今日は「困りごとを親に相談すべきか?」というテーマでお話しします。
結論から言うと「原則、相談したほうが良いけれど、できないケースが多い」です。
患者さんから「親に言ったほうが良いのでしょうか?」「親に相談すべきでしょうか?」とよく聞かれますが、原則は言ったほうが良いです。
できない場合は一緒にタイミングを考えたりします。
結局ケース・バイ・ケースということになります。
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どうして相談したほうが良いのか
・脳ひとつより多数
一人の脳で考えるより、多数の脳で考えた方が正解を導きやすいです。
一人で考えていると冷静さを欠きやすいのですが、複数で考えることで冷静さを取り戻しやすいですし、様々な意見が出るので議論を深めやすいです。
悩んでいる時や病状によっては判断力が低下しているので、なおさら相談したほうが良いです。
・友人より身内に相談
誰に相談するかというと、友人よりも身内の方が親身になって考えてくれます。
・若い人より経験者
若い人に相談するよりも、色々な経験をしている上の世代の人に相談する方が良い答えが出やすいです。
ただ、世代ギャップの問題もありますし、精神疾患に関しては若い世代の方が理解があります。上の世代の人には「そんなの甘えだ、もっとがんばれ」と言う人もいます。その辺りも考慮しながら考えます。「うつ病は病気で、甘えではない」と説明するところから入るのは大変です。
親に相談できない理由
・理解困難な親
「精神が病む」ということがどうしても理解できない人 がいます。
僕の個人的な感覚では、全人口の3割くらいの人には精神疾患があるということを理解できないのではないかと考えることもあります。
自分の親がうつに理解がないとしても、そんなことはよくあると思った方が良いです。通院している患者さんの親は理解がない人の方が多いです。理解があって頼りになりますという人の方が少ないです。
・一方的な意見
一方的な意見を言って終わってしまう親もたくさんいます。
・不安を抱えられず、潰れてしまう
たとえば子供が泣いていたら「よしよし」と泣いている時間や不安な時間を共有する、答えが出ない時間を一緒に耐えることは重要です。
大人になってからも同様で、しかし、そういうことができない人はいますし、そのような親はたくさんいます。
「それはこういうケースだから頑張れ」「こうだから今は我慢しろ」など親から先に答えを言い、患者さんが自分自身の力で不安を消化する時間に耐えられません。
このような親は多いのですが、その場合はなかなか相談しにくいかなと思います。
患者さんは、「こういう環境で育ったから、今の私がいるんだな」と最終的に理解することもあります。
本当に親が理解困難?
一方で、本当に親が理解困難なのかをきちんと考える必要もあります。
・親を歪んで理解している
子供は親を正しく理解しておらず、だいたい歪んで理解しています。
歪んで理解しているからこそすごく尊敬するし、逆に過小評価し、親から離れようと自立していきます。
正しく認識することは、自立という本能的なメカニズムの都合上、あり得ないような気もします。
・時間をかければ理解してもらえる
時間をかければ理解してくれる親もたくさんいます。もともと精神疾患に対して理解がなくても、実際に休職になってから「そんなに辛かったんだね、理解してあげられなくてごめんね」と言ってくれる親は結構いると思います。
・親に立ち向かうパワーが足りない
患者さんの体力、精神状態によっては「今は無理」ということもあります。このような場合は、患者さんの体力を見ながらタイミングを決めていきます。
臨床では患者さんの話を聞く一方で、本当にそうなのかなと2つの頭を使いながら聞いています。
患者さんから見たら理解がなくて鬼のような親でも、実際はそうではないこともよくあります。実際にその通りのこともありますが。
それに加えて、患者さんの今の精神状態や体力によってアドバイスを考えたりします。
ただ、タイミングを読むのは難しいです。
患者さんは、人に甘えたり弱みを見せたりと自分を開放するのが下手なので助けてもらいにくいのですが、精神科に来たのですからそういったことも学んでいけば良いと思います。
まとめ
今回は困りごとを親に相談すべきか、という話をしました。
複数で考えた方が正解に辿り着きやすいので、原則は相談する。
でもできないことも多いので、ケース・バイ・ケースでタイミングを見計らいながらやっていく。
相談できない理由は、メンタル疾患に対して理解のない親が多く、かつ患者さん自身も親のことをきちんと把握できていなかったり、親に伝える元気がなかったりするためです。
親子問題
2021.7.26