断は決まります。生育歴や今の困り事を聞きます。当院HPにWEB問診がありますが、あれをきっちり埋めてきてくれると診断しやすかったりします。
生育歴をしっかり聞くと、虐待やネグレクトなどの問題で擬似的に発達障害のように見えているバターンもあります。
・心理検査
WAIS-IV(大人), WISD-IV(子供)などの知能検査を行います。
そのほかにCAARS2, Conner3など色々ありますが全部をやる必要はありませんし、どれかが欠けているから診断が違うのではないかということも特にないです。
心理検査は、その人をそのまま見ると難しいので影絵のように映しているものだと思います。ですので情報が結構削ぎ落とされています。例えば、映画のポスターは内容が要約されていますが、やはり映画そのものを見たほうがわかるようなものです。
ですから会話の中で凹凸を把握する方が僕としてはやりやすいです。ポスターやパンフレットを見てから映画を見た方が内容をスッと理解できるように、心理検査の結果を見ながら話した方が良いというパターンもあるのですが、僕は映画そのものを見る方が好きです。これは人によります。
治療法
ASDの易刺激性(音や匂いに対して過敏)は、リスペリドンやアリピプラゾールで和らぎます。
コミュニケーションの苦手さやこだわりの強さは現時点では薬での治療はできません。
ADHDの不注意や多動性には、大人ならばメチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシンの3つの薬があります。
薬物治療も大事ですが、やはりその人の困り事に対して個別の対応が重要です。診察は短いので、福祉等と協力しながらその人に合ったトレーニングを行います。一人一人特徴や受け取り方が違うので、トレーニングにはプロの技が必要です。また、ご家族も発達障害のことを勉強していただいてその上でどうすれば良いかを一緒に考えていただけると治療がより進むのではないかと思います。
発達障害
2020.12.25