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ストレスで鬱になってしまった。「適応障害」って知っていますか?

02:11 適応障害とは
03:49 具体的な症状
04:13 適応障害の治療
06:58 無関心 < 理解したいが難しい

今日は「適応障害」について解説します。

一番大事なポイントは、「周囲の人はメンタル疾患について無関心なわけではない。理解したいけれど難しいと思っている」という事です。そのこともお伝えしたいですし、改めて適応障害についても知ってもらえたらと思います。

適応障害とは

適応障害とは簡単にいうと「ストレスが原因のうつ」です。ストレスや精神疲労が原因で落ち込んでしまう、体調が悪くなってしまうことを適応障害と言います。

「うつ病」との違いは何かというと、うつ病は基本的には「脳病」です。古典的には、原因不明の落ち込みを繰り返す脳病と定義されます。

適応障害は「ストレスで潰れてしまい、脳が疲労状態にある」というイメージです。うつ病は、「疲労の結果または遺伝的なものなど、何らかの原因により脳が変化してうつになっている」というものです。

見分けがつくのかというと厳密には見分けはつけられないのですが…

具体的な症状

・気分の落ち込み
・集中困難
・意欲低下
・頭がまわらない
・体調不良(元気が出ない、朝起きられないなど)
・食事、睡眠(食べられない、食べすぎる、眠れない、寝すぎる、途中で何度も起きる)

このような状態を「うつ状態」と言います。

適応障害の治療

・休養をとる:3~6ヶ月前後
治療に関してはまず「休養」が大事です。
働きながら休養を取るのは結構難しいので、会社を休職する方が良い場合も多いです。3ヶ月休む人が約30%、6ヶ月休む人が約30%、1年半くらい休む人が約15%、1年半以内に退職する人が約15%というイメージです。

1ヶ月くらいだと全然休んだ気になりません。引き継ぎや復帰前の準備などがあると、そのようなやりとりをしているだけで終わってしまいます。
ですので、焦らないでください。

・環境調整
ストレスが原因なので、その原因を解消しないと同じ場所に戻ったら潰れてしまいます。パワハラ、セクハラ、業務量、責任の重さなど色々ありますが、それらを解決していきます。

・薬は補助
薬は必須ではありません。あくまで補助的に使います。
不眠があれば睡眠薬を、パニック発作が起きているのであれば抗不安薬や抗うつ薬を使ったりします。うつ病の可能性がある時は予防的に使うこともあります。

休養をする際にお金の心配をされる人も多いのですが、健康保険に入っていれば「傷病手当金」として2/3の金額が1年半ほど支給されます。

精神科の受診がなかなかできないのであれば、「こころの耳」という行政が設置している無料の相談窓口があるのでそちらで相談していただくのも良いかと思います。ご家族や周囲の人も相談できます。
https://kokoro.mhlw.go.jp

無関心 < 理解したいが難しい

・恥ずかしくない
精神のことは恥ずかしいと思う人が多いようです。
精神科に行くのが怖いと思う人も多いようです。

ですが、実際は恥ずかしことではありません。人口の5、6%は適応障害を経験していると言いますし、実際はもっと多いかもしれません。
自分の部下や上司が適応障害になった方など、人生の中で適応障害にかかわったことのある人は非常に多いです。

適応障害になるのは自分だけということはなく、珍しいものではありません。
精神的な疲労の問題ですので、恥ずかしいことでもありません。「私だけ無能なんだ」と思い悩む必要もありません。

・無自覚な人も多い
病気が重くなってくると視野が狭くなってしまうので、自分が疲れているとかおかしいということに気づかなくなっています。だから周りが気づいてあげることも大事です。

ですから「ちょっと自分、おかしいな…」という時はだいぶおかしいということです。「これくらいなら大丈夫かな」という時は実はだいぶまずいという事が多いので、早めの受診をお勧めします。

・無関心 < 理解したいが難しい
周りの皆さんは心の病気に無関心なわけではありません。無関心ではないのですが、心に関わることが脳の中で何か起きているというのが理解しにくいのです。

「自分で調子が悪いと思っているのに『無自覚』ってどういうことですか?」と言う人もいると思いますが、その矛盾が「脳の病気」たる特徴なのです。
矛盾が起きていない時はプログラムがスムーズに走っているということですが、そこに矛盾が起きているから問題が起こるわけです。こういうところが「ロジックとしてはわかるけれど、今ひとつピンと来ないんだよね」という人が多いポイントです。

繰り返しになりますが、皆、無関心ではないし、本当は助けてあげたいと思っているけれど、どうして良いかわからないと思っていることが多いということです。

患者さんは孤独ですし、助けてもらえない、馬鹿にされているのではないかと思うのですが、そうではありません。どちらかと言えば周りの人のほとんどは助けてあげたいのです。でも難しい、よくわからないので距離を置いているということなのです。

ですから、「共に学び歩みよることが重要」です。
僕のYouTubeは一見自己満足に見えるかもしれませんが、すごく重要なことなのだと改めて思いました。同じような話にはなりますが、今後も何度も何度も話していこうと思います。皆さんご協力ください。

患者さんは「症状が軽くみられるのではないか」と思われるのですが、僕ら医師は診察室では普段よりも症状が軽く見えるものだと思っています。
診察室では元気そうに見えるものだ、とわかった上で割り引いて聞いています。元気そうに振る舞ってけれど本当は傷ついているんだろうなと思いながら聞いていますので(バイアスといえばバイアスかもしれませんが)、あまり心配せずに受診してください。


2021.5.28

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