今日は「不眠症」について解説します。
眠れずに困っている人はたくさんいます。5人に1人は眠りに問題を抱えていると言われており、20人に1人は睡眠薬での治療を受けていると言われています。
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不眠症の治療の流れ
・原因を調べる
「寝れない」ことに他の原因がないのかを鑑別します。
例えば、精神科疾患の中で不眠をきたすものといえば「うつ病」、あるいは適応障害の「うつ状態」です。その病気の結果、眠れないならば、原疾患の治療をしなければなりません。
他に「睡眠時無呼吸症候群」もあります。これは、いびきをかいたりして目が覚めてしまい、なかなか熟睡できない、寝足りないという障害です。
太っている人がなるというイメージがありますが、太っている人だけでなく顎が小さい人がなったりします。
その場合はC-PAPなどを使って睡眠時無呼吸症候群の治療をしなければなりません。
・生活リズム
原疾患がなければ、生活リズムを見直します。
アルコール、カフェイン…とりすぎ、寝る前に飲んでいる
運動量の不足…1日5000歩は歩いてほしい
ストレス…ストレスや悩み事があると眠れないので解消する
これらが原因で睡眠時無呼吸症候群になっている可能性もあります。
何度も言いますが、アルコールはダメです。睡眠の質を下げ、うつっぽくさせ、ガン・脳卒中・高血圧などのリスクを上げます。アルコールの量を減らすか、できる人は断酒してください。
・睡眠薬
上記を見直してもうまくいかない場合は睡眠薬を使います。(アルコールとの併用はダメです)
睡眠薬を使って睡眠のリズムが整ったら、今度は少しずつ睡眠薬を減らしていきます。自転車の補助輪のようなものです。
実際、「ストレスの解消をしましょう」と言ってもなかなかストレスはなくなるものではないので簡単ではありませんし、「運動をしましょう」と言ってもそもそも足腰が弱い人もいます。
なので、教科書通りに行かないのが、臨床の悩ましい点です。
睡眠薬について
睡眠薬は効果の短いものと長いもので分けられます。
今回はざっくり3時間前後、6時間前後に分けます。
新薬系
まず新薬を使いなさいというのがトレンドです。
短:ラメルテオン(ロゼレム)、レンボレキサント(デエビゴ)
長:スボレキサント(ベルソムラ)
新薬は旧来のベンゾジアゼピン系睡眠薬に比べて依存性が少ないのが特徴です。
新薬は昔からある薬に比べて値段が高いのと、少し「残る」感じもあるので嫌がる患者さんも結構います。そのため新薬系よりベンゾ系を先に使うこともあると思いますが、教科書的には新薬系を先に使います。
ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系
長らくトップの座にあった薬です。
ベンゾジアゼピン系の何が良くないかというと、作用機序がお酒に似ているので依存性があると言われている点です。
では非常に危険かというとお酒ほどではありません。もちろん本当に依存のようになってしまう人もいなくはないですが、お酒に比べればはるかに少ないです。とはいえ100%安全な薬ではないので、精神科医が管理をしながら処方します。
(注意:ベンゾは否定的な意見がネットに多いですが、実際の臨床現場ではよく使われている薬であり、ベテランの先生から若い先生まで使っています。飲んでいる患者さんが不安になりすぎないよう、このように説明しています)
<ベンゾジアゼピン系>
短:トリアゾラム(ハルシオン)、ブロチゾラム(レンドルミン)
長:フルニトラゼパム(サイレース)、ニトラゼパム(ベンザリン)
<非ベンゾジアゼピン系>
短:ゾルピデム(マイスリー)、ゾピクロン(アモバン)、エスゾピクロン(ルネスタ)
その他
薬の中には「眠気が出る」という副作用があるものもあります。それをうまく利用して睡眠薬の補助として使うこともあります。
精神科の場合は、うつや幻覚妄想など睡眠薬を使ってもなかなか眠れない患者さんもいます。寝れないと治療はうまくいかないので、応用技をきかせてしっかり寝てもらうようにします。
抑肝散…認知症の人によく使う
クエチアピン…抗精神病薬
ミアンセリン、トラゾドン、ミルタザピン…抗うつ薬の中でも眠気が出やすいもの
これらを病態に合わせて使います。
うつや幻覚妄想にも効果があるので、1つの薬で2つの効果を狙うという意図もあります。
・どの薬が一番良い?
「どの薬が一番良いのですか?」と聞かれるのですが、これは人によって違います。
ラメルテオン、ブロチゾラム、ゾルピデム、エスゾピクロンといったメジャーな薬を使いながら、合わなければ別の薬を使うようにしていきます。この辺りは試行錯誤です。
今回は不眠症の治療の流れと薬の説明をしました。
★noteでも書いています「不眠症」
https://note.com/wasedamental/n/naf999abbf9d1
不眠症
2021.6.6