今日は「精神科医の仕事の面白さ」について語ってみようと思います。僕が精神科医をやっているのは面白い、楽しいからです。暗い話は多いのですが、それはフリであってその先に面白さがあるのです。
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楽しさ① 人の変化
性格や気質は変わらないと皆さん思っているかもしれませんが、変わります。患者さんが良くなっていく過程はやりがいもあるし面白いです。精神科の患者さんのある種の人たちは弱かったり未熟だったりするのですが、良くなってくると元々いたところをはるかに超えて人格的に成長していきます。どんな患者さんもそうです。病気が良くなった人というのは人格的な成熟があるなと思います。
「ありがとうございます」「すみませんでした」というのは最初はなかなか言えなかったり、言っていても自信がない感じで言っていたりするのですが、良くなる頃には爽やかに言います。このような人の変化を見るのは面白いです。
人の変化で言えば「記憶」も変わります。患者さんの中で記憶も変わっていくのを見ていると、人間の記憶は作られていくし、人間の認知は場当たり的な認知だというのがよくわかります。人間は瞬間瞬間で作られているというのがわかるのが臨床の面白さです。人間はつくづく脳みそが作っている幻想だなと、サイエンスと物語とアートが混ざり合って深く理解していけます。
楽しさ② 答えのない問題
答えのない問題について考え続けることができるのも楽しいポイントです。
一人の患者さんの中で「許せない」という思いが前面に立っているのだけれど、裏では「甘えたい」「忘れたい」「衝動に任せたい」「気づきたくない」などのいくつかの感情があり、会話の中で多層に出てきます。こちらの問いかけに対してどの顔が出てくるかが面白いところです。
精神科は答えがない問題がいっぱいあります。今のコロナでも経済を優先するか命を優先するかの選択がありますし、親を取るのか自分のキャリアを取るのか、キャリアを取るのか今の恋人との関係を取るのか、出世を取るのか自分のメンタルを取るのかといったいわゆる「トロッコ問題」はたくさんあります。自分だったらどういう選択をするのかを考えていくことも面白いです。
答えのない問題を考え続けることで人の成長も見られるし、自分自身の成長にも繋がります。それが職業としてやっていけるのはありがたいなと思います。
楽しさ③ 秘密の話
これは皆さんよく想像する通りだと思いますが、秘密の話が聞けるのはやはり面白いです。人には本音と建前があるので、本音の話や「ここだけの話」はやはり面白いです。
こういう話を聞くとよく思うのは、悪人というのは世の中にはいないのだなということです。悪い人ではなく「弱い人」はいるけれど、悪人はいないということです。
楽しさ④ 最前線・雑学
患者さんから「実は…」と今何が流行っているのかなどいろいろ聞けるのは面白いです。YouTubeやtwitterも患者さんから聞いて始めました。1日40〜50人と話すのでいろいろな人と会えて楽しいです。
精神科医の裏側
2021.1.14