今日は「暴露療法」について解説してみようと思います。暴露療法は認知行動療法のスキル1つとも言えます。主にパニック障害や強迫性障害の方たちに対して使う治療法で、できるところから徐々に慣らしていくという行動療法です。
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パニック障害の場合:電車に乗れない
パニック障害の人は発作が起きてしまって電車に乗れないということが多いのです。どのような治療をするかというと、薬物治療もありますが、それ以外のやり方では行動療法である暴露療法が有効です。
レベル0:外出する
レベル1:駅まで行く
レベル2:普通の各駅停車
レベル3:普通の急行
レベル4:満員の各駅停車
レベル5:満員の急行
このように徐々に慣らしていきます。早く治したいからといって一気に進めてはいけません。動悸がバクバクして薬をガバガバ飲みなら「やりました!乗れました!」といってもそれは上手くいきません。できるところから焦らずにやっていきます。
強迫性障害の場合:手洗いがやめられない
レベル0:部屋を出るたびに手を洗う
レベル1:2回に1回手を洗う
レベル2:3回に1回手を洗う
〜
レベル5:外出のたびに手を洗う
このようにレベルを分けてやっていきます。
これを一人でやっても良いですし、一人だとモチベーションが上がらない場合は、ホームワークとして記録したものを外来の時に見せてもらうというやり方もあります。
応用編:なりたい自分になるには?
このような考え方はどんなものにも応用が効きます。
「夢=なりたい自分」についてどう考えるか:
5年後の目標
1年後の目標
今月の目標
のように、長期・中期・短期の目標を設定します。
このようなやり方でやった方が、具体的になりますしイメージもしやすいと思います。今やるべきことがわかるので目標を達成しやすくなります。
応用編:転職すべき? 我慢すべき?
転職した方が良いのか、今のまま我慢した方が良いのかという悩みがあるとします。
その場合、そもそも何を考えるべきかというともう少し上位概念で考える必要があります。
レベル0:相談するかうまくサボるか
レベル1:我慢するべきか、転職すべきか
レベル2:キャリアプランをどう考えているか
レベル3:仕事に何を求めるか?
レベル4:人生に何を求めるか?
レベル1の「我慢するべきか、転職すべきか」という質問をされた時は、レベル2「あなたはキャリアプランをどう考えていますか?」という質問を返します。
同じレベルで議論を交わしても埒が明かないことがあります。我慢した方がお得かもしれない、転職した方が勉強になるかもしれないといったことを延々と続けることになるのです。賃貸か持ち家かという議論もそうです。甲乙つけがたい時は、もう1つ上のライフプラン、概念で考えるのです。
レベル3の「キャリアプラン」が考えられない場合は、もう1つ上に入ってから下を考えることもあります。レベル4の「そもそも仕事に何を求めていますか?」という質問です。
お金、やりがい、地位、良好な人間関係など、全部はなかなか無理なので強いて言えばこれというものを探します。お金はいいから地位があれば良いという人もいるでしょうし、地位はなくても良いからお金があった方が良い、生理的な不快感は我慢できるという人もいます。
それもわからなければ、もう1つ上の概念の「人生に何を求めますか」ということを考えます。でもさすがに「人生に何を求めますか」と言われてもポカーンとしてしまいます。あまり上すぎず下すぎない概念を考えるのが悩みを解決するコツです。
暴露療法の概念は面白いですし、有効だと思います。物事の水準を変えてやれるところからやっていくというのは、要素分解の仕方としてはとても主観的で恣意的ですが、結構有効な手段です。