今日は「診療で行われている会話の間」について解説してみます。皆さんの日常のコミュニケーションにも役立てていただければと思います。発達障害の人もそうで、コミュニケーションの基本を押さえていないことが多いのですが、会話には正解というものがあります。ただ、正解だけだと物足りないのでいかにそれを崩すかというのがコミュニケーションの面白さです。
昔はそんな余裕もなかったので会話の間や診察の中での空気の読み方などわかっていなかったのですが、最近はわかってきましたので皆さんと共有したいと思います。
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会話の間
会話の中でできることは、常に自分が「発言するか/発言しないか」の2択です。発言しないときにはネガティブな沈黙だと「にらむ」、ポジティブな沈黙だと「うなづく」といったアクションになります。
発言するにしても「共感」「評価」「質問(誘導的か/誘導的ではないか」「教える」といったものがあります。
大事なのは「どういう発言をするか」ではなく「発言しない」という選択肢が常にあるということです。これは意外と盲点だと思います。この人に何を喋ってあげたら良いのだろう、何を伝えるべきなのかと考えているだけだとコミュニケーションはうまくいきません。
余談になりますが、これがわかってきたのはYouTubeを始めてからです。YouTubeで病気の説明ができるようになり、診察の時間に余裕ができたので発言しないという選択肢がうまくできるようになってきたと思います。
聞き上手とは
患者さんA「○○○○○○○○○○」
治療者B「・・・」(発言しないという選択肢)
患者さんA「○○○○○○○○○○」
上記でBが発言しない場合はまたAが喋り出します。Bのときに発言しないというのがコミュニケーション上手、いわゆる「聞き上手」なのだと思います。
会話のパターン
場合分けをしてみます。
・患者さんが喋って、治療者が発言しない(基本)
よく患者さんは心理士さんは手応えがない、聞いてばかりで何も発言してくれないと言いますが、これはある意味正解で基本なのです。こういうときは考えが自由に発展していきますが、デメリットとしては患者さんは不安になりやすい、不安定になりやすいということがあります。認知の歪みがあるので議論の進む先が「やっぱり私はダメなんだ」という方向に行きやすいのです。
・患者さんが喋らずに、治療者が良く喋る
通常の精神科の診療はこちらだと思います。医師がリーダーシップを取ってくれるので、こう治療していけば良いのだと安心することができます。ただ、これだと自由さがなくて発展しません。患者さんが内省したり気持ちが動くのを阻害してしまいます。
・患者さんも治療者も喋らない
沈黙が続くことも悪いことではありません。沈黙が続いているときに内省が深まっていることがありますので、良い沈黙ならば恐れることはありません。ただやはり悪い沈黙というのはあって、寂しさを感じたり、喋っていないと怒っているのではないかと圧迫感を感じたりするのは良いことではありません。
・患者さんも治療者も良く喋る
キャッチボールのように会話が進むパターンです。会話が弾んで楽しいのですが、内省が深まっていきません。
大事なこと
・聞き上手が大事
基本は聞き上手が大事です。日常生活でもそうだし、診療の場でも同じです。
・リズムをつける
基本の形だけでは息苦しくなってしまいますのでリズムをつけてあげます。このリズム感が人によって違います。主治医と患者さんのリズム感があまりにも違うとあまりうまくいきません。
・基本に戻る
リズム感をつけながらも基本に戻ることが大事です。
患者さんを主体にするという意味で治療者側が喋らないパターンもあります。それはそれで問題だと思いますが、かといって患者さんが喋り続けるのも良くないのでバランスを取りながら進めていくようにします。このリズム感を取れるのか、噛み合うのか、基本に戻れるのかが大事です。
カウンセリング
2021.2.7