本日は「やりたいことがない人」に向けての動画です。
よく診察室で「私、やりたいことがないんです」と言われることがあります。
「やりたいことがある人が羨ましいです」という言い方で色々聞くことがあります。
やりたいことがないから外出できない、やりたいことがないのでなんとなく今の会社にいます、つまんないんです、ということを聞きます。
外出できない、休日は家から出られない、という人が多いです。
やりたいことがない人はどういう人なのか、どうやったらやりたいことが見つかるのか、ということを今回の動画で解説します。
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「やりたいことがある人」とは?
やりたいことがない人を定義するのは難しいので、やりたいことがある人はどういう人なのか、ということから考えてみます。
やりたいことがある人は、あれもやりたい、これもやりたい、そういう話ではないと思います。
これも食べたい、あれも食べたいという食いしん坊のようなタイプではなく、ここでいう「やりたいこと」がある人は、中長期的な目標がある人、人生を賭けてこれにエネルギーを費やしたいと思う人のことを指します。
私はやりたいことがないんです、という人も、ゲームをしたりYouTubeをダラダラ見るのはやりたいことではあります。
やりたくない訳ではないと思います。
自分の人生を賭けることや、中長期的にがんばりたいことがない、ということだと思います。
中長期的な目標があってがんばれる人はどういう人なのかと考えると、その人たちの心のことがわかるのではないかと思います。
1つのことがやれる人、やりたいことがあり、それに向かって頑張れる人はどういう人かというと、 2つの特徴があります。
1つは「興味の一貫性」です。
当たり前といえば当たり前ですが、同じことが好きなのです。
1つのことが好きでやっているという感じです。
僕が聞いて面白いなと思ったのは、将棋の羽生善治さんです。
羽生さんは仕事が将棋、趣味はチェスなんです。
それ趣味なんですか、という感じじゃないですか。確かに近いですよね。
でも段々気持ちがわかるようになりました。
最初に聞いたときは凄いなと思い、そんなの自分は真似できない、と思いました。
僕も年をとるにつれて興味の幅が狭くなり、仕事は精神医学、趣味はYouTubeとなってますから何となくわかります。
興味の一貫性があるということです。
もう1つは「努力と粘り強さがある」ということです。
挫折する、困難がある、嫌な思いをするなど、問題にぶち当たっても継続できる、乗り越える力があるのがやりたいことがある人の特徴です。
こういう力を「グリッド」と言います。
「非認知能力」といわれるものの1つで、人間の持っている能力です。
これはいわゆるIQとは関係がありません。
IQが高いからグリッドが高いというものではなく、意外と相関関係はありません。
頑張れる人は頑張れるという感じです。
IQを認知能力、グリッドを非認知能力と言いますが、非認知能力も大事だということです。
頑張れる人は「グリッド」と言う非認知能力が高いです。
グリッドはどういう要素で成立するのかというと、興味の一貫性という特徴と、努力を粘り強くできること、です。
益田はYouTubeでよく喋っているじゃないですか。
よく喋っているから、コメントを見ると「マスダ先生は優秀です」「地元にこんな先生がいたら」と書いてくれるのですが、決して僕は優秀じゃありません。
賢くもなく、IQも別に高くありません。
ただ確かにちょっとグリッドは高いんです。
僕は中学生くらいのときから精神医学は好きで、毎日飽きずにYouTubeを撮っている訳じゃないですか。
そういう意味では、この分野に関してはグリッドはちょっと高いです。
「やりたいことがない人」とは?
グリッドの反対、諦めやすい人、やりたいことがない人はどういう人かというと、興味の一貫性があまりない人ということなので、外向的で協調的な人が興味の一貫性が低かったりします。
外へ出て遊ぶことやみんなと一緒に何かをするのが好きな人は、やりたいことが意外とないという感じです。そういうものです。
すごく優秀な人、生徒会長のようなキャラがいますよね。
僕の中高のときにもいましたし、防衛医大の仲間にもいました。
外向的で協調的、みんなと仲良くしている人は意外と臨床一筋という感じじゃないな、と確かに思います。
努力の粘り強さの反対は諦めやすさです。
諦めやすい人はグリッドが低い、諦めやすい人はやりたいことがない、見つけにくい人ということになるかなと思います。
やりたいことを見つけるには?
どうすればやりたいことが見つけられるのか、ということですが、まずは「自分らしさ」を大事にするということです。
外向的であったり協調的であっても良いのですが、流されないことです。
自分らしくあることを重視する、自分らしさは何だろうということがわかる(定義してあげても良いです)、そしてその自分らしさに価値を見出すことが重要です。
自分らしいとは何かというと、「がんばり屋さんだ」ということをインプットした方が良いです。
がんばり屋でなくても、自分はがんばり屋なんだと「思い込ませる」ことが重要です。
あとは僕の場合だと、精神医学が好き、ということにしています。実際好きですが。
精神医学に関係することが僕は好きです。
一周回って精神医学は面白いなと思います。
最先端の脳科学や研究、色々な学問に触れると、精神医学のここは嫌だというポイントもありますが、そうは言っても一番好きだなと思います。
そして「価値がある」と思うことです。
精神科の診療は価値がないとは言わないですが、偏見もあり「僕は精神科をやっているんです」と誇りにくい感じなんです、実は。
見ているみなさんには申し訳ないのですが、医療業界の中ではヒエラルキーが低めですから。
マイナースポーツというか、内科や外科などの華々しい科と比べると精神科は地味で、ちょっと気難しい人が多く敬遠されがちで、美容整形のようにお金が儲かる訳でもなく、整形外科のようにスポーツの人を相手にやっている爽やかさもなく、陰キャじゃないですか。
精神医学って治らないんでしょと言われたりもします。
患者さんはなかなか治らないし、ゆっくりとしか治りません。
治療の難しさもあれば、一方で誤解されて誹謗中傷を受けたりなど色々ありますが、僕は価値があると思っています。
こう考えると自分らしさもわかりますし、自分らしく生きることができます。
だから自分らしさが重要だったりします。
失敗を許す
ではどうやったら諦め難くなるかというと、「失敗を許す」ということです。
患者さんには失敗を許せない人がすごく多いです。
僕のYouTubeなんか一発撮りでバッと流しちゃうし、初期の頃のものはしゃべりが全然下手です。
でも別に気にせず出しています。
ちょっと気にしていましたが。
とにかくやるのです。
やっていれば脳は成長するので上手くなります。
僕も2年ちょっとやっていますが、たぶん3年目にはもっと上手くなるだろうし、4年、5年、10年やっていれば上手くなると僕は思っているので、今は今でいいかな、今見ている人には申し訳ないですが、そう思っています。
脳は成長します。
失敗から学ぶ、弱みに注目することも大事です。
失敗から学ぶのは効率が良いです。
失敗を許し、失敗しても良いんだと思う精神でやった方が成長が早いです。
僕も受験の時に思っていましたが、テスト勉強をしないでテストに落ちてから勉強をした方が記憶の定着は良いんです。
もう勉強しないのだったらしないで、テストが終わってからで良いんじゃないか、と昔は思っていました。
その方がショックを受けている分吸収します。
失敗を恐れず失敗から学ぶということが大事です。
開き直りも大事です。
欠点は魅力です。
自分にとっては嫌だなと思っていても、欠点は魅力的なのです。
女性なら、ちょっとぽっちゃりしちゃって、と思っていてもそれが魅力だったりするし、逆に痩せ過ぎちゃってというのも、それがスリムで綺麗だったりします。
ちょっと性格がキツくてという人は、そのキツさ、攻撃的というか積極的な感じが魅力だったりします。
逆に自分の意見がないという人は、優しい感じ、受け身だけれどきちんとルールに従う感じが魅力だったりします。
そのあたりを開き直るということも重要だったりします。
でもこの「開き直り」は難しいです。
それはなぜかというと、子どものときの問題だったりします。
親子問題の話で、親がすごく厳しかったり、成果を求めたり、虐待があったりすると心のトラウマになり、失敗してはいけないと思うことが多いです。
厳し過ぎるのも良くありません。
また、恥への恐れ、失敗したら恥ずかしい、注目されるのは恥ずかしい、ということもあります。
確かに社交不安障害の人たちは、恥に対する恐怖感は強いです。
たぶん人間が持っている本能として、注目される、恥をかく、失敗がバレたときの心臓のバクバク感があり、それが過剰に反応する人と鈍感な人が生まれ持った特性として、親子問題とは別にあると思います。
そういう観点から、調子が悪くてということもあります。
社交不安障害の場合であれば、SSRI(抗うつ薬)などで恐れは軽減できますから治療していくことは大事です。
あとは発達障害の人です。
ASD、ADHDの人もこだわりがあるから恥を恐れてしまうということも結構あります。
ADHD的な注意散漫で興味があちこち移るという要素ゆえに、やりたいことがない、というパターンもあったりします。
摂食障害やアルコール依存症など色々ありますが、恥への恐れもあると思います。
別に失敗は良いんですよ。
それも魅力ですから、開き直ることができると良いんだろうなと思います。
なかなか難しいですよね。
目標をきっちり立てる
ポイントとしては、「目標をきっちり立てる」ということです。
例えば僕の場合であれば、上位目標が、精神疾患の偏見を減らすこと、治療効果をアップさせることです。
その目標のためにYouTubeをやったり、オンラインサロンをやったり、YouTuberの会をみんなで集まってやるという下位目標を立てています。
毎日YouTubeをやろう、自助会を頑張ろうという目標よりももう1個上の段階の目標を立ててあげる方が、下位の毎日YouTubeをやろう、サロンを運営する、YouTuberの会をやる、ということを成立させやすいです。
迷ったら目標をもう一回振り返り、モチベーショアップのために上位目標を作ってあげる、とにかく目標を立てる、ということを繰り返しやっていくと、グリッドは高まります。
その上位目標は、価値があると思えるものだったり、自分らしさに関係するものだったりします。
上位目標のためには下位目標が多少失敗しても許せるものです。
動画はあまりいけてないかもしれないけれど、偏見を減らすということには1ミリでも関与できたかな、と思えれば、動画の出来がいまいちでも許せるという話です。
目標設定をしっかりして自分らしさを磨き、失敗を許してあげるとやりたいことが見つかる、という話です。
前向きになる考え方
2022.4.23