本日は「日本のストレス」というテーマでお話をしようと思います。
日本人であるが故の、日本社会で生きているが故のストレスというものがあると思います。
世界から見て、「日本人て不思議だな」と思われていることはたくさんあると思います。
僕らは日本人であるが故にその不思議さに気づかなかったりするのですが、今回は日本の歴史を振り返りつつ、日本の特徴とどうしてそうなっているのかを一緒に考えてみたいと思います。
この動画はなぜ撮ろうかと思ったかというと、海外からの取材がもしかしたらあるかもしれないのです。
そこで僕なりに知識の整理を兼ねて、今回動画を撮らせていただこうかなと思います。
取材が動画になったら皆さんにアナウンスできると思います。今はまだ言えないのですが、近々そういうものがあるかもしれないということです。
コンテンツ
日本の歴史
僕は日本の歴史はあまり詳しくない、日本というか海外の歴史も詳しくないのですが。
僕の中のイメージの日本史観はどういうものかというと、大きく分けると5つに分けられるのかなと思っています。
平安時代から鎌倉、室町、戦国時代、そして江戸になって明治、そして戦後になっていくというイメージです。その中でだんだん日本の文化、価値観、美意識は生まれてきたと思っています。
・平安
平安時代というのはどういう時代かというと、貴族の時代です。
京都を中心とした貴族の時代です。
盆地にあり、ペストや病気も流行ったりしました。
平安時代は穢れ(けがれ)とか清めとか、そういうものをすごく意識した。
穢れているとかそういう汚いものを排除していきたい、きれいにしていきたい。
貴族文化ですから、穢れたものは良くないという価値観が成立してきた。
「あはれ」というか、美しいものとはどういうものかが成立した時代かなと思います。
・戦国
そこから武士の時代が始まります。
戦いの集団です。実力主義の戦いの集団が生まれてくる。
狭い国で殺し合いをしまくるわけです。
そういう中で「無常観」というのは鍛え上げられていくし、実力主義、君主制度が根付いていくという感じです。
・江戸
江戸時代に入っていくと、ようやく平和になってきます。
ガチガチの封建主義です。
こんなに長く平和が続くことはないんですよね。
他の国を見ていても、一つの政治体系でこんなに長く、平和の時代が続くことは本当に珍しいです。
それはなぜかというと、日本という島国であったということもそうなんだけれど、江戸というのがかなり完成された封建主義だったということです。
そこで日本のある種の価値観というか、自己犠牲的なもの、お上に逆らってはいけないという価値観ができ上がっていく。
・明治
そのまま明治に入ってくると欧米化していくのですが、封建主義をそのまま利用して国民国家化していくことができます。
だから他の国よりも早く欧米化することができ、戦争にも対応しやすかった。
・戦後
戦争するけど負けてしまう。
戦後はバブル~アニメと書いていますが、封建主義が壊れた後、日本人が何か自分たちで考えていこうとしたときに、またよちよち歩きのところからスタートします。
そうすると、どこか動物的で享楽的、快楽的というか、そういうカルチャーになっている。
日本というのがアニメの国みたいになっているなというのが僕の歴史観というか、僕はこんなふうに日本を考えています。
日本の特徴
勤務時間がとにかく長い。そして、会社のために自己犠牲をするということが美徳とされている。
これは世界から見ると日本って不思議だなと思うところのようです。
・勤務時間が長い
勤務時間が長いというのは何かと考えてみると、戦争で負けて貧しかったというのもひとつだろうと思います。
それから、貧しさからの「世間の目」です。
他の人が働いているのに自分はサボっていていいのかという。
日本は狭いですし、周りがすごく見てますから、他の人が頑張っているのに自分が頑張らないわけにいかないなということで、相互監視で頑張って働くみたいになって豊かにはなっています。
ですが、今度は高齢化の影響でなかなか新しいものに変えていけない。変えていけないから非効率的となって、失敗をしないための仕事みたいなものが増えていって、非効率になっている。IT化ができないということになっているのかなと思います。
それが日本の特徴であり、勤務時間が長い理由なのかなと思っています。
・会社のための自己犠牲
会社のために自己犠牲をするという精神が、やはり上の世代、少なくとも昭和世代にはあります。
僕もそうですね。自衛隊にもいましたし、自分の生活よりも仕事のためにやらなきゃいけないというふうに思っています。
今でも思い込んでいるところはありますね。
若い子たちは違うのかもしれませんが、日本人の多く、30代以上は会社のために自己犠牲をするものだと囚われていると思います。
日本人の美意識
人前で出しゃばってはいけない、わがままを言うべきではない、個人的な感情は言ってはいけない、といったものが日本人の美意識としてあるのだろうと海外からは思われている。
実際そうだろうなと思います。
これは武士の美意識に似ているなと思います。
武士というのは戦う集団なので、戦っていかなければいけないんですよね。
不安を押し殺して戦っていかなければいけない。集団の規律を保つ。
狭い国家内で戦っていますし、頻繁に争いが起きますから、負けてはいけないのです。
出しゃばっていったら殺されたりもするので敵も作ってはいけないし、負けないように、弱みを見せないようなことをしなければいけないというのが、武士の痩せ我慢というか美意識だったりします。
こういう武士的な美意識が、今でも日本人らしさとしてあるだろうなと思います。
すごく日本は分離しているんですよね。
積み上げてきたもの、つまり武士とかそういう形で何か日本人らしさとして積み上げてきたものの一方で、一気に壊してしまう。
これは穢れているから壊してしまえという自己破壊的なものの二つが、妙に混在しているというのが日本なのかなと。
恥をかいたから切腹してしまおうみたいな。
切腹することで穢れを落として清め、もう一回リスタートしようというような国家というかそういう価値観の国だなと思ったりします。
あとは喋ってはいけないというのは、言葉にできないものが多いと僕らは思っているからなんです。
言語化せずに伝えていく。
非言語的なもの、いわゆる非認知能力というか、そういうものを重視している。
禅の世界ですよね。
言葉にできない何かというものを重視して、それを体感的に伝えていく。
そういうものを言葉にせずとも伝えることができる人が尊敬されるし、言葉にせずともキャッチできる人たちが尊敬されるというのも日本の特徴かなと思います。
どのような問題を生んでいるか
そういうものがどういう問題を生んでいるのかというと、結局、自己破壊的ですし、言ってはいけないということでいろいろな問題が起きています。
例えば性の問題です。
性的な虐待があっても恥ずかしいから言ってはいけない。
親にも言ってはいけない。迷惑をかけちゃいけない。
トラウマの問題もそうです。
言ってはいけない、恥をかかせちゃいけない。迷惑をかけてはいけない。
そういう中で発達障害の人たち、ASDでコミュニケーションが苦手な人たちがぽつんと孤立化したり、教えてくれなかったり、暗黙の了解がわからなくて混乱したりしている。
言ってはいけないという中で、ASDの人たちは出しゃばらないし、ワガママも言わないし、個人的な感情も言わないのでなんかカッコよく見えるんですよね。
そういう中で、心が不安定になりやすい人は、恋に落ちて結婚しやすいのですが、じゃあ結婚した後その人達が子育てを手伝ってくれるのかとか、パートナーをしっかり守ってくれるのかというと守ってくれなかったりして、それでうつになってしまうということで、カサンドラ症候群の問題も多かったりします。
言えないのですが、お酒を飲んだときは良いというのはあるので、お酒の問題というのが結構絡んでいます。
お酒を飲むこと、ドラッグですよね。ドラッグパーティーをすることで互いに仲を確かめ合うとか、そういう悪い意味でのお酒というのがやっぱりカルチャーとしてあります。
日本は美食の国、お酒の国ですが、その背景にはやはり喋ってはいけない、自分の個人的な感情は言ってはいけない、禅的なもの、本来だったらお酒やドラッグの力を借りずに体感的なものを伝えていくものが、お酒で伝えていくということになってしまっているというのも日本の特徴ですね。
その結果、カウンセリングカルチャーはかなり未熟です。
ちゃんとしたカウンセラーとか、カウンセリングを受ける文化、患者さんというのはあまりいないです。
日本というのはそういう国だと世界から思われていると思います。
良い部分でもあり、悪い部分でもありますね。
勤務時間を長く働く、そして自分を犠牲にしてでも会社のために貢献する、チームのために貢献するというのは、理想目標であり果たすべき目標なんですよね。
ですが、なぜかほかの国から見れば目標なんだけれども、この目標が先に達成されている。
心が追いつく前に達成されていて、達成しているのですが、成熟を伴ってこれを達成したわけではないから、みんな心の内は決してハッピーじゃないというのが日本の特徴です。
・少子高齢化
それから、日本は少子高齢化を世界の中でトップレベルで走っています。
ではこの老いとか、老化の問題が世界の中でトップレベルでディスカッションされているかというと、そういうことはありません。
日本の老いの問題は隠されています。
それは穢れの問題だと思われているのかなという気はします。
病気、老い、事故とかそういうものは口にしてはいけない。
恐れ多いものだから口にしてはいけないものだと思われている。だから妙に隠蔽されていて語られていない。
・自己破壊的なストレス発散
では日本のストレス発散はどのような感じかというと、自己破壊的です。
ストレスがたまっているというのは穢れていることなので、発散する、壊してしまうというイメージがあって、自己破壊的なストレス発散法が好まれます。
性風俗、大量に推しのものを買う、推し活動をする、自己破壊的なギャンブルをする、アルコールやドラッグで自己破壊的に壊していくのが多いなと思います。
他の国であるような、自分たちが歴史の1ページを作っていく、僕がやったものが死後に繋がるように何かを作っていくという発想というのはなかなかしにくいです。
死後はもう何もないというか、古いものは穢れているのでそれは一掃してもらった方がいい。
子供の代まで迷惑かけたくないという形で、何か消し去ってしまおうという発想が動いていて、歴史や文脈というものが断絶しやすい。
そして制度としてだけ残っていくというのが日本的な感じだなと思います。
無常観
そういう中で「無常観」ですね。
世の中というのは一定ではないとか、諦観。
自分の気持ちを諦める、欲望は諦めることで効率的に動いていける。
まさに軍人というか武士のようなイメージというものが美しいとされるし、そういうものを目指していく。
そういう意味で日本というのはうまく機能しているとすごく強い集団だなと思いますし、逆に自暴自棄になってしまうと、自己破壊的で良くないというか、動物的になってしまうというのがあるのかなと思います。
日本は狭いので、世間体、周りからの目や恥をすごく意識します。
恥をかきたくないということをすごく意識する国民です。
その反対で、そういうものに囚われているからこそ、そうじゃないもの、輪廻から外れていく、世間から抜け出したい、無常観と諦めというものを手にしていきたいと思います。
本当にそこら辺が複雑というか、面白いなと思います。
世間体や恥があるから仕事を頑張る。
無常観や諦めがあるから職業軍人のように自己犠牲的に働く。
とにかくそういう、自己というものを徹底的に壊していく、自分というものを大事にしないことが美的なものとして解釈されているというのが日本だなと思います。
ということで、今回は日本のストレスというテーマで、日本のストレスの特徴を精神科医目線で語ってみました。
前向きになる考え方
2022.7.5