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忠告や指導を無視する発達障害 カサンドラ症候群

00:00 OP
01:02 もやもやする
02:04 カサンドラ症候群
06:28 忠告と困りごとがつながっていかない
07:49 対策

本日は「忠告や指導を無視する発達障害(ASD/ADHD)」というテーマでお話ししようと思います。

別に無視したいわけじゃないんですけれど、発達障害の人はなかなか人からアドバイスを受けても吸収できなかったりするし、1を聞いて10を知るということはとても苦手なんですよね。

だから一個一個説明しなければいけないし、状況が変わるとわからなくなったりします。
集中力や興味関心に偏りがあったり集中力も続かなかったりするので、なかなか身につかなかったりします。

もやもやする

結構もやもやするんですよね。周りの人はもやもやしたりするし、家族だったらなおさらもやもやしてしまうんですよね。

できなかったらできなかったで謝ってくれて、素直さがあればやりやすいんだけれど、なかなかそんなに人間できてませんから、みんな。
発達障害の人も落ち込みすぎる人もいれば、逆に攻撃的になって反発する人もいます。

素直に聞くというのは仙人みたいなもので、人間として成熟していないとできないことです。だいたいは反発してしまいます。痛いところを突かれたりするわけで。

だけど結局、心配して話しかけたり忠告してあげているのに無視されるので、周りの人は落ち込んでしまう。
燃え尽きてしまう、バーンアウトしてしまうというのがあります。
これはよく知られていることですね。

カサンドラ症候群

こういう現象を何ていうかというと「カサンドラ症候群」と言います。
発達障害、特にアスペルガー症候群、ASD自閉スペクトラム症の人をパートナーに持つ、主に奥様側がうつになってしまうことをカサンドラ症候群と言います。

カサンドラ症候群という医学用語、診断名があるわけではなく、強いて言うなら適応障害ということになるのですが、診断名をつけるならば。
一般的に発達障害の人の周りにいて、発達障害の家族が落ち込むことを「カサンドラ症候群」と言ったりするという感じですね。一つの呼び名です。

「カサンドラ」とはどういうものかということですが、「カサンドラ」って聞いたことがありますか?
カサンドラは古代のギリシャ神話に出てくるトロイという王国の王女様なんです。
トロイア戦争のトロイです。

この王女様が、アポロ神から予知能力を授かるんです。
アポロ神からの求愛を断るので呪いにかけられる。

ギリシャ神話はそういうのが多いんですよ。神様が人間に気まぐれに能力とか予知能力を与えたりとかしたりして、人間に恋をしたりして付き合おうとするんだけれど、付き合えなくてうまくいかなくてブチギレてぐちゃぐちゃにするみたいな。だいたいそうなんですよね。

恋愛の絡みの話が多いんですけれど、まあそういう時代だったのかもね。
豊かな時代でしたから。暇だと人間を何しているかというと、不倫というか恋愛をしてるのかもしれないですね。
労働は奴隷がしていましたからね。
奴隷という名の市民がしていたのでそういうことのようです。

で、呪いをかけられちゃうんですよ。
呪いをかけられた結果、カサンドラが喋る言葉は誰も信じなくなるんですね。王女様は呪いにかけられてしまって。

それで、トロイの滅亡を予言するんですよ。
予知できるので予言して「こうなんですよ、聞いてください」とみんなに言うんだけど、みんなに無視されてしまう。
そして無力感の中で絶望するというのがカサンドラという話です。
話というか王女の伝説です。

それにちなんで、発達障害の人に対していくら忠告をしたり予言したりしても無視される。
受け取ってくれないということで、無力感を感じてしまってうつになってしまうのがカサンドラ症候群ということになるんですよね。

こんなに心配してるのに、こんな風に思ってるのにといくら伝えても本当に伝わっていかないですね。
本当に伝わらない。
10のうち1も伝わらず、かえって悪い人のように感じる。
「お前、何でそんなこと言うんだよ」とか言って、こんなに心配しているのに敵対者みたいになってしまう。

騙す側の人、甘い言葉を言ったり、全然その人を心配していない人に心酔したり、信じたりする。占い師でもいいんですけど、詐欺師みたいな人とか。
男性だったらキャバクラ嬢みたいな。キャバクラ嬢の悪口ではないですけど、そういう夜のお店の人のアドバイスを真摯に聞いて、家族のアドバイスを聞かないとか。
ギャンブル、アルコール、ドラッグの仲間の話は聞くんだけど家族の話を聞いてくれないとか。
そういう形になったりしますね。

それで落ち込んでいる。
一番心配して、一番考えてくれているのは家族なのに、全然聞いてくれないみたいな感じによくなるんですよね。
本当にカサンドラ、この神話と同じようなことが起きているということですね。

忠告と困りごとがつながっていかない

結局、忠告と本人の困り事がなかなかつながっていかないんですよね。
これはなぜかいうと、視野が狭いからなんですよね。

子どもに対して、将来のために勉強したり貯金しなきゃダメだよと言っても、本人の今の困り事とかけ離れているから、なかなかする気にならないんですよ。
今勉強して貯金しておけば、将来モテるから、今隣の席の女の子のことが好きかもしれないけど、その子のために前髪をちょっと直すとかそういうことに気にしてるんじゃなくて、そっちの方が良いんだよとか言っても、まあ繋がらないよね。
それと同じように繋がっていかないと感じます。

あとは忠告は受け入れがたいんですよね。
「あんた、前髪1センチずらしたって変わらないんだから」とか言われても受け入れがたいよね。年頃の子にとっては。
そういうのと似てますね。

だから言っても繋がらないし、わかったところで受け入れがたい。

対策

対策としては受け入れやすい言葉に変えていくとか、困りごとが繋がるように細かくステップを踏むとかやるといいですね。

でもこういう状況が続くので、家族が疲弊したりすることが多いですね。
コミュニケーション困難で無力感を感じてしまう。
つながりが欠如している。

自分達がつながっていると思ったら、急にポッと出てきたような人たち、詐欺師みたいな人に騙されちゃう。
今まで感じている繋がりは何だったんだ、みたいな感じになりがちです。
これは精神科医療をやっているとよく思いますね。

一生懸命やってるんですけど、僕も。
こういう思いをすることが多いですね。

たった一言の失言とかたった一回の失敗、これまで2年も3年もずっと積み上げてきた信頼関係も一瞬で、ちょっとした一言でバツっと切って全部捨て去ったりしちゃう、人間関係をリセットしちゃうってことがあったりして。

なんか本当に苦しいというか、本当にカサンドラの呪いを思い出すというか。
昔からこういうのはあったんでしょうね。
だからこういう神話の中に残っている。
発達障害というものも昔からあったはずだから、ギリシャ時代からあったはずだから、同じような思いをしている人たちが一定数いて、「なんだったのかな」というもやもやがあるからこういう神話が残り続けているわけですよ。現代も語り継がれている。

僕らも現代の科学、そして現代の医療レベルがあってもなお感じざるを得ないというか、そういうことになっているんでしょうね。

と言いつつ、発達障害の治療も少しずつ続けていくと変わっていくんですよ。
1週間とか1ヶ月の単位ではなくて年単位になりますけど、少しずつ変わっていきますし、忠告と困り事がつながってくることもあります。
つながる頃にはそもそもそういうことを言ってくれたという記憶さえスッポリ抜けていることもありますが、それはそうかもしれないけど、必要な一歩だったというか必要な言葉だったのかなという気はします。

今回は、忠告や指導を無視する発達障害というテーマでお話ししました.


2023.5.30

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