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発達障害の治療、完全解説

00:24 発達障害の症状
06:26 発達障害の治療
09:07 概念の拡大

本日は「発達障害の治療」を解説します。

ちょっとややこしい図なので早速本題に移ろうと思います。

発達障害の症状

まず症状の解説をします。

発達障害は主に「ASD」と「ADHD」の2つに分けます。
この2つは合併することが多いので、僕は発達障害としてひと括りにして解説することが多いです。

「ASD」は「自閉スペクトラム症」と言って、こだわりが強い、人の立場で考えることが苦手、マルチタスクができない、という不器用さの特性です。
「ADHD」は不注意、注意散漫、衝動性が高い、多動性という特徴があります。

このASDとADHDの2つの特徴を併せ持つことが多いです。
ASDと診断されてもADHD的な特徴があったり、逆にADHDと診断されてもASD的な特徴を持つことはよくあります。

発達障害の特徴があると生きづらいです。
生きづらいので嫌な経験をよくします。
学校に馴染めない、友だちにいじめられる、忘れ物が多いので先生によく怒られるというような体験をします。
そういう体験からうつっぽくなり、不安が高まって不安になりやすくなり、不安から発達障害の症状が出やすくなります。

余裕がないときほど忘れ物が多い、余裕がないときほどミスをする、余裕がないときほどせわしなく動いたり人の気持ちに立てないというのは、僕らもそうです。
益田こそ発達障害っぽいと言われたらそうかもしれません。

このような循環があるので、一度悪いループに入ると、どんどん悪くなるというのも発達障害の特徴です。
今までグレーゾーンと言って症状が軽かった人が、新入社員になって怒られたりすると、負のループに嵌まってどんどん発達障害の症状が強く出てしまうことはよくあります。

体験があるので記憶に残ります。
発達障害の人は記憶を忘れるのが苦手です。
生々しい記憶が残ってそれがPTSDのような症状を生んだり、家族からの虐待があった場合は複雑性PTSDのようになります。
記憶があるので他人に対して拒絶的になったり、攻撃的になる人も時々います。

発達障害の特徴として「過敏さ」というものがあります。
感覚過敏だったり、不安に過敏だったりというものがあります。
それは記憶によって増強されたり、本人の体質としてあったりします。
不安だから過敏になる、過敏だから不安になる、という悪いループ、循環というものもあります。

不安やうつがあるので、二次障害として「依存症」のようになることがあります。
アルコール依存症、ギャンブル依存症、性依存症、買い物依存、ゲーム依存、あとは万引きも癖になりやすいですし、摂食障害、過食嘔吐も癖になりやすいです。自傷も依存になりやすいです。
変に共依存になったりすることもあります。

あとは「強迫」です。
物を捨てられないという強迫だったり、鍵閉めの確認などの強迫性障害を合併してしまうこともあります。
不安やうつが悪化して強迫へ行ってしまうこともあったりします。
普通にギャンブル依存やアルコール依存、摂食障害で来ても、隠れ発達障害というのは結構あったりします。

発達障害だけれど見逃されやすいパターンとして、「境界性パーソナリティ障害」があります。
過敏で見捨てられ不安があり、情動が不安定で、理想化とこき下ろしのような攻撃性もある境界性パーソナリティ障害のような人もいます。
境界性パーソナリティ障害と診断されていても、実は発達障害だったというケースも結構あります。
自己愛性パーソナリティ障害や、拒絶が強くて回避性パーソナリティ障害だと診断されても、実は自閉スペクトラム症だったというケースも結構あるかなと思います。

こうやって見ると発達障害の症状は多彩です。
普通の特徴だけでもASDとADHDの特徴の組み合わせで多彩なのに、こういう色々な要素が絡んでくるので症状はより複雑になります。

家族問題、子どもが発達障害だと思ったら親も発達障害の傾向があった、問題はなかったかもしれないけれど実は家の中で虐待があった、ネグレクトのような問題があった、虐待とは言わないけれど親子問題があった、夫婦仲が悪く子どもが常にストレスを抱えていた、というようなことも結構あるかなと思います。

発達障害の治療

治療はどのようにするかというと、「これをやれば治ります」というものはありません。
色々な問題が絡んでいるので、一個一個当たっていって、一個一個全部治療していく必要があります。

例えば発達障害の症状として、ASDでコミュニケーションが苦手だったり、マルチタスクが苦手だったり、こだわりが強かったり、人の気持ちに立つことが苦手だったり、ということに対しての薬物治療はありません。
SST(生活技能訓練)やCBT(認知行動療法)で学んでいくことになります。

ADHDの不注意や衝動性、多動性については、コンサータ、ストラテラ、インチュニブという薬物が効くのでこれらを使います。
この3つの薬をどうやって使い分けるかというと、コンサータは効果が12時間持続し、ゆっくりジワーッと少量ずつ出てくる覚せい剤のようなものなので、即効性はあるけれど依存性には注意が必要になります。
でも効果があり集中力が高まるので、ミスが防げます。
ミスが減って落ち着くようになってきます。

ストラテラは抗うつ薬にも似たノルアドレナリン再取り込み阻害薬と言いますが、これを飲むことでノルアドレナリンが増えて集中力が高まり、ノルアドレナリン系の脳神経細胞が育っていきます。
そうすることでミスをしにくい脳に変わっていきます。
ただ時間がかかります。
コンサータに比べてストラテラが効くのには時間がかかったりします。
効果が出てくるまでに1~2ヶ月かかります。
待てない場合はコンサータからいくということもあります。

インチュニブは元々血圧の薬でした。衝動性を抑える薬です。
副交感神経系に影響を与え、衝動性を抑えます。
これも結構良いのですが、副作用として眠気、元々血圧の薬だったということもありふらつきが出ますので、ちょっと使いにくいということもあります。

子ども用にビバンセという薬もありますが今回は割愛します。

ADHDは薬だけではなく、やはりSST(生活技能訓練)やCBT(認知行動療法)で学んでミスを防ぐ方法を技術として身に付けていくことも重要です。

概念の拡大

また、嫌な体験を現にしていたり、それが記憶に残って認知の歪みを生んでいる場合は、「概念の拡大」が必要です。
知識を身に付け自己理解を深め、他者を理解し、しなやかに考えることが重要です。

発達障害の人は興味の偏りのせいか、一見しっかりしていそうに見えて常識が欠けていることがあります。
そこを埋めつつ、あの時あの人はこういうことを考えていたのではないかという形で、相手の気持ちや他人がどう考えたのかを教えてあげることが重要だったりします。

一個一個その都度体験したことを教えていくのを「エクスペリエンス」、「ラーニング」と言ったりしますが、そうではなく全体的に、発達障害はこういうものなんだよ、定型の人はこういうことを考えるんだよ、という総論を学んでいくことも重要だったりします。

余談ですが、過去の記憶や無意識に蓄えられたものと、今体験していることを投影や転移を使いながら理解していくことを精神分析と言います。聞かれるので言っておきました。

ややこしいんです。
認知行動療法なら行動の部分や認知を対象にしますが、精神分析は行動にアプローチするのではありません。
今感じているのは実は過去のこういう記憶が関係しているよ、あなたは怒っているように見えるけれども実はその怒りの感情は自分自身の気持ちの投影だよね、過去にいじめられた人を相手に転移させて怒っているんだよね、というような言い方をします。

体験が記憶になり、記憶が現に今の体験に影響を及ぼす、という人間の認知のややこしいところを扱うのが精神分析なのです。
これは興味があったらまた聞いてください。

うつがあったり不安が強い場合は、SSRI(抗うつ薬)を使うこともあります。
ただSSRIとストラテラ、コンサータはバッティングして動悸などの副作用が出やすくなるので、どちらかだけにすることも多いです。
感覚過敏に対してはリスペリドン、アリピプラゾールなどの抗精神病薬が有効だったりもします。

不安やうつ、パニックのようになってしまったとき、急ピッチで心を静める方法としてマインドフルネスがあります。
こういうスキルも身に付けるといいですよね。

不安でワーッとなっているときに、職場で目を閉じて深呼吸をする。
これを30秒するのか、1分するのか、5分するのか、一気に呼吸に集中して心を静めるスキルを身に付けるのも一つです。
日頃から練習することによってゾーンに入りやすくなりますから、こういうものを身に付けてもらうのも良いのかなと思います。

ただ学んでいくということを独りでやっていても上手く行きません。
記憶をしていくためには人間が絡んだ方が良いので、心地よい仲間をつくることで治療を進めていく、ちゃんとした治療者につく、福祉の人に援助を頼む、自助会を利用することも重要です。

駆け足でしたけれど、今日は舌が全然回らないですね。
また今度動画に撮ろうと思います。

今日は、発達障害の治療をざっくり概論として述べました。
皆さんの記憶や知識の整理に役立ててもらえたらと思います。


2022.4.17

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