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精神科の病気、全部説明します 精神医学概論③

00:00 OP
02:40 外因性疾患
05:55 内因性疾患
09:52 知的な問題
13:33 不安障害
14:25 強迫性障害
15:49 依存症
17:10 トラウマ
18:19 ヒステリー
20:15 人格障害

本日は「精神科の病気というのはどういうものがあるのか」ということを一覧にしたので、ざっくり解説してみます。

精神科というのは心の病気だということで、色々な病気があって、無限に病気がありそうですよね。
自分の病気はどれなんだろうということで、みなさん心配になったりするし、なかなか良くならないということは病名が違ったんじゃないか、診断が間違っているんじゃないか、と思って不安になる方も珍しくないと思います。

HSPとかアダルトチルドレンとか、精神科のいわゆる病名ではないけれど、いろいろ流布されている病名的なものというのはあったりします。自律神経失調症とか。
病名とは違って民間用語であって医学用語的ではなかったりするので、混乱されることも多いと思いますが、とりあえず今回は医学用語としての精神科の病名を解説します。
全般的なものです。あと、有名どころはきちんと説明します。

ここに載っていない病気もあるのですが、基本的には今ここにある病気のサブスペシャリティというか、特殊型だったりするので、あまり大きく診断がずれるわけではないということもお伝えできたらなと思います。

あと一応分類をしたのですが、これは正確な病気分類ではありません。
DSM-5やICD-10の分類方法とはちょっと違って、わかり易くするため、説明し易くするために、分類法を一部入れ替えたりしています。
きちんとしたカテゴリーで学びたい方は、他の動画を見ていただくかDSMやICDを読んでもらうといいと思います。

あくまで概略を掴むためにこういう風に分けているということです。
プロの方、お手柔らかに聞いてもらえたらと思います。

外因性疾患

まず外因性疾患、身体の病気が原因で精神の異常をきたす病気群は何があるか。

・脳炎
最近はあまりないんですけど、昔は梅毒とか結構あったようです。
ウィルスや細菌による感染の脳の炎症反応が起き、奇異な言動や妄想に支配される病気を脳炎といいます。

・ステロイド精神病
色々な病気の治療中にステロイドを使うことがあるのですが、ステロイドを使っている時に、精神の異常をきたしたりすることがあります。
そういうものをステロイド精神病というのですが、意外と見逃されやすいなという感じです。

・甲状腺機能低下症
甲状腺というのが喉の辺りにあって、ここは元気を出すホルモンです。
ここから元気が出るホルモンが出るのですが、ここの機能が落ち込むとうつ病のような症状になります。
それを甲状腺機能低下症といいます。

・せん妄
あとは、身体の病気が原因で一時的に精神がおかしくなってしまうことをせん妄と言ったりします。
有名なのはICUせん妄、術後せん妄と呼ばれるものです。
アルコールの離脱せん妄と呼ばれたりするものがありますが、身体に負荷がかかった後で精神が錯乱してしまうものをせん妄と言ったりします。

・認知症
老化による脳の萎縮などによる記憶障害です。
アルツハイマー型認知症、脳血管型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症が代表的です。

・てんかん
精神疾患のコードには入っていないのですが、てんかんです。
てんかんも精神科で診たりします。
てんかんの前後で精神障害があったり、性格がちょっと変わる、そういうこともあったりします。てんかんは結構不思議なんですけど、そういう病気があります。

最近は高齢者のてんかんが多いんです。
認知症と思ったら実はてんかんだった、複雑部分発作だったということがあったりするので、ここも精神科ではよく扱います。
てんかんがあることで何か気分が落ち着かない、そういうのもあったりしますので精神科の領域となります。

ただウチみたいなクリニックは、てんかんはちょっと診づらかったりします。
それはなぜかというと、脳波検査ができないからです。
認知症もMRIを取っていないからできないじゃないかと言われそうですが、認知症は診ています。
東京だと画像専門のクリニックがあるので、そこと連携して認知症を診たりしています。

せん妄はオペ後だったりするので、総合病院で診たりするし、脳炎、ステロイド精神病も元々の身体疾患を治すことで良くなるので、基本的には総合病院で診たりします。
甲状腺機能低下症もそうかな、ということです。

これが身体の病気で起こる精神疾患の代表的なものです。

内因性疾患

次に身体の病気ではないけれども薬が効く群、いわゆる内因性疾患と呼ばれていた群です。

今は脳の病気だとわかっていないけれど将来的にわかるんじゃないか、と考えられて分類された内因性疾患と呼ばれるものがあります。

昔は妄想を伴うことが多かった。
うつ病であれば、罪業妄想(自分が悪いんじゃないか、罪深いんじゃないか)という妄想を持つ、貧困妄想(自分はお金がないんじゃないか)そういう妄想を持ったり。

双極性障害の躁状態のときには万能感というか誇大妄想です。
自分は天才なんだ、自分は天皇の生まれ変わりなんだ、とかです。

あとは統合失調症のような被害妄想、幻覚・妄想、幻聴がある、注察妄想(ずっと見られているんじゃないか)、そういう妄想があったりします。

こういう妄想を持つ重症化する病気だったので、内因性疾患と呼んでいたのですが、今日では妄想が見られないことも普通ですし、他の病気でも妄想のようなものを持つことがあったりするので、昔ながらの分類方法はちょっと崩れつつあります。

ただ、薬物が効くという点では、やはり何かしら脳の病気というか、他の病気とはちょっと違うんだろうなと解釈されている仲間です。
うつ病、双極性障害、統合失調症です。

うつ病の仲間としては月経前気分不快症(PMDD)です。
PMSという言葉の方が聞き慣れているかもしれないですが、精神科の場合は月経前にイライラだけじゃなく落ち込むような精神症状があるので、PMDDと呼んだりします。

あとは産後うつです。出産後の産後うつ。

うつ病の仲間ではないのですが、適応障害です。
ストレスがたまることによってうつになってしまうものを適応障害と言います。
これもここに入れておきます。

あとは、双極性障害に似た仲間としては季節型うつ病です。
冬が来ると毎年落ち込む、夏が来ると毎年落ち込む、そういう人がいます。
それもここに括弧して置きました。
なぜここに入れておくかというと、季節型うつ病と診断されたけれど双極性障害だというパターンも珍しくはなく、双極性障害の季節性が多い人は結構いたりするからです。

もちろん、うつ病で季節性がある人もいます。
ここら辺はちょっとややこしいですね。

あと、統合失調症です。
10代発症の幻覚・妄想を伴う病気です。

50~60代から幻覚妄想を持つようなものもあります。
それは遅発性パラフレニーと言い、時々います。
10代の発症の統合失調症に比べて、すごくサイレントというか、症状が派手じゃないんです。
よく話を聞いてみると、奇妙な妄想があったりします。

ごみ捨て場に行くたびに見られているのよ、ごみ捨て場に行くたびに誰かに悪口言われてるのよ、あの商店街に行くと悪口言われちゃうから行きたくないのよね、と言ったりして、一見妄想なのか妄想じゃないのかよくわからない。

だけど「何かちょっと、お母さん最近変だな」「物忘れが多いな」「認知症の始まりかな」と思ったら実は認知症ではなくて遅発性パラフレニーという病気だった、ということはあります。
薬物治療で改善したりするのですが、一般的な10代、20代発症の統合失調症に比べて、薬物の効果は乏しかったりすることがあります。

知的な問題

知能指数の問題として精神発達遅滞、昔の知的障害というものがあります。

運動神経がめちゃくちゃいい人がいるように、プロ野球選手がいるように、プロになる人やオリンピックを目指す人はそもそも筋肉が違うじゃないですか?
運動していたことがあったり部活をしていた人はよくわかると思うのですが、もうモノが違います、最初から。
筋肉の形というか、柔らかさから違うんですけど、それは「できる」バージョンなんです。

逆のバージョンもあるんです、運動神経が全然悪いみたいな。
それと同じで、頭の良さにも同じような違いがあるんです、生まれ持った。

勉強せずに、そんなに努力しなくても東大とか医学部に受かる人もいるし。
僕は違うんですけど、そういう人います。

なかなか勉強しても伸びない人、なかなか勉強ができない人というのもいます。
そういうものを知的障害と言って、IQ70以下を知的障害と言ったりします。
人口の1~2%くらいです。

境界知能と呼ばれるものもあります。
IQ80~70ぐらいのものを、知的障害には該当しないんだけれども、なかなか生活するのが難しかったり、他の人に比べてうまくいかなくて劣等感を抱きやすい、IQ85から70ぐらいのものを境界型と言ったりします。
なかなか福祉の対象にならないけれども、結構困ってうつになることはあるかなと思います。

最近だと『ケーキの切れない少年』ですね。
そういう本で有名になっています。
犯罪を犯した少年たち、少年院に入った子たちというのは、知的障害、精神発達遅滞が多く含まれていたという話です。
親の躾の問題、学校できちんと勉強受けられなかった、そういう話ではなくて、全然吸収できない人達ということだったりします。

あとは神経発達症、いわゆる発達障害です。
精神発達遅滞というのは能力が全体的に低いんだけれども、特定のことだけできない人たちがいます。
運動神経はいいんだけど、なぜかプールだけできない、運動神経はいいんだけど、なぜかボール投げだけできない、とかあります。
球技だけあいつ下手だな、みたいな。

陸上とかめちゃくちゃいいんだけど、チーム競技は全然ダメだ、サッカーだと全然ダメだな、みたいのがあるように、ここだけ出来ないみたいなパターンの知的障害というのもあるんです。

ASDというのはコミュニケーションに特化したようなもの、コミュニケーションだけができない、人の気持ちを考えることが苦手だったり。
ADHD(注意欠如多動性)は集中力を保つことが苦手なタイプの知的障害、そこだけの精神発達遅滞かな。
LD(限局性学習障害)は算数だけダメ、国語だけダメ、読み書きだけダメ、そういうタイプの精神発達遅滞があります。

トム・クルーズとか有名ですよね、LDに関して言ったら。
これは本人も公言しているのですが、そういうのがありますよ、ということです。

不安障害

不安障害の仲間として全般性不安障害、何でもかんでも不安だという風にすぐ不安を感じやすい人、そういう体質の人をGADと言います。

社交不安障害、人と接することや人の目が不安、人がいっぱいいるところが苦手というのを社交不安障害(SAD)と言ったりします。

あとはパニック障害です。
不安が高まると動悸がして、過呼吸になって死ぬんじゃないかという恐怖感に襲われる。
それをパニック発作と言うのですが、またパニック発作が起きるんじゃないかと思って苦しい、パニック発作が起きるかもしれないと思って人混みを避ける、というのをパニック障害と言ったりします。

あとはちょっとずれるのですが、恐怖症もここに入れました。
それだけが怖いというやつです。
蛇だけが怖い、○○だけは怖い、というのを恐怖症と言ったりします。
そういう病気もあったりします。

強迫性障害

不安症に近い仲間としては強迫性障害(OCD)、同じものに溜め込み症と呼ばれるものがあります。
強迫性障害とは何かというと、鍵を何度も確認してしまうとか、手洗いを何度もしてしまう、何度も何度も確認してしまうものや、計算をしっかりしないと嫌だ、ナンバープレートを見るたびに全部足さないと気が済まないとか、何かそこに対して強迫的になってしまう、集中してしまってそれをやらないと気持ち悪い、そういうのを強迫性障害とか言ったりします。

あと、溜め込み症です。
物が捨てられないタイプ、片付けが下手じゃなくて、捨てられないんですよ。
その結果ゴミ屋敷みたいになってしまうパターンというのを溜め込み症と言ったりして、同じような仲間と言われてます。

強迫性障害、ため込み症はただ不安だからやってしまうというのもあるんですけど、そうでなく報酬系に関わると言われています。

やると安心するんです。
安心するというのは気持ちよくて、また不安になるとやりたくなってしまう、で安心する。
で、またやりたくなってしまう。

これを報酬系と言うのですけど、報酬系の病気として強迫性障害も最近考えられるようになっていて、脳の病気としてわかってきていて、昔からの報酬系の病気とは何かというと依存症です。

依存症

お酒を飲みたい、飲むと安心するのでまた欲しくなる、お酒を飲む。
違法ドラッグをやりたい、大麻をやりたい、覚醒剤をやりたい、やると気持ちがいい、また欲しくなる。
買い物をしたい、買い物をすると楽になる、気持ちよくなる、またやりたい。
ギャンブルをする、ギャンブルをすると楽しくなってしまう、借金があってもギャンブルしたい。
性依存、性行為をしたい、悪いことなんだけど性的なことをしたい、痴漢をしたい、盗撮をしたい、やると気持ちが良くて、またやりたくなってしまう、やめなきゃいけないと思ってもやってしまう。

あと、摂食障害。
鏡を見る、体重計を見る、そうすると安心する。
だけどまた不安になってきて、やっぱり痩せなきゃと思って痩せに取りつかれてしまう。

食べたい、食べたら吐いてしまう、吐くからまた食べたくなる。
でも吐いてしまう。
また食べて、大食いして、腹をパンパンにしてまた吐く。
そういうマゾヒスティックな快感がある。

あと、自傷行為です。
不安が強くて自傷する。
自傷すると頭が一回スッとするんです。気持ちが落ち着くんです。
また不安になると自傷してしまう。これも依存の仲間です。

トラウマ

トラウマの問題です。
PTSDです。フラッシュバックがあったりする。
死にそうな目に遭うと、脳に記憶がこびりつくんです。忘れちゃいけないと思うわけです。

人間の脳は良いことよりも悪いことを残すようにできています。
リンゴがなったという情報よりも、あそこに行ったらヘビに襲われた、クマに襲われたという情報の方が、生きる意味では価値が高いからです。

あそこに行ってリンゴを食べられると覚えておくよりも、あそこに行ったら死ぬぞということの方が、やはり人間は覚えておかなきゃいけないんです。
だから死にそうな目に遭うこと、恐怖を伴う記憶というのはなかなか忘れられません。

それが忘れられなくて、生々しくて何度も経験してしまうことをトラウマと言い、そのトラウマの病気をPTSDと言ったりします。
幼い頃から虐待などで何度も何度もそういう恐怖を味わっていることを、複雑性PTSD(cPTSD)と言ったりします。

ヒステリー

あとはヒステリーと呼ばれるものです。
ストレスを感じると「もう考えたくない」となるわけです。
ストレスを感じると、この悩みは考えたくない、もう悩みを切り離してしまえ、と切り離しちゃう。
自分の心からその悩みを追い出してしまうと、脳は覚えているわけですから、ひずみが出るんです。
ひずみが出ると、例えば手足が動かなくなる。そういうものを解離性障害と言います。

何かよく分からないけれど手が動かないのよね、手が動がないからたぶん仕事に行けないと思うんです、目が見えないんですよね、見えないからたぶん仕事に行けないんです、とか言ったりします。

仕事に行きたくないわけじゃないんだけど、そうなんですよという形で仕事を回避する、生活を回避する、離婚を回避する、そういうものがあります。

身体表現性障害というものもあって、痛いんです。
痛いからできなくなっている。
心はうつとか全然ないし、嫌なこともないのですが、なぜか身体は痛いんです、というのを身体表現性障害とか言ったりします。

あとは、本来はここに入れるべきものじゃないのですが、急性精神病です。
その瞬間、統合失調症のようになってしまう。
ストレスを浴びることによってウワッとなって、錯乱状態になって幻覚妄想を訴え、奇異な行動をとったりするのも同じヒステリーの仲間だったりします。

まあ珍しいです。
時々いますけど、そんなに多くはないけど結構あるなと思います。

どちらかというとヒステリー様の行動を取ってしまうみたいなことで、例えとして使うことの方が多いかなと思います。
精神病や統合失調症がある人だと近かったり、知的障害や発達障害の人の合併症で多かったりします。

人格障害

最後に人格障害。
これまでの病気の複雑なミックスというイメージです。

人格障害はA群、B群、C群があり、A群は統合失調症に似たような人格障害です。
パラノイアといって妄想があるような人格障害だったり、シゾイド/スキゾイドという人との交流を好まないタイプ、統合失調症型パーソナリティー障害と言って奇妙な価値観や奇妙な習慣を持つ人をA群のパーソナリティー障害と言います。

次にC群です。
C群は回避性パーソナリティ障害や依存性パーソナリティ障害という形で、いわゆる不安障害のもっと重い版みたいなものです。

B群というのはA群とC群の間なんです。
その真ん中にあるものなので境界性パーソナリティ障害、気分を自分でコントロールできず、激しく対人コントロールをしたり、振り回したり、振り回されたり、自傷してしまうというのはB群のパーソナリティ障害として有名ですよね、境界性パーソナリティ障害。
演技性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害というのもB群に含まれたりします。

ということです。
駆け足ですね。

今回は駆け足で精神疾患の全体像を述べました。
こんな病気があるよ、ということなので一回全部の病気をバーッと頭に入れておくと、ああ、こんな感じなんだ、ということがイメージつくかなと思います。


2022.10.16

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