本日は、精神科でよく聞く質問に答えてみようかなと思います。
精神科の不思議・不満というテーマです。
精神科を受診していない人や受診したての人は、面喰らうことが多いと思うんです。
精神科の常識というか、独特なことがいっぱいあります。
「えっ、何で?」みたいなことがいっぱいあると思うので、代表的なものにざっくり答えていこうかなと思います。
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精神科? 心療内科?
初めて精神科にかかる人が困ることは、精神科に行った方がいいのか、それとも心療内科なのか、もしくはメンタルヘルス科に行った方がいいのか、気になると思います。
あとは神経内科や脳神経内科など色々な科があって「どこに行けばいいの?」って思うかもしれないです。
場合によっては漢方診療科とか、漢方の方に行ったらいいのかなとよく疑問に思うと思うんですが、基本的にはどこへ行っても構わないと言えば構わないんですけど、精神科か心療内科を選ぶのが良いかなと思います。
だいたい、心療内科といっても精神科医がやっていることが多いです。
ウチもそうですが、精神科医がやっていることが多いです。
そこを受診するのが良いかなと思います。
精神科医が院長をやっているところを受診するのが一般的です。
では、院長がちゃんとした精神科医かどうかを見極めるにはどうしたらいいのか、ということですが、それはホームページの医師の紹介を見てください。
そこに精神科医、精神科専門医、精神保健指定医、専門医か指定医を持っているということが精神科医の証明でもあるので、それを持ってるかどうかチェックしてください。
そうしたら精神科医かどうかはわかりますから、そこで確認するということです。
軽症って何?
よくある質問としては、次は「軽症って何?」ということです。
「あなたグレーゾーンだから来なくていいよ」「悩んでいるかもしれないけど、あなたはうつ病じゃないから来なくていいよ」とよく言われると思います。
地域によっては、「それぐらいだったら精神科来なくていいよ」と軽くあしらわれてしまうことって多いと思います。
東京ではそんなことないと思うんですけど、地方だとあるかもしれないです、一部地域だと。
それはなぜかというと、元々精神科というのは、十何年くらい前までは入院が主体だったんです。
入院が主体で外来で治療する人はあまりいなかったんです。
今みたいにうつ病や発達障害というのはそんなに認知されてなくて、統合失調症をメインに扱っていたところがあって、幻覚妄想状態ではない、ちょっと落ち込んでいる、息苦しいとかPTSDというかトラウマがあるだけだと通院にはならないよとなってしまう。
おじいちゃん先生とか特にそうです。そういう考えの方も結構多かったりします。
そういう背景があるんだと思ってください。
でもどんどん精神科の有用性というのが広まってきて、精神疾患の知識が普及するにしたがって、僕のクリニックもそうですが、色々な方が受診するようになっています。
診察時間が短すぎる
5分だと短すぎる、という話です。
初診のときは30分前後で、再診だと5分前後しか話を聞いてくれないんです。
何じゃそりゃ、という話で、悩んでることがいっぱいあるのに全然相談に乗ってくれないやんけ、という話です。
これはその先生が悪いとかじゃなくて、日本の保険制度上、だいたいそういうもんです。そうなってしまうんです。
そうしないとクリニックは運営できなくなっているので、だいたい5分+αで診療するようになっています。
そこで話や診断、薬が決められるように、できれば頭の整理をしてから受診することが望まれます。
カウンセリングは自費
「医師が話を聞いてくれないのはわかった。その代わりにカウンセリングを受けたいんですけど」と言ったときにカウンセリングを勧めると、今度は自費になっちゃうんです。
めちゃくちゃ高かったりします。
1時間1万円ぐらいだったりして、場合によっては土日はやっていなかったり、仕事中で通えなかったりするんです。
これはどうなってんのやという話ですが、そもそも保険診療で認められてないんです、カウンセリングというのが。
じゃあデイケアみたいな形で、休みの日に、自分は発達障害があるから益田先生が言うようなティーチングを受けたい、ワークショップを受けたいと思っている、集団認知行動療法を受けたいと思ってるんだけど、どうしたらいいですかと言っても、やってない。
どこへ行けばいいんですかという話ですが、「よく認知行動療法って聞くけれど、どこでそれを受けられるのですか?」と聞かれますけど、確かになかなか受ける場所がないんです。
そういう問題を解決するために、僕はYouTubeをやったりオンライン自助会というのを最近やり始めたところです。
オンライン自助会では、できるだけそういうワークショップみたいなものができるように、もちろん医師法や医療法の問題で治療行為とは言えないんですが、できるだけそれに近いような形でワークショップもやりたいと思っています。
ただやっぱりコストパフォーマンスとか、色々な経営的な問題があるので、運営サイドだけでやるんじゃなくて、患者さん同士のピアサポートという形でやってもらおうとしています。
そうすると患者さんに教育して、患者さん同士でやれるようなシステムというか、サポート体制を作る必要があるので、「それってそもそも自助なんですか?」とかよく聞かれるんですけど、こういう背景があって、日々努力しているということです。ご了承ください。
実力or相性?
あとは、よく聞かれるのは、実力なのか相性なのか、という話です。
医師にも相性があるよとよく言うんですけれども、治療者にも相性があるんでしょうかなど言いますが、あるといえばあるし、実力もあると言えばあります。
実力差の問題もあるし、相性という問題もあります。
価値観の問題もある。
これは人と人がやることなので、どうしてもそういうものはあります。
医学では標準化しきれない。普通の医学教育、医師国家試験や専門医試験だけでは標準化しきれないものがありますから、そういうのはもちろんあるなと思います。
障害年金? ベーシックインカム?
「週3とか週4、週に2.5くらいだと働けるんだけれども、これだと生活できないんです。どうしたらいいですか?」という話です。
「ベーシックインカムに準じるものってありませんか?」とよく患者さんに聞かれます。
はい、これもございません。
結構苦しいんですよ、福祉制度としては。
例えば自立支援や精神障害者手帳があるんですけれども、額としては本当に年数万円という形で、手帳も年数万円ぐらい税金が安くなるぐらいで、本当にあまり金銭的な援助にはならないです。
障害年金というのもあるんですけど、初診のときに社会保険、いわゆる厚生年金を払っていれば、障害者年金3級をもらえるんです。
病気になって1年半以上経っていれば。
けれども子供のときから病気にかかっていた、保険は不要だった、国保しか入っていなかったという人は、障害者年金を2級以上じゃないともらえないので、週2.5だけ働くだけだと結構厳しいというのがあります。
ここが福祉の溝みたいになっているんです。
ちなみに3級というのは、「労働に制限あり」という人です。
2級というのは「日常生活に支障がある人」を指します。
1級というのが「常時日常生活の中で支障があって、サポートが必要な人」を指すんです。
なのでなかなか2級は認められにくいんです。
例えば週2.5とか働ける人だと、労働に制限ありというパターンになるので、3級になっちゃうんです。
だからなかなか苦しい。
じゃあ生活保護を取ればいいんですか、という話になって、生活保護を取って週2.5働くという形。
生活保護をもらって、かつ働いた分は一部返納するという形になっている。
おかしなことになっているんですけれども、それが今の日本の福祉制度の問題です。
そんなのおかしいんじゃないか、だいたい病気があるから最初から厚生年金に入れなかったのに何でなんだ、最初に受診したときは国保だったかもしれないけれど、うつになったのは大学生の時だったかもしれないけど、ひどくなったのは社会人になってからなのにどうしてくれるんだ、とよく聞かれますけど、これはまあ、うーん、て感じです。
これは国の問題なので、SNSなどを通じて政治に訴えかけていくことになっていくのかなと思います。
薬は多いのか? いつまで?
あとは薬は飲んだ方がいいんですか、飲まない方がいいんですか、多いのか多くないんですか、いつまで飲むんですか、という話です。
薬は原則飲んだ方がいいです。
精神疾患というのは脳の病気なので、原則、医師がすすめる薬を飲んだ方がいいです。
飲まない方がいい薬というか、できればやめた方がいい薬は何かというと、ベンゾ系の薬です。
ベンゾジアゼピン系の薬で抗不安薬や睡眠薬というやつです。
これはできるだけ早くやめた方がいいんです。
でも抗うつ薬や抗精神病薬、気分安定薬というものは再発予防効果もあるので結構長めに飲んだ方がいいです。
調子が良くなっても1~2年は飲んだ方がいいとか言われたりしています。
月1回通うのは大変だよ、となってくると、主治医と相談しながら通院間隔を広げるか何かして、再発予防のために薬を飲み続けた方がいいこともあります。
やはり目に見えない疾患といえども病気であることには変わりないので、脳の病気ですから薬を飲む方がいいです、モノによりますが。
今回は精神科の不思議・不満というテーマでお話ししました。
精神医学
2022.12.24